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がんの切除と機能温存を図る
前立腺がん、腎臓がんのロボット手術

東京大学医科学研究所附属病院

(東京都 港区)

最終更新日:2023/11/06

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  • 保険診療
  • 前立腺がん
  • 腎がん
  • 膀胱がん

がんをはじめとするさまざまな疾患において、患者の体に負担の少ない低侵襲治療が主流となりつつある中、従来の腹腔鏡手術とともにニーズが高まっているのがより高い精度と安全性を追求したロボット支援下手術だ。保険診療の適用となる疾患も増え、身近に感じている人も多いだろう。「東京大学医科学研究所附属病院」の泌尿器科では、熟練の技術によるチーム医療で質の高いロボット手術を展開。前立腺がんに対するロボット手術は年々増加している。同科科長の高橋さゆり先生は、東京大学大学院医学系研究科にて前立腺がんの基礎研究に従事し、先進のロボット手術で知られる南カリフォルニア大学でも研鑽を積んだ泌尿器科領域におけるロボット手術のエキスパート。そこで、高橋先生にロボット手術の詳細について聞いた。(取材日2022年9月14日)

ロボットアームを自在に操作し狭い骨盤の中でも複雑な動きが可能に。神経を残して病変を切除し機能温存を

Qロボット支援下手術とはどんな手術なのですか?

A

穏やかな笑顔が印象的な高橋先生

腹部に1cm弱の穴を開けトロッカーと呼ばれる器具を固定しポートを作成後、おなかの中に二酸化炭素を入れて膨らませます。これは手術に必要な視野を確保するために行う「気腹」という処置です。鉗子を入れるポートも作成しロボットのアームを接続します。アームに接続されたポートを通してカメラや鉗子類をおなかに挿入します。操作台にいる執刀医が3D映像を見ながら遠隔でロボットをコントロールします。前立腺がんの手術では、腸が邪魔にならないよう頭を約25度下げた状態で手術を行うのが特徴です。この体位では眼圧が上がる可能性がありますので、緑内障の発作などを起こさないよう事前に眼科の診察を行い、リスクを調べておきます。

Q泌尿器科では、どんな症例に対して行われるのでしょうか?

A

広々とした清潔感のある手術室

最も多いのは前立腺全摘除術です。骨など他の臓器への転移がない「限局性前立腺がん」に対する手術として、ロボット支援下で行う内視鏡手術が保険適用となります。当院では一律に患者さんの年齢で判断せず、全身状態や患者さんご本人の希望などを考慮して治療方針を決定します。腎臓がんに対する腎部分切除術もよく行われており、ロボット手術の登場によって腎臓摘除を回避できる症例が増えました。ただし、腫瘍の部位によっては部分切除が難しいことがあるほか、腎臓全体にがんが広がっているときは、腎臓摘除によって根治をめざします。

Qさらに保険診療の対象となる疾患が増えたそうですね。

A

定期的に検診を受けることが大事だという

2022年4月には腎臓がんに対する腎摘除術と腎盂・尿管がんの腎尿管全摘術にも保険の適用が拡大されました。この2つの症例について当院ではこれまでも高いレベルの腹腔鏡下手術で対応していましたが、ロボット手術が保険適用となったことで、患者さんと相談しながら腹腔鏡手術かロボット手術かのどちらかを選択する体制を整えました。当院ではロボット支援手術同様に腹腔鏡手術についても熟練の技術と豊富な治療経験を持ち合わせたスタッフがそろっていますので、複数の選択肢の中から患者さんと相談しながら、より良い術式を選んでいければと考えています。

Qロボット手術を行うメリット・デメリットは何ですか?

A

4つのアームを使い、より精度の高い動きが可能となった

執刀医が直接器具を握るのではないため触覚が得られません。しかしそのデメリット以上に、精度にこだわった手術を行える点が一番のメリットです。腹腔鏡手術では鉗子やはさみの開閉の動きのみで可動に制限がありますが、ロボット手術では手首に相当する関節があり自在に操作できるので、狭いおなかの中でも複雑な動きが可能です。前立腺を摘出した後に行う膀胱と尿道の縫合も、開腹手術に比べより精密に行えるようになりました。また、開腹手術よりも傷が小さく出血も少ないのも特徴です。腎臓の開腹手術では、筋肉を大きく切ることになりますが、ロボット手術ではその必要がなく、術後の早期回復や術後短期間での社会復帰が期待できます。

Qさまざまな機能温存にも一役買っていると伺いました。

A

患者一人ひとりに合った治療を提供している

前立腺は骨盤の奥深くの開腹手術では見えづらい場所にあるのですが、内視鏡はそこまで入り込んで、立体的かつ拡大した映像を得ることができます。腫瘍はもちろん神経や血管もクリアに見えるので、神経を残しながら前立腺を摘除しやすくなりました。これにより、術後の失禁や性機能障害の軽減につながると考えています。また腎部分切除術においても、切除・縫合の操作が容易なため、術中に腎臓の血流を一時的に止める阻血の時間が短縮でき、腎機能障害を減らすことにもつながります。腎臓は1つになってしまっても日常生活は送れますが、部分切除術により腎臓を温存できることは大きなメリットです。

Qこちらの泌尿器科で提供している治療の特徴を教えてください。

A

ロボット手術の熟練技術を有する医師、臨床工学技士、手術室看護師、麻酔科医師による専門性の高いチーム医療を実践していることに加え、指導実績のある医師が手術全件の監修に入ることで、安全性と根治性を追求した手術を提供しております。また、私自身が創薬の研究をライフワークとしており、先端の知見を生かした薬物治療も得意とするところです。また、東京大学医学部附属病院と連携しており、各分野のエキスパートが多数集まる合同カンファレンスで新鋭の治療方針を提供しているというのも特色です。前立腺がん、腎臓がんでお困りの方は、まずはご相談ください。

患者さんへのメッセージ

高橋 さゆり 科長

東京大学大学院医学系研究科で前立腺がんの基礎研究に従事。三井記念病院で腹腔鏡手術など研鑽を積む。Johns Hopkins大学で前立性がん創薬の研究に専念。2014年東京大学医学部泌尿器科医局長、Southern California大学へ短期留学、ロボット技術の見識を深め、2017年東京大学医学部講師、2020年現職。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。医学博士。

50歳を過ぎたら腫瘍マーカーであるPSA検査を受けましょう。当院は港区前立腺がん検診にも対応しがんの疑いがある方には前立腺生検を実施しています。検査では麻酔科医師による麻酔で痛みの抑制を図り、安全性に配慮することはもちろん、感染と出血のリスクが低いとされる経会陰式を採用し患者さんの満足度を重視しています。その他、膀胱腫瘍に対する光線力学診断(PDD)を利用した経尿道的膀胱腫瘍切除術や、がん以外の治療では過活動膀胱に対するボツリヌス毒素製剤膀胱壁内注入療法や尿管結石のレーザー治療にも注力しております。難治性疾患である間質性膀胱炎の治療にも取り組んでいます。ぜひご相談ください。
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