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根治と機能温存をめざす
前立腺がん、腎臓がんのロボット手術

東京大学医科学研究所附属病院

(東京都 港区)

最終更新日:2025/01/29

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  • 保険診療
  • 前立腺がん

がん治療などでニーズが高まるロボット手術。「東京大学医科学研究所附属病院」の泌尿器科では、熟練技術によるチーム医療で質の高いロボット手術をめざしている。特に同科科長の高橋さゆり先生が専門にする前立腺がんのロボット手術は年々増加し現在6人体制で手術にあたる。高橋先生は東京大学大学院医学系研究科にて前立腺がんの基礎研究に従事した後、南カリフォルニア大学で先端のロボット手術について学んだ泌尿器科領域のロボット手術のエキスパート。国内のロボット手術の向上のために尽力する高橋先生に、ロボット手術の詳細を聞いた。(取材日2024年12月27日)

自在に動くロボットアームによって狭い骨盤内でも複雑な動きが可能に。神経の温存を図るがんの切除に注力

Qロボット手術とはどのような手術なのですか?

A

穏やかな笑顔が印象的な高橋先生

腹部に1cm弱の穴を開けトロッカーと呼ばれる器具を固定しポートを作成後、おなかの中に二酸化炭素を入れて膨らませます。これは手術に必要な視野を確保するために行う「気腹」という処置です。鉗子を入れるポートも作成しロボットのアームを接続します。次に、アームに接続されたポートを通してカメラや鉗子類をおなかに挿入します。操作台にいる執刀医が3D映像を見ながら遠隔でロボットをコントロールします。前立腺がんの手術では、腸が邪魔にならないよう頭を約25度下げた状態で手術を行うのが特徴です。この体位では眼圧が上がる可能性がありますので、緑内障の発作などを起こさないよう事前に眼科の診察を行い、リスクを調べます。

Q泌尿器科では、どんな症例に対して行われるのでしょうか?

A

広々とした清潔感のある手術室

最も多いのは前立腺全摘除術です。骨などほかの臓器への転移がない「限局性前立腺がん」に対する手術として、ロボット支援下で行う内視鏡手術が保険適用となります。当院では一律に患者さんの年齢で判断せず、全身状態や患者さんご本人の希望などを考慮して治療方針を決定します。腎臓がんに対する腎部分切除術もよく行われており、ロボット手術の登場によって腎臓摘除の回避が望めることも増えました。ただし、腫瘍の部位によっては部分切除が難しいことがあるほか、腎臓全体にがんが広がっているときは、腎臓摘除によって根治をめざします。

Q保険診療の対象となる疾患が年々増えているそうですね。

A

定期的に検診を受けることが大事だという

前述の前立腺全摘除術や腎臓がんへの腎部分切除、ロボット支援膀胱全摘術と骨盤臓器脱への仙骨固定術手術に加えて、2022年4月には腎臓がんに対する腎摘除術と腎盂・尿管がんの腎尿管全摘術、腎盂尿管移行部狭窄症に対する腎盂形成術に保険適用が拡大されました。その中で当院では、主に前立腺のがんと腎部分切除のエキスパートとして取り組むとともに、患者さんの状態やご希望に合わせて、腹腔鏡手術、ロボット手術、開腹手術のいずれかを選択できる体制を整えています。あらゆる手術について熟練の技術と豊富な治療経験を持ち合わせたスタッフがそろっていますので、より良い術式を患者さんと相談しながら選んでいければと考えています。

Qロボット手術を行うメリット・デメリットは何ですか?

A

4つのアームを使い、より精度の高い動きが可能となった

執刀医が直接器具を握る手術とは異なるため触覚が得られません。しかし、そのデメリット以上に、精度にこだわった手術を行える点が一番のメリットです。腹腔鏡手術では鉗子やはさみの開閉の動きのみで可動に制限がありますが、ロボット手術では手首に相当する関節があり自在に操作できるので、狭いおなかの中でも複雑な動きが可能です。前立腺を摘出した後に行う膀胱と尿道の縫合も、開腹手術に比べより精密に行えるようになりました。また、開腹手術よりも傷が小さく出血も少ないのも特徴です。腎臓の開腹手術では、筋肉を大きく切ることになりますが、ロボット手術ではその必要がなく、術後の早期回復や術後短期間での社会復帰が期待できます。

Qさまざまな機能温存にも一役買っていると伺いました。

A

患者一人ひとりに合った治療を提供している

前立腺は骨盤の奥深くの開腹手術では見えづらい場所にあるのですが、内視鏡はそこまで入り込んで、立体的かつ拡大した映像を得ることができます。腫瘍はもちろん神経や血管もクリアに見えるので、神経を残しながら前立腺を摘除しやすくなりました。これにより、術後の失禁や性機能障害の軽減につながると考えています。また、腎部分切除術においても、切除・縫合の操作が容易なため、術中に腎臓の血流を一時的に止める阻血の時間が短縮でき、腎機能障害を減らすことにもつながります。腎臓は1つになってしまっても日常生活は送れますが、部分切除術により腎臓を温存できることは大きなメリットです。

Qこちらの泌尿器科で提供している治療の特徴を教えてください。

A

ロボット手術に熟練した医師、臨床工学技士、手術室看護師、麻酔科医師によるチーム医療と、指導実績のある医師が手術全件を監修することで、安全性に配慮し根治性を追求した手術に取り組んでいます。特に私の専門である前立腺がんは、関東圏以外の地方や近隣のアジア諸国から手術を受けに来る患者さんもいらっしゃり、手術困難といわれた症例にも対応しています。進行した症例には手術、放射線治療、薬物療法による集学的治療も行い、私のライフワークである創薬の研究における先端の知見による薬物治療も得意としています。さらに東京大学医学部附属病院と連携し各分野のエキスパートとの合同カンファレンスで新鋭の治療方針を提供しています。

患者さんへのメッセージ

高橋 さゆり 科長

東京大学大学院医学系研究科とジョンズ・ホプキンズ大学で前立腺がんの基礎研究に従事。三井記念病院で腹腔鏡手術など研鑽を積む。2014年東京大学医学部泌尿器科医局長、南カリフォルニア大学へ短期留学、ロボット技術の見識を深め、2017年東京大学医学部講師、2020年より現職。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。医学博士、特任准教授。

50歳を過ぎたら前立腺腫瘍マーカー「PSA検査」を受けましょう。当院ではがんの疑いがある方への前立腺生検を実施しています。検査は麻酔科医師が痛みの抑制を図り、安全性に配慮することはもちろん、感染と出血のリスクが低いとされる経会陰式を採用し患者さんの満足度を重視しています。また、手術のみならず、前立腺がんの薬物治療や進行性前立腺がんに対する抗がん剤治療、核医学治療などさまざまな治療がそろっています。そのほか、膀胱腫瘍に対する光線力学診断(PDD)を利用した経尿道的膀胱腫瘍切除術や、がん以外の治療では過活動膀胱に対するボツリヌス毒素製剤膀胱壁内注入療法や尿管結石のレーザー治療にも注力しております。

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