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大腸がんのロボット支援手術
術後の早期回復に期待

東京大学医科学研究所附属病院

(東京都 港区)

最終更新日:2023/01/05

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  • 保険診療
  • 大腸がん

大腸がんは治癒が困難な印象があるが、近年はリンパ節転移のあるステージ3や別の臓器に転移したステージ4でも根治をめざせるほど治療の進展がめざましいという。特に注目されているのが、低侵襲で術後の早期回復が期待できる「ロボット支援下による大腸がんの腹腔鏡手術」だ。専門的な医療技術と多職種連携が必須となるロボット支援手術に対応できる施設は少ない中、「東京大学医科学研究所附属病院」では、直腸がんに加え、2022年9月から結腸がんに対する保険診療のロボット支援手術を開始。2021年4月から2022年10月の間に51件の大腸がんのロボット手術を実施している。そこで、ロボット支援手術のエキスパートである同院外科の小野山温那先生と柵山尚紀先生に、ロボット支援手術の詳細を聞いた。(取材日2022年10月31日)

結腸がんに対する保険適用のロボット手術も開始。スピーディーかつ適切に安全性の高い手術をめざす

Q大腸がんに対する手術には、どのようなものがあるのでしょう?

A

左から柵山先生、小野山先生

【小野山温那先生】従来のおなかを切開して行う「開腹手術」と、腹部に数ヵ所開けた小さな穴からカメラや鉗子と呼ばれる器具を入れてモニターに映し出された腹腔内の映像を見ながら行う「腹腔鏡手術」があります。そして、最近行われるようになってきたのが、手術支援ロボットを用いて腹腔鏡手術を行う「ロボット支援腹腔鏡手術」です。「ロボット手術」と呼ばれていますが、ロボット自身が勝手に手術するわけではなく、外科医がロボットを操って手術を行います。開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術で、手術のやり方は異なりますが、おなかの中で、がんのある腸管をリンパ節とともに切除するという一連の流れは変わりません。

Qロボット支援手術にはどんなメリットやデメリットがありますか?

A

実際のロボット手術の様子。写真右上の執刀医がロボットを操る

【小野山先生】複雑に自在に曲がる関節を持つロボットを用いるロボット手術では、狭い骨盤内や肥満の人に対しても繊細な動きが可能なほか、高画質で立体的な3Dハイビジョンで患部を拡大観察しながら手術ができるのがメリットです。その結果、直腸周囲の排尿や性機能に関わる神経をより精密に温存することが望めますし、術後の排尿・性機能の保持や早期回復が期待されます。
【柵山尚紀先生】ロボット手術は腹腔鏡手術と比べて開腹手術への移行が少ないといわれています。デメリットはロボットを設置する時間が必要なため少し手術時間が長いことです。費用は、機材や薬剤により腹腔鏡手術より高くなることもありますが大差はありません。

Qロボット支援手術を受ける際の流れについて教えてください。

A

3Dを見ながらロボットを操作する同院外科教授の志田大先生

【柵山先生】直腸がんは手術の2日前に、結腸がんは手術の2〜1日前に入院していただき、お通じを良くするための食事を取り、薬を飲んでいただきます。手術は全身麻酔で行われ、時間は通常4〜5時間ほど。どちらも術後7日から10日で退院となります。手術の傷については、直腸がんの場合、おへそに1箇所、おへその横に2箇所、左横に1箇所、補助のための穴が2箇所で合計6個の穴が空きます。傷の大きさは、おへその傷が3〜5cmほど、おなかの傷は8mmの傷が3個、5mmの傷が1個、12mmの傷が1個で、だいたい1cm前後と考えていただくとよいでしょう。小さな傷が残ってしまいますが、基本的に半年ほどで目立たなくなります。

Q手術後や退院後はどんな生活になりますか?

A

「患者の体への負担が少ない治療を」が同院外科チームのモットー

【柵山先生】多くの場合手術の翌日から普通に歩くことができ、術後2~3日で水分を開始し、その次の日にはお食事ができます。その後、問題なければおなかに留置されているドレーンという管を抜いて1週間程度で退院となります。退院後、約2週間後に外来で今後の治療方針を説明します。数ヵ月おきにCT検査や採血、大腸内視鏡検査で経過を確認したり、補助化学療法が必要であれば、腫瘍内科専門の先生との協力で進めていきます。術後は疲れやすくなっているため、1〜2週間はお休みしてからの職場復帰を勧めています。
【小野山先生】術後早期離床は、術前・術後の早期回復をめざすプログラム「ERAS(イーラス)」で推奨されています。

Qこちらの病院ならではの特徴についても知りたいです。

A

ロボット手術に関する専門的な技術を持つ医療チーム

【小野山先生】ロボット支援手術は、専門的な技術を持つ医師や治療を支える多職種連携が必要なため、対応できる医療施設は少ないです。港区、渋谷区、大田区、目黒区、品川区の5区でも、保険診療でのロボット支援大腸がん手術を行っている施設はまだ数施設といわれています。当院では待ち時間も少なく、初回の診療の翌日にはCTと大腸内視鏡検査を行い、手術ができるかどうかや手術の方針を決定し翌週には手術を行っています。手術まで1週間かからないこともあり、そこが大きなメリットですね。
【柵山先生】スピーディーに手術を行えるのは病院内の連携体制が整っているからです。これが東大医科研病院のメリットだと思います。

患者さんへのメッセージ

小野山 温那 先生

2007年徳島大学医学部卒業。東京都立墨東病院、東京都立駒込病院、東京大学医学部附属病院、日本赤十字社医療センターで研鑽。2022年4月より現職。専門は消化器外科学、特に胃がんの腹腔鏡手術が得意。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。「少しでも前向きに治療に取り組めるよう、患者さん一人ひとりに寄り添ってしっかりとサポートします」。

柵山 尚紀 先生

2007年東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属柏病院、東部地域病院、国立がん研究センター東病院を経て2022年4月より現職。大腸がんの腹腔鏡手術を得意とする。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医。「患者さんの不安を受け止め、それを和らげながら、かつ効果的な治療を行っていきたい」。

【小野山先生】私たち東大医科研外科チームは、このロボット支援手術を得意とする医師がそろっており、これまで数多くの実績を残してきました。今後もチーム一同、質の高い治療を追求しつつ患者さんが少しでも前向きに治療に取り組めるよう、患者さんに寄り添ってしっかりとサポートすることを心がけておりますので、安心してお任せください。
【柵山先生】私たちは、ロボット支援手術を従来の直腸がんだけでなく、結腸がんでも施行しており、安全性への配慮と適切な手術治療に努めております。手術を行うだけでなく、術後のフォローもしっかりとできる治療チーム体制が整っておりますので、安心してお任せいただければと思います。

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