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東京大学医科学研究所附属病院

(東京都 港区)

志田 大 外科科長 の独自取材記事

最終更新日:2023/12/01

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手技と熱い思いで外科チームをけん引

「確実」そして「安全」な手術を追求し、患者に「安心」を提供することをモットーに掲げる「東京大学医科学研究所附属病院」の外科チーム。直腸がん・結腸がんの総称である大腸がんをはじめ、胃がん、鼠径ヘルニアなど消化器疾患のスペシャリストが多数在籍し、腹腔鏡手術およびロボット支援手術といった低侵襲治療を積極的に実施している。そのリーダーである外科科長の志田大先生は、大腸がんの腹腔鏡手術・ロボット支援手術を得意とするとともに、国内のみならず世界の医療の発展のために研究にも熱心に取り組む。また、外科の臨床を充実させるためには地域医療連携は不可欠であると、2020年の着任以来、地域の医療機関との信頼関係を築くことに注力。同科では、患者が病気に対して不安を感じる期間ができるだけ短くなるよう、初診から1ヵ月で手術・退院までをめざすスピード感を重視。チームが一丸となって患者一人ひとりに寄り添う医療を実践している。外科医として日々患者と向き合う中でやりがいを感じない日はないと話す志田先生に、「医科研外科チーム」が一丸となって取り組む消化管の低侵襲治療についての熱い想いを聞いた。(取材日2023年9月28日)

得意とするロボット支援手術について教えてください。

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当科では、直腸がんや結腸がんのほぼ全例で保険診療によるロボット支援手術を行っています。ロボット支援手術はおなかに小さな穴を開け、内視鏡や鉗子などの器具を入れて、モニターで観察しながら手術を行います。傷が小さく患者さんへの負担が少ない上、術野を拡大することで狭い骨盤内でも操作しやすく、繊細で精度の高い治療になります。胃がんや鼠径ヘルニアは腹腔鏡手術で対応し、胃がんの腹腔鏡手術が専門の愛甲准教授や鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術に関して豊富な経験を有する門間助教を中心に取り組んでいます。また、研究にも力を入れ、論文発表を継続的に行っています。その成果を生かし、個々の患者さんに合わせて複数の選択肢の中から適切な治療法を採用できるのも当科の強みですね。「医科研外科チーム」に所属する全員がそれぞれの技術を磨きながら、力を合わせて患者さん一人ひとりに寄り添い、がんを克服していきたいと思っています。

チーム一丸となり低侵襲手術に取り組まれているのですね。

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ロボット支援手術の精度の高さは医師1人の力ではなく、チーム力によります。当科では、外科医、麻酔科医、看護師、ロボットを動かす臨床工学技士からなる「医科研外科チーム」で手術を行っています。一例一例手術を重ねるごとにチームの力が上がり、当科140例目を超えた現在の手術と、2年半前の1例目とを比べると、同じ手術内容でも、手術時間が約1時間短くなっています(2021年4月~2023年9月)。大腸がんの手術は私が責任術者として全例参加していますが、術野での鉗子の出し入れや私の指示にもあうんの呼吸でチームのみんなが応えてくれています。そして、一例一例の経験をチーム全員で共有していくことで、同じ方向を向いて手術に向き合うことができます。医科研外科チーム一同、「確実」そして「安全」な手術を心がけ、患者さんに「安心」そして「笑顔」を提供することをめざしています。

術後の早期回復に向けた取り組みに注力していると伺いました。

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大腸がん手術では、術前・術中・術後の各過程に分けて行う「ERAS(イーラス)」という早期回復プログラムを実践しています。例えば、手術前後は絶飲食・絶対安静というイメージを持つ方が多いと思いますが、ERASでは手術当日の早朝までは経口補水液を飲むことや、手術翌日に立って歩くことが推奨されます。ほかにも医学的エビデンスに基づいた項目が20ほどあり、包括的に実施することで術後の早期回復をめざします。そしてそのためには、外科医、麻酔科医、病棟看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士といった多職種の力が欠かせません。私は日本にERASが紹介された当時に在職していた病院でチーム医療として取り組んだ経験があり、多職種が互いの専門性を生かすことの重要性を身を持って感じました。ですので、その後に勤務した病院、そして当院でも実施し、術後の早期回復・退院・社会復帰に生かしています。

地域の医療機関との連携や研究にも力を入れているそうですね。

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私のめざす「顔の見える双方向の医療連携」を実現するため、着任時から地域のクリニックへの訪問を続けています。私が直接足を運び関係性を築いてきたクリニックの先生とは今も継続して連絡を取っていて、「医科研病院に行けばロボットで手術をしてもらえるから、いってらっしゃい」と患者さんを送り出してくださっているようです。ご紹介のがん患者さんはすべて私が担当し、可能な限り当日、遅くとも翌日に診察するようにします。また、研究面では、各種の治療ガイドラインに引用されるような論文を継続的に発表しエビデンスをつくることで、私が筆頭著者の論文が日本や海外の大腸がん治療ガイドラインに引用されているものもあります。未開拓の部分を切り開くことで世界中のガイドラインを書き換える一助になれば、目の前の患者さんを救うだけでなく、医療の発展へ貢献することになると信じています。それこそが当院の使命である研究の本質だと思います。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

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大腸がんは、肝臓などへの転移がなければ進行がんであっても、きちんと検査をして、適切な手術をすることで治せる可能性が高い疾患です。ですから、まずお伝えしたいことは、「大腸がんは治療できるがんであること」、そして「一緒に乗り越えていきましょう」ということです。私は手術を控えた患者さんとは「しっかり一緒にやっていきましょう」という気持ちを込めて、必ず握手をします。同じように手術当日の朝は「今から頑張っていきましょう」の握手を、退院時には「お疲れさまでした」の握手をします。手術を通して患者さんと信頼関係を築き、一緒にがんを乗り越えていくことが「医科研外科チーム」にとって何よりもハッピーなことであり、笑顔で帰っていく患者さんの姿が私たちの力になります。

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志田 大 外科科長

1996年東京大学卒業。大腸がんの治療を専門に、腹腔鏡手術やロボット支援手術など低侵襲で行う手術を得意とする。茨城県立中央病院、東京都立墨東病院を経て、2013年国立がんセンター中央病院大腸外科・医長。2020年9月より現職。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医。がんの紹介患者が安心して治療に臨めるよう責任者として初診から手術、退院まで一貫して関わっている。

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