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原因を知って予防したい大腸がん
ステージ3でも根治をめざす時代

東京大学医科学研究所附属病院

(東京都 港区)

最終更新日:2023/12/01

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  • 保険診療
  • 大腸がん

大腸がんの患者は1980年代半ばから1990年代半ばに急増し、現在、日本人が最もかかりやすいがんとされている。近年は女性患者も増え、2019年の厚生労働省のデータでは女性のがん死亡数の1位、男性はがん死亡数の3位となっている。ただ大腸がんは早期なら治療しやすいがんの一つであり、治療法の飛躍的な進歩で、リンパ節転移のあるステージ3の進行がんであっても適切に治療を行っていくことで、根治の期待ができることもあるという。そこで、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術と大腸がんに対する治療法を複数そろえる「東京大学医科学研究所附属病院」外科の阿彦友佳(あひこ・ゆか)先生に、大腸がんのステージの決まり方、それぞれの治療法、さらには大腸がんの予防法などを教えてもらった。(取材日2023年10月24日)

チームで行う手術と術後の抗がん剤治療で再発を防ぐ。リンパ節転移したステージ3の大腸がんでも根治が期待

Q大腸がんの予防法や検査方法を教えてください。

A

食生活や生活習慣を見直し、適切な検査を受けることが大切

日本人に大腸がんが増えた要因として高齢化、食生活の欧米化などが考えられます。飲酒、肥満は大腸がんの発症リスクを高めるとされ、生活習慣の見直しも予防には重要です。一方、日常的な運動習慣が大腸がん予防に役立つとされています。便潜血検査で陽性あるいは血便などの症状がある場合、まず内視鏡で大腸の検査を行います。そこで大腸がんが疑われれば組織を採取して顕微鏡検査で調べます。がんと診断がついたら、がんの進行度「ステージ」を確認するためにCT検査を行い、必要な場合はMRI検査も追加します。なお、腫瘍マーカー検査は治療効果やがん再発などを見る指標として有用ですが、がんの有無の判断には他の検査も必要です。

Q大腸がんのステージ0~4はどのように決まりますか?

A

治療前と治療後の検査から、3つの基準でステージを判断

大腸の壁のどの深さまでがんが入り込んでいるかを指す「深達度」、「リンパ節転移」の有無、「他の臓器への転移」の有無、大きく分けてこの3つの基準の組み合わせで、がんの進み具合であるステージ0~4の分類が決まります。数字が大きいほど、がんが進行していることを示し、例えばがんが粘膜内にとどまっていればステージ0、深達度に関わらずリンパ節への転移があればステージ3、他の臓器に転移していればステージ4と診断されます。がんの深達度やリンパ節転移の有無は、治療前の大腸カメラ検査やCT検査で評価を行い、それをもとに治療を行いますが、手術で採取した組織を顕微鏡で検査する病理検査で最終的なステージが確定します。

Qステージによって治療法はどう変わりますか?

A

腹腔鏡手術の様子。ステージによって治療法も異なる

がんが粘膜内にとどまっている場合(ステージ0)や、ステージ1でもがんの深達度が浅い場合は、大腸カメラ下でがんの切除を図る内視鏡的切除術の適応となります。ステージ1でも粘膜下層の深くまでがんが入り込んでいる場合や、ステージ2、ステージ3では手術が治療の基本で、がんの切除とともに、周囲の転移しやすいリンパ節領域を一緒に切除します。病理検査でリンパ節転移があるステージ3と確定した場合、再発防止を目的とした術後の抗がん剤治療を行い、根治をめざします。手術は、腹部を大きく切開する開腹手術と、腹部に小さな穴を数ヵ所開けて行う腹腔鏡手術、ロボット支援手術があり、がんの部位や進行度などを考慮し適応を決めます。

Q術後に抗がん剤を使う目的や使う期間を教えてください。

A

再発リスクを抑えることをめざす抗がん剤治療は内科と連携

ステージ3の治療の基本は手術ですが、目には見えない微小ながん細胞が体内に残る可能性があります。微小ながん細胞は再発の原因になるため、再発を予防する目的で術後に補助治療として抗がん剤を使います。抗がん剤を使う期間は半年間が一般的です。吐き気やしびれなど副作用には個人差がありますが、薬の進歩などで以前に比べてかなり軽減されました。当院では抗がん剤治療を専門とする腫瘍内科との連携で治療を行っており、医師、薬剤師、看護師による「がんサポーティブケアチーム」のきめ細かなサポートで、副作用の予防と軽減に力を入れています。また、通院で治療を受けられるため、働きながらでもがんの治療が続けやすくなっています。

Qステージ4は治療が難しいのでしょうか?

A

病棟ラウンジからの眺望。天気が良い日は富士山も見える

ステージ4の治療は主に薬物療法、放射線療法です。薬物療法は、抗がん剤や分子標的薬と呼ばれる薬剤を組み合わせて使います。近年治療薬の進歩が著しく、治療成績にも反映されてきています。放射線療法は、骨に転移して痛みを伴う場合や、脳や肺に転移したときなどに行います。なお、がんにより出血や腸閉塞などの症状がある場合や、転移した部分を含めてがんをすべて取り除くことができると判断される場合など、適応は限定されるものの手術を行うこともあります。どのような治療が適切かは患者さんの病状により異なるため、内科、外科、放射線科、緩和ケア内科などあらゆる科が集結し、適切な治療法を選択し治療にあたっています。

患者さんへのメッセージ

阿彦 友佳 先生

2012年新潟大学医学部卒業。長岡中央綜合病院、山形県立中央病院での勤務を経て、国立がん研究センター中央病院でがん診療について幅広く学び、2020年9月より現職。専門は消化器外科学、特に大腸がんの腹腔鏡・ロボット支援手術を得意とし、看護師・薬剤師・栄養士らとのチーム医療に力を入れている。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医。「”笑顔”で診療にあたることを大切にしています」。

大腸がんは早期なら根治をめざしやすいがんなので、40歳以上の人は毎年大腸がん検診を受けましょう。便潜血検査で陽性の場合はもちろん、陰性であっても、出血、血便、黒い便など症状があるときは必ず大腸カメラ検査を受けてください。万一、進行がんが見つかっても、当院では外科・内科の医師、看護師、薬剤師、栄養士らが連携し、検査から診断、治療、入退院までをチーム医療で対応してまいります。当科が得意とする腹腔鏡下手術やロボット支援下手術は、開腹手術よりも術後の痛みが比較的少なく、リハビリテーションも取り組みやすいのが特徴です。手術のための絶食期間を極力短くするなど早く社会復帰できるよう努めています。

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