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鼠径ヘルニアの手術方法
患者の負担に配慮した腹腔鏡手術について

東京大学医科学研究所附属病院

(東京都 港区)

最終更新日:2022/09/30

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  • 保険診療
  • 鼠径ヘルニア
  • 腸閉塞(イレウス)

足の付け根付近にポコっと膨らみができることで気づく鼠径ヘルニア。脱腸とも呼ばれ、知っている人も多いのではないだろうか。治療は鼠径部を切って処置を行う手術のほかに腹腔鏡手術も可能であり、現在、国内でも鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術の普及が進んでいる。しかし、腹腔鏡手術の中でも特に専門的な技術を必要とする完全腹膜外修復法(TEP法)を行う医師は少ないという。胃がん、大腸がんの分野でスペシャリストが集結し質の高い医療の提供をめざす「東京大学医科学研究所附属病院」の外科では、鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術のスペシャリストである小島成浩先生を中心に、鼠径ヘルニアに対してTEP法を含む幅広い治療法に対応している。そこで小島先生に、鼠径ヘルニアの治療についての詳細を聞いた。(取材日2022年8月23日)

良性疾患だが自然に治ることはなく手術が必要。専門的な技術を要する腹腔鏡治療でより負担の少ない治療を

Q鼠径ヘルニアはどんな病気ですか?

A

患者一人ひとり、手術一つ一つを大切にしていると話す小島先生

臓器が体の弱い部分や隙間から他の部位へ出てきた状態をヘルニアといい、それが足の付け根の鼠径部付近で起こるのが鼠径ヘルニアです。小腸や大腸が出てくるために脱腸とも呼ばれています。鼠径ヘルニアは圧倒的に男性に多く、基本的には高齢になるほど発症しやすくなります。一般的には力仕事や立ち仕事に従事する人やよく咳をする人がなりやすいといわれています。また日本では毎年約12〜13万人が鼠径ヘルニアの手術を受けるとされている一方で、鼠径ヘルニアになる人は年間25~30万人いるとされています。つまり、多くの方が鼠径ヘルニアを抱えながら生活を送っているということになります。

Q鼠径ヘルニアを治療せずに放置するとどうなりますか?

A

たくさんの緑に囲まれたキャンパスの中にある病院

鼠径ヘルニアは、足の付け根の膨らみを押せば元に戻りやすいことや、日常生活に支障が少ない良性の病気であることから軽視されがちです。しかし症状に気づいていながら長期間放置をしていると、ヘルニアはだんだんと大きくなり、手術も難しくなります。また、脱出した腸が元に戻らなくなる嵌頓(かんとん)に陥ると急な痛みを発症し緊急処置が必要になります。嵌頓の状態になると、腸閉塞を起こし、また、飛び出した腸が出口部で締めつけられ血流が途絶えることにより腸の壊死に至ることがあります。足の付け根の辺りの腫れに気づいたら、一度受診していただくとよいでしょう。

Q鼠径ヘルニアにはどんな治療方法がありますか?

A

清潔で広い手術室

鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく治療は手術が中心となります。手術法には、鼠径部を切ってヘルニアを処理する鼠径部切開法と、腹腔鏡を使用して内側から処置を進める腹腔鏡下修復法の2つがあります。さらに、腹腔鏡下修復法は、おなかの中から腹膜という内臓を包む膜を開けて腹壁の修復をめざす経腹的腹膜外修復法(TAPP法)と、おなかの中には入らず腹膜と腹壁の間に空間を作って腹壁の修復をめざす完全腹膜外修復法(TEP法)に分けられます。現在国内の病院では、鼠径部切開法が約5割、TAPP法は約4割、TEP法は約1割といった割合で手術が行われ、腹腔鏡下修復法が増えてきていますがTEP法を行う施設は少ない状況です。

Q腹腔鏡下修復法にはどんなメリットがありますか?

A

傷口が小さく、痛みが少ないのが、腹腔鏡下修復法の特徴

腹腔鏡下修復法はおなかを小さく切開してその穴から手術用の機器を挿入して治療を行いますが、鼠径部切開法と比較して傷口が小さいのが特徴です。術後の痛みも少なく、元の生活への早期復帰が期待できることもメリットです。また、鼠径ヘルニアの手術はおなかの壁に空いた穴をメッシュ状の人工物で覆っていきますが、腹腔鏡下修復法ではカメラで捉えた映像をモニターに映し出して手術を進めていくので、現在空いている穴や今後穴の空きそうな場所をしっかり確認しながら覆うことができます。

QTEP法にはどんな特徴がありますか?

A

病棟ラウンジからの眺望。夜景がきれいに見える

鼠径ヘルニアに対する手術はもともとは鼠径部切開法が中心であり、おなかの壁の病気として修復が行われてきました。その後、腹腔鏡手術が普及し、腹腔鏡下修復術が行われるようになりました。しかし、おなかの中に手術操作が及ぶと、どうしても腹腔内の合併症の懸念が出てきてしまいます。できれば腹壁の病気は腹壁の中で治療を完了させたいという観点からは、TEP法は合理的な手術方法です。TEP法は、おなかの中には入らずに腹壁の中だけで手術が可能なので、臓器損傷や腸閉塞といったトラブルを最小限に抑えることが見込めます。ただし、とても狭い空間で行う技術的な専門性が高い治療のため、行っている医師や病院が少ないのが現状です。

Qこちらでの手術の特徴を教えてください。

A

「患者の体の負担の少ない治療を」がモットーのロボット支援手術

TEP法は優れた術式でありながら技術の習得が難しく、国内では比較的実施数が少ない治療になりますが、国際ガイドラインでは推奨術式の一つとして挙げられています。当院では、鼠径ヘルニアの幅広い治療法に対応し、患者さんの負担の少ないTEP法を積極的に選択しています。治療の流れについては、手術前日に入院していただき、手術翌日に退院となる2泊3日が基本となります。退院後は通常どおりの日常生活や仕事を行っていただいて構いませんが、2週間程度は激しいスポーツや特に重たいものを持つことは控えていただきます。ご都合によっては手術当日入院での1泊2日も可能ですので、担当医にご相談ください。

患者さんへのメッセージ

小島 成浩 先生

2003年三重大学医学部卒業。千葉大学医学部附属病院、彩の国東大宮メディカルセンター、国立がん研究センター東病院などを経て2022年10月より現職。専門は消化器外科学、特に鼠径ヘルニアと大腸がんの腹腔鏡手術。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本ヘルニア学会評議員。「患者さん一人ひとり、手術一つ一つを大切にし、手術の合併症を減らすべく繊細かつ丁寧な手術を心がけています」。

当院では、専門の医師による、痛みの少ない腹腔鏡手術で、再発の少ないヘルニア治療をめざしています。TEP法の手術を筆頭に数多くの鼠径ヘルニアの治療を実施し、手術指導も積極的に行ってきました。鼠径ヘルニアの手術は生命に関わる可能性は低いことから、ともすれば簡単と思われがちですが、質の高い手術は容易に達成できるものではないと考えています。豊富な手術経験をもとに、患者さまに最適な治療を提供すべく診療にあたっておりますので、どのようなことでもお気軽にご相談ください。

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