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漏斗胸や小耳症など小児の先天奇形を扱う
小児形成外科の取り組み

独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院

(神奈川県 横浜市港北区)

最終更新日:2023/12/27

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  • 保険診療
  • 口唇裂・口蓋裂
  • 難聴
  • 漏斗胸

体の表面に現れる変形に対して外科的な治療を行う形成外科の中で、子どもの疾患を専門的に扱う小児形成外科。漏斗胸、小耳症などの耳の変形、手足の先天異常である多指症や合指症、口唇裂・口蓋裂、ほくろや腫瘤の切除など全身に対応し、疾患によっては他の複数診療科とのチーム医療で生後間もない頃から患者と関わっていく。専門性の高さから小児形成外科に対応する病院は全国的にも少ない中、「横浜労災病院」では、小児専門病院や大学病院と遜色のない質の高い医療を追求。特に漏斗胸や小耳症の治療についての豊富な実績を持つ。そこで、形成外科部長の山本康先生と副部長の矢吹雄一郎先生に、分野に関わらず地域のニーズ全般に応える同院の小児形成外科診療について話を聞いた。(取材日2023年11月22日)

小児の先天奇形が対象。漏斗胸や小耳症は思春期前に手術を。機能的に問題がなければ治療をしない選択も

Qこちらの病院の小児形成外科ではどのような疾患を診ていますか?

A

唇顎口蓋裂や漏斗胸・手足の先天異常などを担当する山本先生

【山本先生】先天奇形で生まれたお子さんたちが治療対象になります。唇や口の中、手足、耳や胸というように全身の変形に対する診療の他、ほくろや腫瘤の切除など、形成外科単科で治療が完結する疾患に関しても、かなり広範囲で対応しています。一方、他科との複雑なチーム医療による治療や、特殊な処置、専門的なリハビリテーション、言語の評価が必要な疾患については、当院では対応が難しいため、神奈川県立こども医療センターにご紹介しています。当科には、同センターで勤務経験のある医師が複数在籍していますので、スムーズに連携し、適切な治療へとつなげています。

Q漏斗胸や小耳症の診療に力を入れていると聞きました。

A

【山本先生】当科が専門的に取り組む疾患の一つが漏斗胸です。形成外科は体表の外科になりますが、漏斗胸は胸腔鏡を使って肺や心臓のすぐ近くを通過する手技が必要なため、緊急対処ができる体制が整っていない病院では治療を敬遠する傾向にあります。当科では私が神奈川県立こども医療センターで修練した手技を引き継ぎ、診療を行っています。
【矢吹先生】小耳症は、一般的な形成外科ではあまり診る機会のない疾患で、神奈川県内でも対応できる医療機関が少ないため、遠方から受診しなければならないというのが一つの課題になりますが、手術を受けに遠方から受診する患者さんも多くいらっしゃいます。

Q漏斗胸の治療はどのように行われますか?

A

【山本先生】漏斗胸は一般的に幼少期に心肺機能異常なく経過すればその後深刻な健康被害を及ぼすことはほとんどありません。ただ、学校検診などで指摘されて親御さんが不安を抱えて受診されることも多く、当科ではまず必ずしも治療が必要な病気ではないことをお話して不安を解消し、治療をしない選択もあることをお伝えしています。それでも手術をする選択された場合は、症状改善に向けて全力を尽くします。手術は胸腔鏡ガイド下で行い、金属バーを胸に入れて胸骨を持ち上げて胸腔を広げます。手術に適した時期は思春期直前といわれていますが、これは思春期の身長が伸びるときに手足の長管骨と同様に肋骨が成長し、変形が進みやすいからです。

Q小耳症の治療についても教えてください。

A

小児形成外科で豊富な経験を持つ矢吹先生

【矢吹先生】小耳症の多くは生まれてきた時の見た目で診断がつき、生まれた直後から対応できる医療機関で治療を行うケースが多いです。耳の形だけではなく、難聴や、成長とともに噛み合わせがずれてくるお子さんもいて、耳鼻咽喉科や院外の矯正歯科とコミュニケーションを取りながら診療をしています。治療は10歳前後で肋軟骨を使って耳を作るのが一般的ですが、小耳症の手術は見た目を整えるだけで難聴の治療にはならないため、中高生や就職するときに聴こえの問題をどうするか、補聴器をつけるのか、手術で改善を図るのかなど、患者さんと相談しながら決めていきます。当科はそういったチーム医療の中でハブ的な役割を担っています。

Qこちらの病院の特徴や、診療で心がけていることはありますか?

A

小児病棟の一室。快適な入院環境の提供に努めている

【矢吹先生】漏斗胸や小耳症の手術は10歳〜15歳のコミュニケーションが取れる年齢で行うので、なるべくコミュニケーションを取り、入院後に困ったことがあったときには相談してもらえるように心がけています。新型コロナウイルス感染症の影響で現在は限定再開中ですが、完全看護の病院も多い中、当院では大部屋での付き添い入院ができます。大部屋での付き添いはお母さんやおばあちゃんなど女性限定とし、個室の場合のみ男性の付き添いも可能です。当院は新幹線の新横浜駅が最寄り駅であることから、県内のみならず東海地方からの受診にも便利です。近くに公園もあり、ロケーションが良いのも特徴です。

患者さんへのメッセージ

山本 康 形成外科部長

1994年横浜市立大学医学部卒業。1996年同形成外科入局、2001年助手。2004年神奈川県立こども医療センター形成外科科長に就任。主に唇顎口蓋裂のチーム医療・漏斗胸・手足の先天異常などを担当。2009年横浜市立大学附属病院形成外科助教、2011年横浜市立大学附属市民総合医療センター救命救急センター助教を経て、2013年より現職。日本形成外科学会形成外科専門医、日本救急医学会救急科専門医。

矢吹 雄一郎 形成外科副部長

2006年横浜市立大学医学部卒業。2008年同大形成外科に入局。大学附属病院や神奈川県立こども医療センターで研鑽を積み、2022年より横浜労災病院形成外科副部長として勤務。専門は小児形成、頭頸部再建、乳房再建、リンパ浮腫に対して行うマイクロサージャリーなど。日本形成外科学会形成外科専門医。

【山本先生、矢吹先生】手術や治療を受ける前提でなくてもいいので気軽にご相談ください。病気じゃないからと諦めず、とりあえずは相談してみるというのは形成外科ならではの受診の仕方です。地域の先生におかれましては、耳のマイナーな変形など、まれに手術をしなくても矯正などによって改善が図れるものがありますが、そういったケースは時期が決まっています。手術が先の予定になるのでお子さんが大きくなってから紹介されることもありますが、赤ちゃんの時にご相談いただければ、手術以外の方法で改善をめざせるケースもありますので、一度ご相談ください。早い段階で正しい情報をお伝えしてまいります。

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