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総合病院で行う生殖医療
がん治療後も妊娠の可能性を残せるように

地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター

(大阪府 大阪市住吉区)

最終更新日:2025/02/28

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「大阪急性期・総合医療センター」の生殖医療センターは、総合病院の中で不妊治療を担当する部門だ。その強みを生かして、産科、婦人科、泌尿器科、内科など多数の診療科と連携し、がんをはじめとするさまざまな合併症を持つ患者にも生殖医療を実践し、「卵からゆりかごまで」をキャッチフレーズに、トータルな医療を展開する。生殖医療センター長の森重健一郎先生に、不妊の原因や治療の基本から、「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」に関する妊孕性温存療法など、同院が注力する総合病院ならではの生殖医療についてを詳しく聞いた。(取材日2022年9月12日)

不妊の原因は男女それぞれに可能性が。1年以上妊娠できないようなら早めに相談を

Q不妊の原因と検査を受けるタイミングについて教えてください。

A

生殖医療センター長の森重先生

不妊の原因は、女性側のみにある場合が約40%、男性側のみが約25%、男女双方に原因があるのが約25%です。例えば、男性側の原因としては、勃起障害、射精障害、無精子症、精子の数や活動性の低下などがあります。女性側では、卵巣から排卵されない、卵管や子宮内腔、子宮頸管の障害で受精や着床が困難といった原因が多いです。ただ、生殖器や精子、卵子の機能に異常がなくても妊娠できないこともあります。不妊とは、避妊せずに1年間の性生活を行っても妊娠しない状態を指します。女性は35歳を過ぎると、妊娠しやすさが急激に低下します。女性の年齢も踏まえ、1年以上妊娠できなければ、早めに産婦人科に相談されると良いでしょう。

Q不妊の検査や治療の内容について教えてください。

A

基幹病院の中にある強みを生かした治療を提供

男性の場合は、精液の検査が基本です。女性の場合は、まず、血液を採取してホルモンの検査を行い、排卵の有無を確認します。基礎体温を記録していただくこともあります。次に、超音波検査や造影剤を使ったエックス線検査で卵管と子宮を詳しく調べます。MRIや内視鏡の一種である子宮鏡を用いることもあります。それらの検査により、例えば、排卵に問題があれば排卵を起こすための薬で治療します。卵管が閉塞している場合は、内視鏡で治療する方法もありますが、通常は体外受精を考えます。子宮筋腫やポリープは手術で治療できますが、子宮頸管の異常で受精できないときは、精子を人工的に子宮に注入する人工授精を行います。

Q若いがん患者さんに対する妊孕性温存治療を行っているのですね。

A

体外受精のために未受精卵子や胚、精子の凍結保存を行っている

抗がん剤治療で、妊孕性といって子どもをつくる能力を失う可能性のある10代から30代くらいの若いがん患者さんを対象に、妊孕性を温存する相談や医療を提供しています。あらゆるがんに対応しますが、若い女性では乳がんと子宮頸がんが圧倒的に多いですね。抗がん剤治療により卵巣や精巣が大きなダメージを受ける前に、未受精卵子や胚(受精卵)、精子を凍結保存し、がん治療が終わってから、自身が希望するタイミングで体外受精によって子どもをもうけるための方法です。また、子宮頸がんでは子宮を全摘出してしまうと妊孕性が失われますが、比較的早期で範囲が小さい場合は妊孕性の温存を図れる手術方法もあり、当院産婦人科で実施できます。

Q院内の他診療科、他の病院とはどんな連携を取っていますか。

A

各科と連携し患者一人ひとりに寄り添った医療を提供する

合併症を持つ患者さんの場合、内科など、その病気の診療を担当する当院の他診療科と密に連携しながら診療にあたります。例えば、当センターの医師が「妊娠できますよ」と言ったのに、内科の医師が「妊娠は諦めなさい」と言ったら患者さんは混乱します。そうならないように普段から話し合いを欠かしません。また、大阪では、「OOネット(大阪オンコ・ファーティリティ・ネットワーク)」という連携組織があり、がん治療を行う医療機関から、妊孕性温存を望む若い世代のがん患者さんが紹介されてきます。この場合は、がん治療を行う他院の主治医と情報交換し、適切なタイミングで妊孕性温存療法と生殖医療を行うことを心がけています。

Q改めて、総合病院の不妊治療ならではの特徴をお聞かせください。

A

産科・婦人科医長の久保田先生(左)と培養士の辻さん(右)

当院生殖医療センターのキャッチフレーズは「卵からゆりかごまで」です。大阪のような大都市では、不妊治療は婦人科クリニックで行われることが多いのですが、他に持病のある患者さんは、病院でなければ対応できないこともあります。当院では、がん患者さんの将来の妊孕性を残す医療から、手術も含めた男女両方の不妊治療、合併症を持つ方の不妊治療、そして妊娠後、分娩するまでのフォローアップと、すべての段階の医療をワンストップで提供できることが特徴です。また、医師や看護師だけでなく、培養士、カウンセラーなどの専門スタッフもそろっていますので、安心して不妊治療を受けていただけると思います。

患者さんへのメッセージ

がん治療を終えた若い患者さんを調査すると、子どもを持てるかどうかが不安と答える患者さんが高い割合に上り、がん患者さんの生殖医療は社会的ニーズの高いものだとわかります。当院はこのがん患者さんの生殖医療の安全性と有効性を調べる研究の実施病院で、対象の患者さんには2021年4月から公的助成金が出るようになりました。若い患者さんには、このような方法があることを知っていただき、がん治療を受ける前に妊孕性について考えてほしいと思います。また、一般的な人工授精や体外受精などの不妊治療も、2022年4月から健康保険が使えるようになりました。一人で悩まずに、ご相談ください。

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