末期腎不全の選択肢のひとつ
腎移植手術とは
地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター
(大阪府 大阪市住吉区)
最終更新日:2026/01/30


- 保険診療
- 腎不全
腎臓の機能が大きく低下する腎不全。末期腎不全の状態になると腎臓の機能を代わりに行うために、血液透析、腹膜透析、腎移植といった腎代替療法が必要になる。透析患者は年々増えているが、定期的な通院による時間の制約、旅行や食事・水分制限による生活の質の低下、その他合併症によるトラブルが懸念される。一方腎移植は、根本的に腎臓の入れ替えを図るため、腎機能の回復や透析不要になることも望め、日常生活の質の向上が期待できるという。そこで、腎移植手術に対して豊富な症例を持つ「大阪急性期・総合医療センター」の泌尿器科部長の蔦原宏一先生に、同院での末期腎不全の状態や腎移植について、詳しく話を聞いた。(取材日2025年11月10日)
目次
腎臓の機能を取り戻すための腎代替療法の1つ、「腎移植」。予後や生活の質の向上が期待できる
- Q腎不全とはどんな状態でしょうか?原因は?
- A

泌尿器科全般と腎移植が専門分野の蔦原宏一先生
腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として体外に出すフィルターの役割を果たしています。腎不全とは腎臓の働きが大きく低下し、体内の老廃物や余分な水分、ナトリウム・カリウムなどを十分に排出できなくなった状態を指します。腎不全には短時間で腎機能が悪化する急性腎不全と、数ヵ月から数年かけて徐々に腎臓の働きが低下していく慢性腎不全があります。急性腎不全は原因を取り除くことができれば、機能の回復が望めますが、慢性腎不全は一度進行すると元に戻すのは困難です。糸球体ろ過率が通常15 mL/分/1.73m2未満の状態を末期腎不全といい、腎臓の働きがほとんど失われた状態で、生命維持のために腎代替療法が必要になります。
- Q末期腎不全にはどんな治療法があるのでしょうか?
- A
腎代替療法には、3つの選択肢があります。1つ目は「血液透析」で、体外に血液を取り出し、人工腎臓という装置で老廃物や余分な水分を除去した血液を体に戻すものです。週に3回、1回あたり4時間程度行うのが一般的で主に透析室のある医療機関で行います。2つ目は「腹膜透析」。カテーテルを腹部に埋め込み、おなかの中にある腹膜をフィルターとして利用し、透析液をおなかに入れて老廃物や水分の除去を図っていきます。透析液の交換は1日数回必要ですが自宅で行えるため生活の自由度が高いことがメリットです。3つ目が「腎移植」。健康な腎臓を生体ドナーや献腎ドナーから移植し、腎臓機能を回復させるための治療です。
- Q腎移植について詳しく教えてください。
- A
腎移植は、生きている人から1つの腎臓を提供してもらう生体腎移植と、脳死または心停止後のドナーから提供してもらう献腎移植があります。生体腎移植は十分な時間をかけて腎移植に適しているかどうかを評価しドナーとレシピエントの予定を合わせて手術することができます。献腎移植の場合は提供者数が少ないため、腎移植を希望しても平均15年の待機期間を必要とします。また腎移植後は免疫系が「移植腎を異物」と認識して攻撃しないように、免疫抑制剤を生涯服用する必要がありますが、透析をする必要がないため、食事・旅行の自由といった生活の質の向上や良好な生命予後が期待できます。
- Q腎移植の流れを教えてください。
- A

腎移植について適切に評価し、患者に丁寧に説明を行う
透析が必要な段階または透析が近い時に、主治医から腎移植の説明・紹介を受けます。「移植を希望するか」「生体か献腎か」「生体の場合はドナー候補がいるか」を確認します。生体腎移植の場合ドナーは健常人であるため、自分自身は健康で、腎臓を1つ失っても支障がない人でなければなりません。腎摘出により健康を損なうリスクを最小限にするため、非常に慎重な評価を行います。腎臓の機能や体重、高血圧、糖尿病といった腎機能を悪化させる因子がないか、また悪性腫瘍などの自身の治療が必要がないかを評価し適応を決定します。献腎移植を希望された場合は日本臓器移植ネットワークに献腎移植希望登録を行います。
- Q移植手術後、社会復帰まではどれくらい?
- A

ライフスタイルに合わせた社会復帰ができるよう尽力している
ドナーの腎提供の手術は腹腔鏡手術で行っており入院期間は約1週間。1ヵ月ほどで社会復帰が可能となりますが、腎臓を片方提供しているため定期的に検査を受けていただく必要があります。レシピエントは腎移植を行う数日前より免疫抑制薬の服用を開始。生体腎移植の場合は、移植し、腎臓へ血液が流れ始めて尿が産生されてくれば、腎機能の改善が期待できるようになります。献腎移植では移植した腎臓が機能するまで数日要することがあります。腎移植後約2週間の入院期間を要します。退院後も高用量の免疫抑制薬を服用するため感染のリスクが高く、術後3ヵ月くらいで維持量となるので社会復帰が可能です。

蔦原 宏一 部長
2001年熊本大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院泌尿器科を経て、市立池田病院、大阪厚生年金病院(現・JCHO大阪病院)で勤務。大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学・泌尿器科にて医学博士号取得。2013年より大阪急性期・総合医療センター勤務。2025年4月より現職。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。





