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一人ひとり異なる条件に合わせた
心不全の治療

地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター

(大阪府 大阪市住吉区)

最終更新日:2025/03/31

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  • 保険診療
  • 虚血性心疾患
  • 心不全
  • 心筋症
  • 不整脈
  • 心臓弁膜症
  • 心筋梗塞
  • 浮腫
  • 大動脈弁狭窄症

「心不全とはどのような病気ですか」という質問に、きちんと応えられるだろうか? 心臓に何か問題が起こる病気というイメージがあっても、原因や具体的な症状については、よくわからないのが現状ではないだろうか。心不全を専門とする「大阪急性期・総合医療センター」心臓内科主任部長の浅井光俊先生によると、高齢化に伴って世界中で心不全患者が増え、“心不全パンデミック”とも呼ぶべき事態が進行しているという。しかも、次第に悪化して生命を縮めるおそれがある病気なので、もはや誰もが自分には関係のない病気というスタンスではいられない。心不全の特徴や検査、治療の進め方などについて、3人の専門家、浅井先生、同副部長の川崎真佐登先生と菊池篤志先生に詳しく教えてもらった。(取材日2024年12月20日)

心臓外科とも連携しながら治療のさまざまな選択肢を検討する

Q心不全とは? また原因についても教えてください。

A

心不全について説明する浅井先生

【浅井先生】「心不全」は病名というよりも病態を表す言葉で、心臓の状態が悪いことを指します。心臓は血液を介して必要な酸素や栄養などを全身に届けるポンプの役割を担っています。心不全になると、心臓の機能に問題が生じて、必要な酸素や栄養を供給できなくなってしまいます。原因となるのは、あらゆる心疾患です。虚血性心疾患、不整脈および心臓弁膜症など、あらゆる心疾患は進行すると心不全へとつながっていきます。この心不全が怖いのは、増悪を繰り返しながら徐々に進行し命を縮めるという点です。専門的な治療のみではなく、日々のコントロールも重要で、薬の服薬、塩分制限、オーバーワークや感染症の予防などが挙げられます。

Q注意すべき症状はありますか?

A

診察を行った上で、患者への負担が少ない検査を行う

【浅井先生】送り出せなくなった血液が全身でうっ滞してしまうため浮腫が起こります。浮腫に伴い、2~3日で2~3kgといった通常では考えられない体重増加をすることがあります。また、息切れも典型的な症状です。全身に十分な酸素が供給されなかったり、送り出せなかった血液は肺にも溜まり溺れたような状態になるため、息切れが起こりやすくなります。初期には動いた際にしか息切れは見られません。以前から息切れがあり、その症状に自分では気づかなかったり、息切れしないようにご自身で動きを制限されている場合もあるため、私たちは診察中の患者さんの様子を確認したり、普段の様子を知っておられる方にお話を聞き察知に努めます。

Qどのような検査を行いますか?

A

さまざまな検査に対応していると話す川崎先生

【川崎先生】基本的な流れでは、まずは問診・診察を行った上で、患者さんの負担の少ない検査から行います。通常、どこの医療機関を受診されても行われるのは、血液検査、心電図、エックス線撮影です。当院では、超音波(エコー)検査も取り入れており、心臓に何か大きな病気がないか、働きに問題がないかを確認するのに役立ちます。心不全の治療の重要なポイントは、心不全の原因になっている心筋梗塞や心筋症、不整脈、心臓弁膜症など、まずは原因として最も多く見られる心疾患を見つけるというところにあります。このため、こうした検査の結果に基づいて、さらに専門的な検査を行う場合もあります。

Q薬で治療できますか?手術が必要ですか?

A

リハビリにも力を入れている

【浅井先生】心不全治療は、原因となっている基礎心疾患の治療、心臓負担の軽減、自覚症状の改善といった血行動態を改善するための治療、および併存症の治療があります。原因となっている心疾患のほか、患者さんの状態などによって治療法のアプローチは異なります。一般的に、薬、カテーテルを用いた内科的手術、外科的手術に大別されます。どの治療法を選択するか、時にはハイブリッドで、どの順番で、どこまで治療を行うかは心臓内科、心臓血管外科のみならず、多職種、本人、家人とも相談します。手術で得られる利益、合併症などの不利益、術後の回復、再手術の可能性、行わなかった場合の不利益を検証し最終的に具体的な治療法を決定します。

Q低侵襲手術を実践されているそうですね。

A

低侵襲手術について説明する菊池先生

【菊池先生】以前から心臓外科と協力して低侵襲手術を実践しています。心臓内科ではカテーテル手術に積極的に取り組んでおり、大動脈弁狭窄症に対するTAVI手術、僧帽弁の接合不全に対する修復術、心房細動に対する左心室を閉鎖するための手術などに対応しています。一方、心臓外科でも以前は通常の開胸手術しか選択肢がなかったのですが、肋骨の間を開くより侵襲度の低い手術にも取り組んでいます。近年はご高齢の患者さんが増え、体調や体力に注意する必要がある一方、同じ年齢でも体力などの個人差も大きいのが現状です。このため、あえて手術しないという選択肢も含めて患者さんの状態に合ったメリットの多い治療を提供します。

患者さんへのメッセージ

浅井 光俊 心臓内科主任部長

1998年大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院で研修の後、大阪大学医学系研究科大学院を修了。大阪警察病院、市立東大阪医療センター、関西労災病院を経て、2024年4月より、大阪急性期・総合医療センター心臓内科主任部長に就任。専門分野は心不全。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。医師としてのモットーは「FOR PATIENT〜患者さんのために〜」。

川崎 真佐登 心臓内科副部長

2006年大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院、大阪厚生年金病院(現・JCHO大阪病院)での初期臨床研修の後、2008年大阪急性期・総合医療センター心臓内科に赴任。2021年4月より不整脈科部長代理とCCU室長を兼任し、2022年4月から現職。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。専門は心房細動と心室性不整脈。

菊池 篤志 心臓内科副部長

2007年名古屋市立大学医学部卒業。河北総合病院、大阪労災病院を経て2012年より大阪急性期・総合医療センターに勤務し2023年4月より現職。専門分野は心不全、心臓弁膜症、虚血性心疾患、心臓リハビリテーション、心不全緩和ケア。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。医師としてのモットーは、目線を合わせて一緒に考えること。

【浅井先生】「こんな治療ができます」という一方的な診療ではなく、患者さんと家族にも参加してもらうというスタンスで診療にあたっています。治療のデメリットも包み隠すことなくお話しして、理解してもらった上で治療を進めます。
【川崎先生】心不全に関連する不整脈には心房細動や心室性不整脈などがあり、患者さんに合った選択肢を提案させていただきます。治療後の日常生活に関する悩みについてもお気軽にご相談ください。
【菊池先生】心不全は徐々に進行して命を縮める病気です。芸能人の方が心不全で亡くなったニュースも耳にされていると思います。心臓は1つしかありませんので、進行させないように一緒に考えていきましょう。

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