先進の消化器疾患診療とは
胃潰瘍や肝硬変、胆石症診療の今
医療法人錦秀会 阪和記念病院
(大阪府 大阪市住吉区)
最終更新日:2023/10/02
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腹痛や嘔吐、下痢・便秘など日常的な消化器症状。ただ、腹痛1つでも痛みの質や痛む場所はさまざまで、原因も多岐にわたる。また消化器内科、消化器外科、内科など消化器疾患を診る診療科は多く、「この症状はどの科へ行けば良いのだろう?」と迷った経験のある人も多いだろう。そんな患者の思いに応えるのが、「阪和記念病院」の「消化器センター」だ。胃潰瘍や肝硬変、胆石症など一般的な病気から消化器悪性腫瘍や小腸疾患など特殊な診療技術が必要な難症例まで、多様な消化器疾患に対応。先進の検査機器を活用し、的確で体の負担が少ない診断・治療をめざしている。地域の病院ならではの利便性と、高度な診療技術を併せ持つ同センターの特色について、矢田豊消化器センター長と3人の先生に話を聞いた。(取材日2023年6月15日)
目次
消化管、肝臓、胆のう・膵臓の3チームで多彩な消化器疾患をカバー、特殊内視鏡を含め各種内視鏡検査も充実
- Q消化器疾患にはどのようなものがあるのでしょうか?
- A
【矢田消化器センター長】消化や吸収に関わる臓器は種類が多く、一般的には胃や腸などの消化管と、肝臓・胆道・膵臓に大きく分けられます。後者は医療の現場では「肝胆膵」と総称されることもあります。これら消化器で起きる病気は多岐にわたりますが、よく知られている病気として消化管では胃の消化性潰瘍、腸ではクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患などが多いですね。また消化管のがんとしては食道がん、胃がん、大腸がんなどがあります。肝臓では脂肪肝や肝硬変、B型・C型などのウイルス性肝炎、また肝臓がんもあります。胆道では急・慢性の胆嚢炎や胆管がん、胆嚢がん、そして膵臓では急・慢性の膵炎や膵臓がんなどがみられます。
- Q肝臓疾患での診療の現状や、新たな治療があれば教えてください。
- A
【矢田消化器センター長】かつて肝臓の病気といえばウイルス性肝炎でしたが、薬物治療が格段に進歩しC型肝炎ウイルスは排除がめざせる病気になりました。一方で、生活習慣の変化から肝硬変や肝臓がんへとつながる脂肪肝の患者さんが急増しています。脂肪肝は糖尿病や脂質異常、高血圧など生活習慣病の合併が多く、当センターではこれらの治療も同時に行っています。肝臓がんでは造影超音波やCT、MRIなど高性能の画像診断装置を活用して診断の精度を高め、ラジオ波焼灼療法や経カテーテル肝動脈化学塞栓術など体への負担に配慮した治療を実施。化学療法室では、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬を用いた通院治療も行っています。
- Q消化管疾患では、どのような診療を行ってますか?
- A
【宮崎先生】内視鏡検査室が4室あり、内視鏡が専門の多数の医師やスタッフが、通常の診療や検診、緊急検査にも対応しています。胃には高性能の経口内視鏡を使用して精度の高い検査で初期病変の見逃しを防ぎ、またご希望があれば鎮静を行って苦痛の軽減に努めています。内視鏡的粘膜層剥離術など消化管早期がん切除も、日常的に実施しています。
【池尾先生】大腸がんや炎症性腸疾患が増えていますので、血便や継続する下痢があれば大腸内視鏡を迅速に実施。大腸ポリープの切除例も多いですね。またカプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡など特殊内視鏡検査も実施できるので、診療が難しかった小腸疾患にもスピーディーに対応しています。
- Q胆膵疾患の診療についてはいかがでしょうか?
- A
【宮本先生】胆石や膵炎から膵臓がんや胆管がんまで、高度な医療環境を生かしてあらゆる胆膵疾患を診療しています。胆管や膵臓の病気では腹痛や嘔吐、進行すれば黄疸などがみられますが、体の中心にあるため原因の特定や治療が難しいです。血液検査やCTなどの画像検査で総合的に判断しますが、当センターには超音波内視鏡という、胃カメラの先に超音波装置がついた特殊な内視鏡があり、より胆膵に近い位置から検査や組織の採取を行って、適切な診断につなげています。なお、患者さんが多い胆嚢結石や胆管結石では急な入院治療が必要なこともありますが、地域に根差した病院として、患者さんは極力お引き受けするように努めています。
- Q医療技術の進歩で、消化器領域の治療はどう変化しましたか?
- A
【宮崎先生】当センターでは超音波内視鏡、ダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡といった特殊な内視鏡を導入しています。消化器疾患は体の内部で起こりますので、まず患部の特定が必要ですし、外科的な手術、内視鏡治療、薬物治療など治療選択肢も多く、適切な診断から病状に適した治療へ進むことが求められます。検査や治療が患者さんの負担にならないことも重要ですので、内視鏡の進歩は安全性への配慮や適切な消化管診療に直結していると実感しています。
【矢田消化器センター長】先進の超音波装置では脂肪沈着の程度や肝臓の硬さを数値で計測できるので、結果がわかりやすく、生活習慣の改善に取り組む患者さんの意欲も高まりますね。
- Q貴院の消化器センターの特徴をご紹介ください。
- A
【矢田消化器センター長】高い専門性と豊富な診療経験をもつ多数の医師や医療スタッフが、先進の検査・診療機器を活用し、あらゆる消化器疾患の診療にあたります。医師は消化管、肝臓、胆膵の3チームに分かれ各自で特化した治療を行いますが、一方で毎朝のミーティングには消化器内科、消化器外科すべての医師が参加。多方面から各患者さんの病状を検討し、適切な検査や治療を迅速に見出します。また、消化器疾患に合併する生活習慣病も当センターの外来で治療したり、絶食で来院されれば受診当日の検査も行うなど、患者さんの利用しやすさも重視。地域の民間病院として、初期治療から高度な治療への連携まで、幅広く対応できることが特徴です。
矢田 豊 消化器センター長
1991年富山医科薬科大学卒業、1999年同大学院修了。その後Duke大学、 North Carolina大学へ留学。富山大学第三内科、群馬県済生会前橋病院消化器内科等の勤務を経て2016年に阪和住吉総合病院消化器内科・副院長として入職後、コロナ特任院長に就任。2022年より阪和記念病院院長補佐・消化器センター長。大阪公立大学肝胆膵内科特任准教授。
宮崎 純一 消化器内科部長
1994年防衛医科大学校卒業。2004年より米国マサチューセッツ総合病院へ留学し、帰国後は自衛隊阪神病院内科での勤務を経て2012年より宝塚市立病院消化器内科部長を務める。2019年より消化器内科部長として入職後、主に内視鏡検査・指導に注力し、2022年より阪和記念病院消化器内科部長・内視鏡検査室室長。
池尾 光一 消化器内科医長
2009年兵庫医科大学卒業後、同大学病院上部消化管内科や関連病院にて研鑽を積む。2014年同大学院上部消化管疾患学修了。尼崎中央病院、宝塚市立病院、神戸掖済会病院などでの勤務を経て2019年より阪和住吉総合病院内科へ入職、2022年より現職。わかりやすい言葉で患者の理解を深める診察を心がける。
宮本 勇人 消化器内科医長
2011年兵庫医科大学卒業。2012年より宝塚市立病院で研鑽を積み、2014年より同消化器内科で診療に従事。2018年には阪和住吉総合病院消化器内科へ入職、2022年より現職。診療では、無症状で進行しやすく自己判断が難しい消化器病変だからこそ、早期の検査や生活習慣改善の重要性を伝えている。