先端の手術で出血を抑え早期回復をめざす
変形性膝関節症の治療
医療法人社団明芳会 高島平中央総合病院
(東京都 板橋区)
最終更新日:2024/12/16
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- 保険診療
- 変形性膝関節症
加齢により軟骨がすり減ることで起こる「変形性膝関節症」。初期は多少不便を感じる程度で済むことも多いが、徐々に痛みや変形が進み、放置すると行動範囲を著しく狭める可能性もため、痛みや違和感の段階で整形外科を受診することが望ましいとされる。「高島平中央総合病院」では、変形性膝関節症の段階に応じて、薬物療法やリハビリテーションでの筋力強化や歩き方の補正、装具の着用など複数の方法を併用し適切な治療を実施。保存療法で改善されない場合は、侵襲の少ない人工関節置換術を積極的に行っている。先端のロボット支援手術や出血をできる限り抑えるアプローチで早期の回復をめざす同院の取り組みについて、整形外科の角田佳彦医長に聞いた。(取材日2024年10月7日)
目次
変形性膝関節症は放置すると痛みが増大し生活の質が著しく低下することも。早めの受診で適切な治療を
- Q変形性膝関節症はどのような疾患ですか。
- A
整形外科医長の角田佳彦先生
変形性膝関節症は、加齢に伴い軟骨が徐々にすり減り骨と骨がぶつかることで痛みを発症したり、大腿骨と脛骨の角度が変わることでO脚になるなどの変形が起こる病気です。膝の関節は関節包という袋状の膜に包まれていて、その内側に滑膜という薄い膜があります。通常、関節包の中には常に滑膜から分泌された2〜3ccの関節液があり、それを吸収し循環していますが、軟骨のすり減りや損傷、半月板が痛むことで関節包が滑膜を刺激し炎症が起こり、関節液が過剰に分泌され膝に水がたまってしまいます。水がたまると関節包が膨らみ関節を圧迫するため、痛みや膝が曲げにくくなるなど日常生活に大きな支障を来すこともあります。
- Q変形性膝関節症はどんな人に多いのでしょうか。
- A
痛みなどで日常生活に大きな支障を生じることも
変形性膝関節症のそもそもその理由は加齢で、特に女性に多い傾向にあり、女性は男性よりも筋肉量が少ないことが影響しているといわれています。女性は40〜50歳ぐらいから、男性は50〜60歳ぐらいから少しずつ変形が進むことが多いです。一般的に変形性膝関節症は中高年以降の病気ですが、スポーツや重労働で膝を酷使したり、肥満、遺伝的素因などによって軟骨や半月板の構造が痛んでいると、通常より早く膝関節症が発症するという場合もあります。
- Q変形性膝関節症を放っておくとどうなるのでしょうか。
- A
薬物療法やリハビリなどのほか、侵襲の少ない手術を取り入れる
変形性膝関節症は徐々に進行し変形がひどくなっていく病気であるため、放っておくと痛みが出て、動く量や歩く量が減っていってしまいます。私たちは普段、何げなく仕事をしたり日常生活を送ることで一定の筋力を維持していますが、例えば痛いからとスーパーに行く回数が減るとその分筋力が落ちていってしまいます。膝の周りの筋力は膝の関節の安定に寄与しているため、筋力が下がってしまうと、もともと変形している膝関節がより不安定になり、さらに痛みを感じやすくなるという悪循環になることもあります。そうなるとなおさら歩かなくなってしまうため、日常生活で困るような痛みがあるときは、整形外科を受診されることをお勧めします。
- Qこちらで行っている人工関節置換術の特徴を教えてください。
- A
先端のロボット支援手術も導入
当院では2022年10月にロボット支援手術を導入しました。できるだけ良い位置で精密に骨切りをすることで、より違和感が少なく、長持ちする人工関節の設置をめざしています。また、当院では、筋肉のつながりを断たずにアプローチする方法によって、術後の痛みの軽減や早期回復をめざしています。筋肉を切らなければ出血量は減ります。出血が少なければ貧血にならないだけではなく、腫れや痛みが減るといったさまざまなメリットがあります。その他、出血量を減らすための方法として、膝のお皿の骨の周りを圧迫固定したり、裏からの出血には止血帯を巻くなどさまざまな工夫をすることで、痛みをトータルに低減できるよう努めています。
- Q手術後のリハビリについても教えてください。
- A
設備が充実しているリハビリテーション室
術後ずっと寝たままでいると筋力が衰えやすくなるほか血栓もできやすくなるため、リハビリは基本的には手術の翌日から行います。術後3日間ほどは膝を包帯で固定しているため動かしにくい状態ではありますが、膝を曲げる訓練を始め、立ったり、理学療法士と一緒に歩いたり、患者さんの能力に併せて進めていきます。ある程度動けるようになれば、自動で膝を曲げる装置で曲げる動作をアシストしたり、平行棒で往復ができたら歩行器やつえで歩く練習をするなど、個々の能力によってどんどんレベルをどんどん上げていきます。最終的には、ご自宅の状況をヒアリングした上で、階段の昇降の練習など日常生活に合った訓練を取り入れていきます。
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角田 佳彦 医長
2003年東京医科大学卒業。同大学第一外科に入局。呼吸器外科で8年ほど肺がんの治療に携わった後、より患者の全身を診られる診療科を志して整形外科へ。2010年から高島平中央総合病院勤務。日本整形外科学会整形外科専門医。