腰椎椎間板ヘルニアに対する
保存療法から低侵襲手術まで
医療法人社団明芳会 高島平中央総合病院
(東京都 板橋区)
最終更新日:2024/12/12
- 保険診療
- 椎間板ヘルニア
背骨の間にある「椎間板」と呼ばれるクッションの役割をする組織が飛び出し、神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こす椎間板ヘルニア。一般的に、腰や首の部分で起こることが多く、「腰椎椎間板ヘルニア」や「頸椎椎間板ヘルニア」として知られている。多くの場合、飛び出た椎間板は自然に吸収され痛みも治まるが、中には歩けないほどの激痛が起こるなど、生活に影響を及ぼすこともあるという。「高島平中央総合病院」では、脊椎外科を専門とする3人の医師が日々研鑽を積み、幅広い脊椎外科疾患に対して専門性の高い手技による治療を提供している。そこで、同院での椎間板ヘルニアへの取り組みについて、整形外科医長の平尾雄二郎先生に聞いた。(取材日2024年10月22日)
目次
まずは保存療法で痛みの改善をめざす。内視鏡手術や酵素注入療法など低侵襲手術を中心に術式が豊富に
- Q椎間板ヘルニアとはどのような病気ですか。
- A
椎間板は背骨の間でクッションのような役割をしており、外側の「線維輪(せんいりん)」という弾力性のある組織と内部の「髄核(ずいかく)」と呼ばれるやわらかいゼリー状の組織から成っています。椎間板ヘルニアは脊柱管狭窄症と比べると発症年齢が若く、30〜40代の方に発症しやすい傾向にあります。活動性が高い方に起きやすく、中腰の姿勢で長時間仕事をしていたり、前かがみで重いものを持つといった動作をきっかけに線維輪に亀裂が入り、髄核の一部が神経の通り道に飛び出ることで腰痛、脚の痛み、しびれを発症します。
- Q腰椎椎間板ヘルニアはどんな初期症状がありますか。
- A
まずは腰痛や坐骨神経痛のほか、太もも、脛にかけての痛みが起こります。多くは片側のみの痛みですが、ヘルニアの飛び出し方によっては両足に痛みが出ることもあります。ほとんどの場合、1〜2ヵ月たつと出たヘルニアが吸収されてだんだん痛みが和らいできますが、中には発症後1週間ほどしてから痛みがひどくなったり、最初から激しい痛みが出ることも。痛みの出方はさまざまですが、足の痛みやしびれがある場合は、なるべく早めに病院を受診しましょう。また、歩けないほどの激痛は、それだけ神経に対するヘルニアの圧迫が強いということです。圧迫が強いと神経麻痺を起こすことがあるため、より早めに受診することをお勧めします。
- Qどのような治療を行うのですか。
- A
ヘルニアの7〜8割は2、3ヵ月で自然に吸収されていくので、まずは保存療法で手術をせずに治すことをめざします。投薬治療から始めますが、お仕事や日常生活を送る上で支障が強い場合には、神経根ブロックなどブロック治療によって症状をより緩和させることをめざします。また、ヘルニアは前傾姿勢で発症することが多いため、腰を後ろに反らすような後屈運動も症状の緩和に有用です。当院はリハビリテーションが充実しているので、リハビリと薬物療法を同時並行で提案させていただくことも多いです。とにかく早く症状を治したいという方もいれば、時間がかかっても手術せずに治したいなど、患者さんのニーズに合わせて治療を考えていきます。
- Q保存療法以外にはどんな治療をするのですか。
- A
保存療法で改善しない場合は手術が必要ですが、近年は低侵襲手術を中心に術式の選択肢が増えています。例えば、ヘルニアに対し局所麻酔で行うコンドリアーゼ注入療法は、椎間板内部に注射針を挿入し、薬液を注射することでヘルニアの溶解を図ります。ブロック治療と同じぐらい侵襲度が低く、より根本的な改善をめざせる治療です。当院では薬剤の副反応などを考慮し1泊2日の入院で実施していますが、苦痛が少ないので、希望される方も増えています。この治療は、術後1、2週間してから徐々に効果が期待できるようになり、6週間ほどで改善が見込めます。ヘルニアのタイプによっては適応外のため、正確な診断が重要です。
- Qこちらでの内視鏡手術の特徴を教えてください。
- A
内視鏡手術は全身麻酔下で2cm弱の切開で行う手術です。直接ヘルニアを摘出することができるので、コンドリアーゼ注入療法に比べて、速やかに痛みを取り除くことが望めます。そのため、より仕事に早く復帰したいとか、とにかく早く痛みを取りたいという方にとっては非常に有用な治療だと思います。痛みが少なく、傷が目立たず、回復が早めな点もメリットです。当院では3人の脊椎外科専門の医師が幅広い脊椎疾患に迅速に対応し、低侵襲手術を中心に患者さんのニーズに沿った医療を提供しています。また、経験豊富なリハビリスタッフが多数在籍し、手術後のアフターケアの充実も強みだと考えています。