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新薬からデイケアまで
認知症は早期発見・介入で進行の抑制を

地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立広尾病院

(東京都 渋谷区)

最終更新日:2025/01/31

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  • 保険診療

記憶や判断力などの認知機能が低下し日常生活に支障が出る認知症。高齢化に伴い患者数が増加する中、最も一般的なアルツハイマー型認知症に対する治療薬が開発され、その効果が期待されている。「東京都立広尾病院」では、初期のアルツハイマー型認知症への新薬による治療を開始。薬でアルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβの蓄積の減少につなげて、認知機能の低下を緩やかにすることを図り、できるだけ長く患者が自分らしく生活できる期間を増やすことをめざしている。同院では、認知症の早期発見を目的とした物忘れの外来や、認知症患者を対象とした院内デイケアも実施。これらの認知症についての取り組みについて精神神経科の中野谷貴子医長に聞いた。(取材日2024年10月3日)

認知症は早期発見・早期治療が進行を遅らせるための鍵になる。アルツハイマー型認知症には新薬による治療も

Q認知症の初期症状にはどういったものがありますか。

A

軽度認知障害の段階であれば回復が望めることも。早めに受診を

認知症の初期症状の代表的なものの1つが物忘れです。物をどこに置いたかわからなくなる、道に迷ってしまう、物がなくなったときに誰かに盗られたと考えてしまう、買ったことを忘れて同じものを買ってくる、かばんの中に入れたはずの鍵を探すのに時間がかかるなどで、ご家族が気づくことも多いです。ご本人は認めたくないという気持ちから、まったく困っていないとおっしゃる場合もありますが、かかりつけの先生が診て、認知症が進んできたのではないかということで、病院への受診を勧めるケースもあります。軽度認知障害の段階であれば回復が望める可能性もあるので、このような症状が目立つようであれば早めに病院を受診しましょう。

Q認知症の診断のためにはどのような検査を行いますか。

A

さまざまな検査結果を踏まえ、治療的介入が必要か判断

当院の物忘れの外来では、MRI検査、SPECT検査といった画像検査、血液検査、認知症の診断に必要な長谷川式知能評価スケールやMMSEといった心理検査を実施しています。その結果を踏まえて、身体的な問題によって認知機能が低下している可能性も確認した上で、年齢特有の物忘れなのか、治療的介入が必要なのかを判断していきます。物忘れの外来では大まかな診断をつけることはできますが、グレーゾーンであったり、アルツハイマー型認知症ではなくレビー小体型認知症の診断など、さらに詳しい鑑別が必要な場合は、ドパミントランスポーターシンチグラフィやMIBG心筋シンチグラフィといった専門性の高い検査を行います。

Q導入された新薬による治療はどのような治療なのですか。

A

アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症に対する新薬は、アルツハイマー型認知症の原因の1つであるアミロイドβと呼ばれるタンパク質を取り除くのに役立ち、病気の進行を遅らせる効果が望めるといわれています。この薬を使ったからといって認知症が完全になくなるわけではないですが、従来の内服薬よりも早い段階で介入することで、その人らしい生活を送る期間が長くなることが期待できるとされています。2週間に1度、外来を受診していただき、1時間程度かけて点滴治療を行いますが、当院では初回のみ1泊2日の入院で投与し、副反応など問題がなければ2週間ごとの外来で18ヵ月間続けていきます。

Q新薬はどのような人が対象となるのでしょうか。

A

前述のように、認知機能検査の指標のもとに、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症と診断された方が対象で、受診していただいた時点で認知症が進行しておらず、自宅での生活である程度自立度が保たれていて、脳にアミロイドβが蓄積していることが条件になります。投与を開始する前の検査として、アミロイドPET検査または腰椎穿刺による脳脊髄液検査を行いアミロイドβが脳に蓄積しているかどうか確認し、条件をクリアしていれば新薬投与を開始することができます。

Q認知症患者向けのデイケアも行っているそうですね。

A

デイケアで認知症の進行の抑制につなげる

当院では2023年の9月から精神神経科以外の診療科も含め、認知症のある患者さんの中から参加者を選定して、月に2回1時間程度の院内デイケアを企画しています。平均年齢は80歳で、プログラムとしては、患者さんの自己紹介、日付の確認、昔懐かしい曲をみんなで歌う、ラジオ体操で体を動かす、ボーリングや的当てなどで、最後に参加者全員にメダルをお渡ししています。デイケアによって期待できる効果としては、せん妄や昼夜逆転の解消の他、夜の睡眠の質の改善などが考えられます。人との交流や体を動かすことは、認知症の進行の抑制につながるといわれています。

患者さんへのメッセージ

認知症は、進行してからよりも早期の段階から治療を始めることでその後の人生が大きく変わると考えられます。ご自身で何かおかしいな、ちょっといつもと違うなと思ったら早めにご相談ください。ご家族だけで来ていただき情報を提供することも可能です。当院の物忘れの外来では、認知症の診断に必要な検査を1日で行い、結果もその日にお伝えしています。予約制になるため、かかりつけの先生を通してご予約いただければと思います。また、精神神経科の外来でも一通りの検査が可能です。ぜひご利用ください。

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