先端技術で難症例にも対応
心房細動等の不整脈へのカテーテル治療
地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立広尾病院
(東京都 渋谷区)
最終更新日:2024/02/20
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心房内で異常な電気興奮が起こり、心室に電気信号が不規則に伝わってしまうことで発生する心房細動。脈が乱れたり脈拍が速くなったりすることで、動悸や胸の違和感といった症状に加え、脳梗塞や心不全など命に関わる重篤な疾患を引き起こすことも。一般的には、内服治療、カテーテルアブレーション治療、外科手術の治療法があるが、近年は内服治療よりも根治的であり、手術よりも低侵襲のカテーテルアブレーション治療への注目が高まっている。カテーテルアブレーション治療について豊富な実績を持つ「東京都立広尾病院」では、患者の選択肢を増やし、精度の高い治療のために冷凍バルーンアブレーション等の新しい機器も積極的に導入。今回は循環器内科部長の深水誠二先生に、心房細動の先端治療法について聞いた。(取材日2022年9月15日)
目次
心房細動は放置すると重篤な脳梗塞が生じることも。従来型に加え先端のカテーテルアブレーション治療を実践
- Qまずは心房細動がどのような疾患か教えてください。
- A
まず、不整脈は大きく分けて期外収縮、頻脈、徐脈の3種類に分類され、心房細動は頻脈性不整脈の一つになります。心臓の動きは電気信号によってコントロールされていますが、心房の中で異常な電気興奮が起こってしまい、心臓の下にある心室に電気信号が不規則に伝わってしまうことで発生するのが心房細動という病気です。不規則に心臓が収縮するため、脈が乱れたり脈拍が速くなったりします。それによって動悸、胸の違和感、呼吸がしづらいなどの自覚症状を伴うことがありますが、症状が出ないケースも少なくありません。
- Q心房細動と脳梗塞にはどのような関係があるのでしょうか。
- A
基本的に不整脈自体が命に関わるわけではありませんが、脈が乱れることで血流がよどみ、それによって心臓の中に血栓と呼ばれる血の塊ができてしまうことがあります。これが血流に乗って頭に運ばれると、脳梗塞を起こす原因となります。特に高齢の方は抗凝固薬を飲んでいない状態で心房細動を放置すると、より重篤な脳梗塞になる可能性が高まります。若い方でも、高血圧や糖尿病などの基礎疾患のある方は注意が必要です。また、本来の整った心拍ではなくなってしまうため、放置すると心臓に負担がかかり、心臓の機能が低下したり、心不全に陥ってしまったりする可能性もあります。
- Q具体的にはどのような治療法があるのでしょうか。
- A
心房細動の原因の多くは、肺から左心房へ流入する肺静脈という血管から異常な電気信号が発生し、これが心臓に伝わってしまうことだと考えられます。ですので、当院では心房細動に対する根治的療法として、左心房と肺静脈の間をカテーテルを用いて電気的に隔離する目的のカテーテルアブレーション(肺静脈隔離術)という治療を積極的に行っております。心房細動が初期の状態であれば、発作を薬で予防や緩和を図る内服治療もあります。ただし長期的に考えると、発作の頻度が増えたり、発作の時間が長くなったりする可能性がありますので、内服治療で様子を見続けることはお勧めできません。適切な時期に、適切な治療を行うことが重要になります。
- Qこちらのカテーテルアブレーション治療の強みや特徴は?
- A
従来型の高周波アブレーションに加え、冷凍バルーンアブレーション、バルーンアブレーションといった治療が可能です。患者さんの状態によって使い分けることができますので、患者さんは選択肢が増えることになります。高解像度3Dマッピングシステムも3種類から選択可能で、カテーテル室は2つ用意しています。また、スタッフ全員が高いレベルの技術が提供できるような教育体制も整えております。充実した機材とスペース、そしてスタッフの技術がそろっていると自負しております。脳外科や心臓血管外科など血管に関する科がタッグを組んだ血管外治療センターも備わっておりますので、より厚いフォローができると思います。
- Qこちらは不整脈の診療には歴史と実績があるそうですね。
- A
当科では1990年代より不整脈診療を専門的に行ってきました。先端の医療機器を駆使して質の高い治療提供に努め続けています。不整脈にもさまざまな種類がありますが、技術の進歩により、現在当院ではほぼすべての種類の不整脈に対して、カテーテルアブレーション治療を実施できるようになっております。他院で治療が難しいと言われた患者さんを受け入れることもできますし、心外膜アプローチを用いたアブレーションのような難易度の高い治療にも対応できるのが当院の強みですので、各医療機関の方は安心して当院に患者さんをご紹介いただければと思います。
深水 誠二 部長
1995年日本大学医学部卒業。卒業後は日本大学病院の前身である駿河台日本大学病院循環器科に入局。その後、公立阿伎留病院循環器科での勤務を経て、2001年より東京都立広尾病院の非常勤医師として数年間、不整脈治療に従事して研鑽を積む。2006年より同院へ。現在は循環器科部長と併せて、血管内治療センター長も務める。医学博士。日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医。