目に見える血尿は膀胱がんの疑いも
内視鏡検査で早期発見・治療を
医療法人社団實理会 東京国際大堀病院
(東京都 三鷹市)
最終更新日:2023/03/14
- 保険診療
- 膀胱がん
泌尿器科で扱うがんの中で前立腺がんに次いで多い膀胱がん。尿は腎臓できて腎盂という袋から尿管を通って膀胱にたまるが、この腎盂、膀胱、尿管は同じ粘膜でできており、膀胱がんはそこにできる尿路上皮がんの1種だ。粘膜内にとどまっている早期がんであれば内視鏡を使った治療が可能だが、進行がんであれば膀胱を全摘出しなくてはいけなくなる。泌尿器科と婦人科の専門病院としてロボット支援手術をはじめとする先端の医療を実施する「東京国際大堀病院」では、前立腺がんの治療とともに膀胱がんの治療にも注力。そこで、同院の院長であり泌尿器疾患に精通する大堀理院長に膀胱がんの治療について聞いた。(取材日2023年1月18日)
目次
肉眼的な血尿はすぐに泌尿器科の受診を。早期がんは内視鏡で、進行がんの膀胱全摘はロボット支援手術が主流
- Q膀胱がんはどんな病気か、原因や自覚症状も教えてください。
- A
膀胱の内側にある尿路上皮という粘膜から発生した悪性腫瘍を膀胱がんといいます。膀胱がんの原因の1つに喫煙があり、煙草を吸うことで変化した分泌物が尿に溶け膀胱の粘膜に悪影響を及ぼすといわれています。50歳以降から増え明らかに男性のほうが多いのが特徴です。最も多い自覚症状は痛みも熱もない状態での目で見える血尿です。早期の膀胱がんは膀胱の中にブロッコリーのような小さなポリープができてそこから出血するのですが、他の症状がほぼないのが典型的で、泌尿器科の医師は「痛くもかゆくもないのに血が出ました」と聞くと膀胱がんを疑います。一方、進行すると、おしっこが近い、出にくい、排尿痛などの排尿障害が起こります。
- Q一般的にはどのような検査や治療をしますか?
- A
診断と治療を兼ねて内視鏡で膀胱内を検査してがんが見つかれば、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)を行います。膀胱の壁には必ずポリープの根がありその深さで治療が変わってくるため、根が筋肉まで達していないが粘膜下層ギリギリというときは、再度TUR-BTを行い確認することもあります。膀胱がんにおいて内視鏡治療は重要なため、ポリープの採取が不十分であったり膀胱の壁に穴が空いてしまうことがないよう、専門の医師がいる病院を選ぶことをお勧めします。また膀胱がんは再発しやすいためTUR-BTの24時間以内に尿道からカテーテルで膀胱に抗がん剤を入れたり、BCG膀胱内注入療法を行うことで再発予防を図ります。
- Q専門病院である貴院の特徴的な治療はありますか?
- A
当院では、5-アミノレブリン酸を服用し膀胱がんを赤く光らせることで、肉眼ではわかりにくいようながんも確認できるように光線力学診断補助下でTUR-BTを行っています。この治療は特殊な膀胱鏡が必要であることや薬を服用後48時間は紫外線を当ててはいけないため暗い部屋で待機していただき、手術室へ行く際も布をかぶせて移動をしなくてはならないため、対応している医療機関は少ないです。また、膀胱がんは進行している場合、基本は膀胱全摘となりますが、当院では膀胱全摘をロボット支援下手術で行っています。従来の方法と比べて傷が小さく出血が少ないので輸血の可能性が低く患者さんへの負担が少ないのが特徴です。
- Q膀胱全摘をした後はどのような治療を行うのですか?
- A
膀胱を摘出した後は尿の出し方を変更する必要があり、当院では回腸という小腸の大腸に近い部分に尿管をつなげておなかに出して袋に尿を集めるための回腸導管と、回腸で膀胱を作り尿道とつなげて自然に排尿するための自然排尿型代用膀胱に対応しています。代替膀胱は尿意は感じませんが、慣れてくるとおなかの張り感で尿意がわかるようになり、傷が小さく漏れや残尿感のトラブルが少ないのも特徴です。どちらの方法が適しているかは、年齢や腎機能障害など併存疾患から総合的に判断しますが、当院では適用があれば代用膀胱をご提案し、2022年の1年間ではロボット支援下手術による膀胱全摘術を実施したうち4割弱で新膀胱の手術を行いました。
- Q貴院の特徴や強みを教えてください。
- A
当院は泌尿器科と婦人科の専門病院で月〜金曜日まで手術をしており、早期の入院・手術が可能です。内視鏡の手術の所要時間は30分〜1時間ほどなので、午前中に入院し午後に手術ということも日常的に行っています。これは小規模の専門病院のメリットの1つと言えるでしょう。膀胱がんは、膀胱全摘をする人のうち約半数が5年以内に命を落とす可能性があるといわれているため、一般的には手術前に約3ヵ月かけて抗がん剤治療を行います。当院では、抗がん剤の導入時期のみ入院していただき副作用を診ていきますが、その後は外来で対応しており、待ち時間も少なく、患者さんの生活スタイルを大きく変えることなく治療を進めることができています。
大堀 理 院長
1986年岩手医科大学卒業後、北里大学病院で研修。1990年より米国ヒューストン市ベイラー医科大学へ留学し同泌尿器科講師、米国メモリアルスローンケタリングがんセンター前立腺診断センター副所長などを歴任。2007年に東京医科大学教授に就任し、同大学前立腺センター長、同大学ロボット手術センター長などを経て、2019年東京国際大堀病院を開院。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。医学博士。