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女性のQOL向上をめざして行う
骨盤臓器脱のロボット支援手術

医療法人社団實理会 東京国際大堀病院

(東京都 三鷹市)

最終更新日:2022/02/22

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  • 保険診療
  • 骨盤臓器脱
  • 尿失禁

内臓が下腹部まで下がる感じ、膣に物が挟まったような違和感、頻尿や尿漏れなどの排尿のトラブル。「気のせい、年のせい」でやり過ごしがちな症状も、婦人科や泌尿器科が専門とする「骨盤臓器脱」かもしれない。出産後や閉経後の40、50代から増え、20代で発症する場合もある骨盤臓器脱は、腹部に常時力を入れる仕事や行動などもリスク要因。「症状に悩んでいても、病気とは思わず治療が遅れる方は多いです」と「東京国際大堀病院」の井坂惠一婦人科部長。命に直接関わらないが、膣から臓器の一部が出るなどQOL(生活の質)が阻害されるため、同院泌尿器科の山下英之先生は「治療でQOL改善をめざせることを知ってほしい」と話す。2人の医師に病気の原因や治療法を詳しく聞いた。(取材日2021年2月3日/更新日2022年2月14日)

排尿トラブルや臓器脱など下腹部の不快な症状の軽減をめざす。ロボット支援手術による骨盤臓器脱の治療

Q骨盤臓器脱とはどんな病気なのでしょうか。

A

どんなことでも相談しやすい環境を整えている

【山下先生】骨盤臓器脱は、通常は骨盤内に収まっている子宮、膀胱、腸などが下がり、下腹部に不快感を感じたり、膣から臓器の一部が出てきたりする病気です。以前は子宮脱、膀胱脱など個別に呼ばれていましたが、多くの場合は複数の臓器が下垂するため、現在は骨盤臓器脱と総称します。進行すると膣に物が挟まったような違和感、頻尿や尿漏れなどの排尿のトラブル、残便感や頻便などの排便のトラブル、下腹部痛などを伴います。妊娠・出産や閉経も関係するため、40代、50代から増える病気ですが、中には20代、30代の患者さんもいます。なお骨盤臓器脱の排尿トラブルは過活動膀胱の症状とも似ており、専門家の的確な診断が欠かせません。

Q出産や閉経などのほか、どのような原因で起きますか?

A

婦人科・泌尿器科が連携し、治療できることが特徴

【山下先生】出産が骨盤臓器脱の原因になるのは、出産で胎児が膣を通過する際、臓器を支える骨盤底筋にダメージが残るためです。加齢による筋力低下、閉経による女性ホルモンの減少も臓器を支える力を弱め、骨盤臓器脱の原因になります。骨盤底筋にダメージを与える強い腹圧がかかる行動、例えばしゃがんだ状態で力が要る仕事をする、長時間の立ち仕事をする、などもリスク要因です。このほか、便秘でおなかに力を入れがちな方、慢性の咳やくしゃみを伴う呼吸器の病気の方、高度な肥満の方なども同様。同じ臓器脱でも、男性は足のつけ根の部分から臓器が飛び出す鼠径ヘルニアが多く、膣から臓器が出る骨盤臓器脱は女性特有の病気といえます。

Q骨盤臓器脱に治療法はあるのでしょうか?

A

骨盤臓器脱の検査に用いる先進のCT

【山下先生】骨盤臓器脱では、頻尿や尿失禁などの排尿トラブルの改善と、臓器の下垂を防ぐことが重要ですが、根本原因は骨盤底筋の筋力低下にあり、お薬では治せません。そのため筋力の維持・向上をめざすこと、臓器が下垂しないようにするための手術などが主な対処法です。
【井坂婦人科部長】病気の初期であれば骨盤底筋体操によって筋力の向上を促すことで、進行抑制や排尿トラブルのケアを図っていきます。また、治療法としては膣内にリングを入れて臓器が下がらないようにするための方法もあります。手術治療は、膣をつり上げて仙骨に固定する仙骨膣固定術が現在のスタンダードで、当院ではロボット支援による腹腔鏡手術で行っています。

Q骨盤臓器脱のロボット支援手術の特色は何でしょうか?

A

手術で用いるロボット。痛みの軽減、良好な治療結果が期待できる

【井坂婦人科部長】一般的にロボット支援手術は患者さんの痛みを軽減できるだけでなく、まるで医師の手のような感覚で手術器具を動かせます。これにより良好な治療結果が期待できるため、患者さんにとっても非常に大きなメリットになっています。特にメッシュを使った仙骨膣固定術は、仙骨部分に膣をつり上げると同時に、人工素材を網状にしたメッシュで臓器の下垂を防いでいくという複雑な術式で、これらを腹腔鏡だけで行うのは熟練した医師でないと難しかったのです。しかしロボット支援手術により、多くの医師がこの術式で安定した治療を行うことがめざせるようになっています。

Q手術のリスク管理のために留意される点を教えてください。

A

婦人科・泌尿器科が連携し、治療できることが強み

【井坂婦人科部長】ロボット支援による仙骨膣固定術は、患者さんの頭側を30度ほど下げた姿勢で行います。これにより脳圧や眼圧が高くなるので、心臓や脳血管の病気と後遺症、眼圧の高さがリスクになる緑内障などがないか、事前に詳しく伺って同手術が可能か判断しています。また、子宮や膀胱に関わる骨盤臓器脱は婦人科と泌尿器科の境界領域のため、手術も両科の医師が一緒に行う体制を整えています。このように互いの専門的な知見を持ち寄って適切に診断・治療ができることも強力なリスクヘッジになっています。
【山下先生】手術に限らず、診断から両科が密接に協力して行うことで、クオリティーの高い手術ができていると自負しています。

患者さんへのメッセージ

山下 英之 先生

1999年北里大学卒業後、同大学泌尿器科学教室入局。2002年国立病院機構横浜医療センター泌尿器科、2003年東海大学医学部外科系泌尿器科、2004年北里大学医学部泌尿器科助教。2005年ベイラー医科大学Research Fellow。2009年国際医療福祉大学三田病院泌尿器科講師。2016年北里大学北里研究所病院泌尿器科副部長。2019年より東京国際大堀病院勤務。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。

井坂 惠一 婦人科部長

1976年東京医科大学産科婦人科学教室入局。スイスや英国留学を経て、1991年東京医科大学産科婦人科学講師として再び勤務。1992年より子宮鏡下手術に取り組み、1993年には吊り上げ法式腹腔鏡手術を婦人科疾患に導入。2009年、婦人科でのロボット手術を施行。2020年4月より現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。

【山下先生】骨盤臓器脱は、症状の重さやご本人の感覚次第で、患者さんごとに「これくらいは大丈夫」から「とても我慢できない」まで、まったく捉え方が異なる病気です。当院では、そうしたご本人の希望を踏まえ、手術に限らず適した対処方法をご提案しますので、どうぞお気軽にご相談ください。
【井坂婦人科部長】もし手術を行うことになっても、ロボット支援による腹腔鏡手術なら入院は3、4日ほどで、退院後は大事をとって1週間ほど安静にしていただけば、すぐに通常の生活に戻れます。体への負担の少ない手術で、女性特有の不快な症状を早く軽減することをめざしていただければと思います。

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