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不整脈に対する
カテーテルアブレーションの先端治療

独立行政法人地域医療機能推進機構 東京山手メディカルセンター

(東京都 新宿区)

最終更新日:2023/12/28

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  • 保険診療
  • 心不全
  • 脳梗塞
  • 不整脈
  • 心房細動

脈が本来の伝わり方をしていない状態の不整脈は、主な症状に動悸やめまい、ふらつき、息苦しさ、胸の痛みなどがあり、種類によっては脳梗塞や心不全を引き起こす可能性もある。治療法は複数あるが、薬の治療は根治が望めないため、多くの医療機関では不整脈が起こっている場所を特定し焼灼により消滅を図るカテーテルアブレーション治療が行われている。不整脈治療において高い専門性を発揮する「東京山手メディカルセンター」の循環器内科では、冷凍凝固して治療をするクライオバルーンによるアブレーション治療を得意とし、その技術を応用し考案した画期的な方法による難治性心房細動の治療にも力を入れている。そこで同院循環器内科の副部長で不整脈治療を専門とする鈴木篤先生に、不整脈の先端治療について聞いた。(取材日2023年11月30日)

脳梗塞や心不全の原因にもなる心房細動は早期に治療を。難治性の持続性心房細動も先進の治療で根治をめざす

Q不整脈にはどんな種類がありますか?

A

不整脈治療について語る鈴木先生

不整脈は大きく分けて上室性と心室性があり、上室性不整脈には、心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍のほか、心房性期外収縮、心房頻拍、WPW症候群などがあります。特に心房細動は適切な治療を行わないと脳梗塞や心不全を起こすため注意が必要です。心室性不整脈は、単発の心室性期外収縮、期外収縮が連続的に起こり、命の危険を伴う心室頻拍、心室がけいれんしてポンプ機能が果たせず死に直結する心室細動があります。飲み薬による不整脈治療では、ある程度コントロールが望める不整脈もありますが、根治に至ることはありません。一方で現在はほとんどの不整脈でカテーテルアブレーション治療が可能で、根治がめざせるものも多くあります。

Q発作性心房細動の検査方法や治療法を教えてください。

A

術前の左心房3次元マッピングのイメージ

発作性心房細動は不整脈の発作が1週間以内で治まり正常な心拍に戻るもので、1週間以上続くものを持続性心房細動、1年以上続くものを長期持続性心房細動といいます。持続性か発作性かは24時間心電図や1週間心電図で見極めることができるほか、発作性心房細動は心エコー検査を行うと心臓がそれほど傷んでおらず、心房がたるんでいないことが多いです。発作性心房細動を放置すると発作が止まりにくくなり持続性に移行するため、発作性のうちに治療をするのが望ましいです。治療は、症例に応じてクライオバルーンや高周波通電、ホットバルーンといったカテーテルを選択し、肺静脈隔離術を基本としたカテーテルアブレーション治療を行います。

Q持続性心房細動ではどのような治療をするのですか?

A

クライオバルーンを持つ鈴木先生

持続性心房細動治療においては、肺静脈隔離術だけでは治癒が望めないケースが多くあります。このようなケースにクライオバルーンによるルーフラインアブレーションが有用であることが知られており、日本では横浜市立みなと赤十字病院の山内康照先生の方法が広く行われるようになりましたが、やや熟練を要する治療でありました。そこでわれわれは手技に改良を加え、よりシンプルで精密にルーフラインを作成する方法を考案しました。これを「Raise Up Technique」と呼んでいます。この方法を行い、ルーフラインの成功率の上昇を図ることで、難治性の持続性心房細動の治療成績の向上をめざしています。

Qこの治療法のメリットとリスクを知りたいです。

A

バルーンを使用した肺静脈隔離術の様子

左心房の後壁を焼灼し隔離する左房後壁隔離術は一般的に難易度が高いですが、難治性の持続性心房細動治療には欠かせない治療の一つで、バルーンを駆使することで標準的な技術でできるというメリットがあります。リスクとしては、一般的なクライオバルーンのリスクと同様で、治療中に心臓の後ろ側を走る食道も冷やしてしまうことで迷走神経を障害し、一時的に胃の動きが悪くなる蠕動運動障害が起こることがあります。このため当院では食道に温度計を留置し、迷走神経障害が起こらないように注意しています。その他、横隔神経麻痺が合併症として考えられますが、当院では横隔神経の走行をあらかじめマッピングしてそこを避けて治療を行っています。

Qその他、この病院ならではの特徴はありますか?

A

操作室の様子

当院では、エタノールを血管に注入して治療を行うケミカルアブレーションや、心室性不整脈の治りにくいものに対するバイポーラアブレーションなどの先端治療を行っています。バイポーラアブレーションは通常のカテーテルが届かない心筋深層起源の心室性期外収縮に対して、2本のカテーテルで挟み込み心筋深層に電気を流す治療です。これらの治療を行うため、いずれもすでに倫理申請を行い、当院倫理委員会の承認を取得し、保険診療の範囲内で治療が可能となっております。どちらも難易度が高く、限られた医療機関でしかできない治療ですが、目の前の患者さんをなんとかしたいという思いで、国内で可能な先端治療に対応できる体制を整えています。

患者さんへのメッセージ

鈴木 篤 副部長

1998年信州大学医学部卒業。横須賀共済病院循環器内科研修中に青沼和隆医師の影響を受け、2000年東京医科歯科大学循環器内科入局。以後武蔵野赤十字病院、横浜南共済病院、平塚共済病院に勤務。2008年Good Samaritan Hospital Los Angelesへ短期留学、当時の3次元マッピングを学ぶ。2016年より現職。専門は不整脈。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。

当院では、「ペイシェント・フレンドリー・カテーテルアブレーション」をキャッチフレーズに、患者さんにフレンドリーなカテーテルアブレーションをめざしています。フレンドリーとは、患者さんに配慮した治療、つまり、高齢者や持病のある人にも安全で苦痛がなく、安心して受けられるという意味を込めています。麻酔をしっかり使う、なるべく造影剤を使わない、針を刺す回数を減らすといった工夫や、治療後は特殊な止血方法で安静時間を短縮するなどさまざまな工夫を行い、患者さんへの負担の少ない治療をめざしています。特に心房細動は脳梗塞や心不全のリスクが上がってしまうため、自覚症状がなくてもぜひ気軽にご相談にいらしてください。

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