独立行政法人地域医療機能推進機構 東京山手メディカルセンター
(東京都 新宿区)
橋本 政典 病院長
最終更新日:2025/08/18


専門性と地域連携により多様な患者に対応
1947年に開設され、長く社会保険中央総合病院(社保中)の名称で新宿区・中野区を中心に地域医療に尽くしてきた同院は、2014年から運営母体が地域医療機能推進機構(JCHO)に移行し、病院名も「東京山手メディカルセンター」に改称。現在は地域医療支援病院および紹介受診重点医療機関となって、近隣のクリニックから患者の紹介を受ける地域医療の拠点となっている。2025年4月に就任した橋本政典病院長は、「大腸肛門病センターや炎症性腸疾患センターの他、24時間365日対応の循環器内科も当院の特徴です」と話す。「そのほか急性期病院として多様な診療科を開設していますが、今後は高齢者救急にも力を入れ、新宿区などが抱える高齢化の課題解決に向けた医療を提供していきます」。地域のクリニックや介護施設はもちろん、病院同士の連携による機能補完で地域医療の向上をめざし、積極的に病院訪問も行っている橋本病院長に、同院の診療面での強みや今後の展望などを聞いた。(取材日2025年4月23日)
こちらの特徴や診療面での強みなどをお聞かせください。

当院は新宿区を中心とした地域医療で多様な役割を担っており、その一つが二次救急医療、専門的な医療を提供する急性期病院の役割です。救急医療は2024年からは、24時間対応の内科および心臓病センターと、働き方改革に対応するため外科・産科が当直体制で対応しています。「できるだけ断らない救急医療」を目標に平日の昼間は救急科が中心、夜間休日は当直の医師が救急の患者さんに対応してきましたが、準夜帯・土曜日の救急医療体制を強化しました。通常診療では地域のクリニックからご紹介いただく患者さんの診療に注力しています。特に整形外科は骨折の治療のほか人工関節置換術の件数も多く、当院の強みの一つである脊椎や手外科診療までカバーします。また循環器内科はカテーテルアブレーションによる不整脈の治療に強く、心臓血管外科の強化により急性心疾患やステント治療にも24時間対応できる体制を整えていきます。
大腸や肛門の病気に対する専門的な治療も得意と伺いました。

大腸肛門病センターおよび炎症性腸疾患センターを開設し、前者は痔をはじめとした肛門の病気、大腸がんなど大腸の病気を幅広く診ています。その中でも痔は症状に応じて各種の専門的な治療を提供可能で、患者さんが全国から「ここで治療を受けたい」と集まってこられるほど広く知られています。一方、後者が中心となって診療する炎症性腸疾患は慢性の病気で、クローン病や潰瘍性大腸炎などが含まれます。特にクローン病の発症は20代前後の若年層にも多く、長期にわたって症状のコントロールを図ることが重要なため、患者さんを継続的に診ていくことが多いですね。当院は消化器疾患全般に強いです。そのほか特徴ある診療内容として、呼吸器内科では膠原病と合併することも多い間質性肺炎、産婦人科では出産時の痛みを和らげることを図る「和痛分娩」や超音波による妊娠初期検診・胎児の検査に注力する点などが挙げられます。
今後さらに重要になる高齢者医療についてはいかがでしょうか?

前述した大腸の病気などで当院は若い患者さんの割合が高く、高齢の患者さんの入院を受け入れる余地は十分にあると考えます。その受け皿となるのが2025年からスタートした「高齢者医療チーム」です。老年内科を専門とする医師を中心に救急科、整形外科など関連の深い診療科によるチーム医療により、認知症ケアのほか、さまざまな病気を併発した患者さんをトータルに診療。例えば骨折で入院された高齢の患者さんも、多くは生活習慣病や循環器など内科の病気をお持ちです。そのような場合に同チームが内科・外科の両面から担当し、診療の最適化もめざします。また、在宅療養中の患者さんの容体が悪化して入院を検討されるとき、当院の近隣に多い大学病院などの高度急性期病院が手いっぱいといったことはよくあります。そうしたケースで当院に入院していただく地域連携も進めたいと考えています。
それでは地域連携の取り組みについて教えてください。

当院は2019年に地域医療支援病院、2023年に紹介受診重点医療機関となり、地域のクリニックなどからご紹介の患者さんを治療し、クリニックに逆紹介する地域医療の拠点としての役割が一層明確化されました。そのため当院と連携していただける各クリニックの情報を詳細に把握し、紹介患者さんのよりスムーズな受け入れと治療はもちろんですが、治療後の患者さんにより合致した逆紹介先をご提示したいと考えています。また、在宅の患者さんには「急に容体が悪化したので少し入院させたい」といったニーズも増加すると考えられますから、そうしたお困りの状況にも当院で可能な限り対応します。
最後に今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。

最近の取り組みとして、2025年4月から前立腺のMRI超音波融合画像ガイド下生検を開始しました。これはMRIと超音波検査の結果を重ねた画像をガイド用に表示しながら前立腺を検査する方法で、従来の経直腸的生検と比べて腫瘍のある組織をピンポイントで採取しやすく、感染のリスクも軽減できるのがメリットです。今後は前立腺がんに対するロボット支援手術も導入予定です。また数年がかりの計画ですが、設備も少しずつ改修を進め、まず6人部屋の病室を4人部屋にして患者さんごとのスペースを広く取るなどのリニューアルを行う予定です。当院は大腸など消化器に強い病院ですが、ほかにも多様な診療科があり、産婦人科や心臓血管外科にも多くのご期待をいただいています。さらにがん診療や高齢者救急にも力を入れるなど、今後も地域に必要な医療を提供していきますので、クリニックから当院を紹介されたら、安心して受診したいただければと思います。

橋本 政典 病院長
1987年東京大学医学部卒業。同大学第三外科に入局し、同大学医学部附属病院分院で診療に従事。2000年国立がん研究センター中央病院 、2001年東京大学医学部附属病院乳腺内分泌外科、2003年国立国際医療センター外科を経て、2018年同院副院長を務めた後、2025年4月から現職。日本外科学会外科専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、日本超音波医学会超音波専門医。