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退院後の社会復帰まで支援する
脊髄損傷のリハビリテーション

社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院

(大阪府 高槻市)

最終更新日:2024/11/18

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  • 保険診療

事故や外傷などを主な原因として、国内では年間約5000人の患者が発生しているといわれる脊髄損傷。下半身や手足の自由が利かなくなるなど、生活に大きな支障を来すケースが多いという。その治療において、とりわけ重要な役割を果たすのが急性期を終えた後のリハビリ。日常への復帰から就労や就学まで、患者一人ひとりがめざすゴールを実現することが大きな目標となる。こうした脊髄損傷者のリハビリに高い専門性で応え、入院中・退院後のリハビリから社会復帰まで一貫してサポートしているのが「愛仁会リハビリテーション病院」。今回は同院のリハビリの中核を担うリハ技術部副部長を務める理学療法士の山木健司さんに、脊髄損傷におけるリハビリの重要性や実際のサポートの内容を詳しく解説してもらった。(取材日2024年10月2日)

回復期から退院後の自立や生活支援まで、専門職がチーム一丸でフォローアップ

Q脊髄損傷とは、どのような病気でしょうか?

A

脊髄損傷について語る理学療法士の山木健司さん

脊髄損傷とは、脊椎中にある脊髄と呼ばれる神経が圧迫されることで起こる障害です。脊髄は脳からの司令を筋肉に伝える役割があり、損傷した脊髄から下の体の部位にさまざまな障害が生じます。主な症状としては、筋肉や手足の自由がきかなくなる運動麻痺、触感や熱さ冷たさが感じられなくなる感覚障害、体温調節や排泄などの機能に問題が生じる自律神経障害の3つが挙げられます。以前は交通事故や高所からの転落事故によるものが多かったのですが、現在は高齢者の転倒や転落によるものが多いです。若い方にも起こり得ることから、生活上の支障のみならず、将来に対する不安といった精神的なダメージにつながりやすいことも特徴といえるでしょう。

Q損傷レベルや部位でリハビリテーションの内容は変わりますか?

A

損傷部位に合わせたリハビリテーションが行われる

脊髄損傷と一言で言っても、頸髄(首)や胸髄、腰髄など、その損傷部位によって症状や予後は大きく異なります。当然ながら、リハビリの内容もそれに応じて変える必要があります。例えば腰髄の損傷であれば障害の範囲は下半身に限定されるため、自分で起き上がって着替えができるケースも十分に考えられます。その一方で、頸髄の損傷になると首から下の全体に障害が及ぶことになり、日常の動作にかなり大きな問題が生じます。人によっては関節を動かすことや、筋肉をつけることから始めていく必要があるでしょう。いずれにしても脊髄損傷は薬で治る病気ではありません。リハビリ自体を治療と捉え、じっくりと取り組むことが重要です。

Q入院中は、どのようなリハビリテーションを行うのでしょうか?

A

その人の状態に合わせて歩行リハビリテーションを実施

入院中は主治医が中心となり、看護師や薬剤師、管理栄養士、心理士といった専門職がチームで患者さんを支えます。中でもリハビリの中心的役割を担うのは理学療法士と作業療法士。理学療法(PT)では起き上がる、座る、車いすに乗り移るなどの基本的動作の機能回復をめざし、作業療法(OT)では食事をする、服を着替える、排尿するといった細かな日常生活の自立をサポートします。このように生活する上で必要な最低限の身体機能を獲得し、一日も早く家庭や社会への復帰をめざすことが入院中のリハビリの最大の目的となります。また、その方の退院後の生活を常に念頭に置き、目標あるリハビリを行っていくことが何より望まれます。

Q退院後のリハビリテーションや社会復帰への支援が気になります。

A

さまざまな職種のスタッフが連携して多角的な視点で患者を支える

脊髄損傷は10代や20代でも起こります。その後の人生が長いぶん、退院後は日常生活動作だけでなく生活の質までしっかりと見守っていく必要があります。一人で歩けるようになる、車いすで自立するなど、目標とするゴールは各人各様ですが、さらには復学や就労、趣味や余暇活動など、その方がめざす生活を実現させていくことが退院後の重要なテーマといえるでしょう。こうしたサポートを、医療サイドから積極的に行っている病院も現在は増えつつあります。急性期治療やリハビリ期間が終了した後も、さまざまな社会サービスを利用しながら患者さんの自立支援に手を差し伸べる。そんな頼もしい医療があることをぜひ知っておいてください。

Qこちらの病院の強みや特徴について教えてください。

A

「物をすくう」動作のリハビリテーションなど幅広くサポート

脊髄損傷に関して、入院中だけでなく退院後まで一貫したサービスを提供できることが最大の強みです。当院には脊髄損傷専門のチームが存在し、リハビリテーション科医やセラピストが治療方針に積極的に関わりながら質の高いリハビリを実現しています。院内には回復期リハビリテーション病棟と障がい者病棟の2種類の病棟が存在し、入院期間内にゴールに達しない方は障がい者病棟にて長期的なリハビリや在宅療養支援を受けていただくことも可能です。さらには脊髄損傷に特化した外来を設け、退院後の体の症状や困り事、合併症などのご相談にも手厚く対応。通院でのリハビリができるサービスも整え、チームでフォローアップに取り組んでいます。

患者さんへのメッセージ

【山木健司リハ技術部副部長】脊髄損傷は転倒や事故によって起こるケースが圧倒的に多く、搬送されたベッドの上で身動きがとれない、手足が動かないという体験をすれば、誰もが自分の将来に大きな不安を抱くでしょう。しかし、障害があっても仕事や学業、趣味やスポーツを続けながら生き生きと暮らしている方は大勢おられます。障害によって人の価値が下がることは決してありません。そうしたところにも目を向けていただけるよう、体だけでなく心を含めしっかりサポートしていきたいと私たちは考えています。必ず光明を見出せるようチーム一丸で全力を注いでまいりますので、どうか希望を持ってリハビリに臨んでいただければ幸いです。

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