全身をくまなく調べることができる
MRIによる全身がん検診
医療法人順天会 放射線第一病院
(愛媛県 今治市)
最終更新日:2024/12/23
- 自由診療
1回の検査で全身がんのスクリーニングができる、全身がん検診を知っているだろうか。従来の全身がん検診は主にPET-CT検査で行われてきたが、普及が進んでこなかった要因は費用が高額で、時間もかかること、若干の放射線被ばくリスクがあることなどが挙げられる。そのような中で、PET-CT検査よりも短時間で被ばくもなく全身がんのスクリーニングができるのが、MRIを用いた全身がん検診である。加えて、PET-CT検査と同等の精度での検査が期待できるという。そこで、MRIを用いた全身がん検診に力を入れている「放射線第一病院」の放射線科の山本泰宏先生と松田かおり先生、診療放射線技師の越智須美子さんの3人に、その特徴や流れについて、詳しく教えてもらった。(取材日2024年2月1日)
目次
MRIによる全身がん検診なら、比較的短時間で体への負担も少なく、さまざまな臓器のがんの発見が可能
- Q全身がん検診とはどのようなものでしょうか?
- A
【松田先生】1回の検査で全身のがんの有無を調べることができるのが、いわゆる全身がん検診です。全身がん検診は、PET-CT検査で行うものが広く知られています。PET-CT検査では、正常な細胞と比較してがん細胞が多くのブドウ糖を取り込むという性質を利用して、ブドウ糖に似た放射性の薬剤を注射で体内に投与して検査をします。そのため、若干の被ばくがあるほか、一般的に検査には待機時間も含めて2時間以上かかる、費用が高額であるなどのデメリットがあります。それらのデメリットが少なく、全身のがんのスクリーニング検査ができることから最近注目を集めているのが、MRIによる全身がん検診です。
- QMRIを用いた全身がん検診について、詳しく教えてください。
- A
【山本先生】近年、MRI装置の性能が向上し、以前より短時間できれいな全身の画像を撮影できるようになったことから、MRIによる全身がん検診が普及してきています。MRIによる全身がん検診では、DWIBS(背景抑制広範囲拡散強調画像)法を用いて撮影し、全身のさまざまな臓器のがん病変の有無を検査します。PET-CT検査と同様に、すべてのがんを検出できるわけではありませんが、同等の検査結果が期待されます。当院では、CT撮影や腫瘍マーカーの検査を併用し、肺などMRIだけでは見つけることが難しい臓器のがんも発見できるよう努めています。薬剤の注射や被ばくもなく、一連の検査が約1時間で行えるのもメリットです。
- Q検診の流れや注意点を教えてください。
- A
【越智さん】検査では、仰向けの状態で耳から骨盤の辺りまでを撮影していきます。注意点としては、検査前には食事を取らないこと。金属類はすべて外す必要があります。
【山本先生】CT撮影と腫瘍マーカー検査の採血も行いますが、1時間程度ですべての検査が終了します。当院では、当日中にMRI検査の結果説明を行っており、読影の間に少しお待ちいただきますが、それでも半日中には終わります。腫瘍マーカー検査の結果は、1〜2週間程度で郵送されます。デメリットとしては、検査中の大きな機械音、体に載せる撮影用器具が少し重いことです。40分程度動けない状態になりますので、ご負担に思う方もいらっしゃるかもしれません。
- Qがんの疑いが見つかった場合は、どうすれば良いのでしょうか?
- A
【山本先生】PET-CT検査や一般的な検診、人間ドックなどと同じように、MRIによる全身がん検診もスクリーニング検査であり、あくまでがんの疑いがある臓器を見つけるものです。そのため、どこかにがんの疑いがあれば、臓器によってCTや内視鏡、生検などの精密検査を行って、病変ががんなのか、がんであれば大きさなどを調べる確定診断を行います。当院では、引き続き内科の外来や検査、泌尿器科での腎臓や前立腺の生検などの二次検査を受けてもらうことが可能です。当院で対応できない検査や、精密検査の結果で手術などの治療が必要と考えられる場合には、連携している病院に紹介します。
- Qこちらならではの工夫していることはありますか?
- A
【山本先生】MRI検査では、画質が非常に重要です。当院では、2023年にMRI装置をAIが搭載された先進のものにバージョンアップしました。これにより、従来よりも画質をさらに向上させることが可能になりました。また、MRIでは撮像時間が画質に影響するため、当院では撮像時間を通常よりもやや長めの約40分に設定することで、画質の向上に注力しています。さらに、私はこの検査法の開発に携わった医師から直接指導を受けたこともあり、精度の高い読影に努めています。
【越智さん】当院では、受診者さまが横になる撮影台に厚めの低反発マットレスを用意して、できるだけ快適に検査を受けてもらえるよう努めています。
山本 泰宏 先生
1998年岡山大学卒業。尾道市立市民病院勤務などを経て、2010年より同院。日本医学放射線学会放射線科専門医。背景抑制広範囲拡散強調画像(DWIBS)法に精通しており、専門書なども執筆しているほか、マンモグラフィの読影も得意としている。また、内科の一般診療も担当しており、画像診断の視点を生かした診療を実践している。
松田 かおり 先生
1995年岡山大学卒業。岡山県で放射線診療全般について研鑽を積んだ後、放射線科の医師として山口県の呼吸器専門病院に勤務。2014年より同院。日本医学放射線学会放射線科専門医。より良い医療を提供するために、画像診断のレベルを向上させることを心がけている。
自由診療費用の目安
自由診療とはMRIを用いた全身がん検診(CT撮影や腫瘍マーカー検査も併用)/5万5000円