大腸癌、胃癌などの腹腔鏡下手術
体への負担やそのメリットとは
医療法人社団 藤崎病院
(東京都 江東区)
最終更新日:2023/02/01
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おなかを大きく切り開く開腹手術とは違い、小さな穴を開け腹腔鏡カメラと専用器具を挿入する「腹腔鏡下手術」。体への負担が少なく、術後の回復も早いことから適応が進んでいるが、手術には特殊で高度な技術が求められる。この術式に実績のある「藤崎病院」の藤崎滋院長に腹腔鏡下手術について聞く。(取材日2014年3月6日/情報更新日2021年8月12日)
目次
低侵襲も術者の技量が必要。より体への負担が少ない単孔式も
- Q腹腔鏡下手術はどのように行われるのですか?
- A
おなかを大きく切開せず、3〜5ヵ所に小さな穴を開けトロッカーと呼ばれる細い筒を挿し込み、まず腹腔鏡カメラを入れます。続いて電子メス、ピンセットなどの鉗子(かんし)と呼ばれる器具を挿入し、テレビモニターに映し出されるカラー映像を見て手術を行います。このとき仰向けに寝ている患者さんのおなかはぺったんこなので、炭酸ガスを入れておなかの中に空間を作ります。炭酸ガスは人体に害を及ぼすことはほとんどありません。
- Qどんなメリットがありますか?
- A
最大のメリットは従来の開腹手術に比べ術後の痛みが少なく、患者さんの体に優しいということです。胃腸も早く動き出すので食事の開始時期が早く、手術の翌日にはトイレに歩いて行くこともできます。術後の回復が早いので社会復帰が早いこと、傷口が小さく傷痕が目立たないことなども腹腔鏡下手術のメリットです。一方、ごく小さな切開部からカメラや鉗子を入れて細かい操作をするので、執刀医は特殊技術の習熟が欠かせません。そのため病院によって手術適応や手術時間が異なる現状があります。
- Q主にどんな手術が対象なのでしょう?
- A
主に胆石症や胆のうポリープなどの胆のう摘出術、胃がんや大腸がんに伴う胃・大腸の切除術をはじめ、鼠径ヘルニア(脱腸)修復術や一般的に盲腸と呼ばれる虫垂炎でも腹腔鏡下手術が行われます。とりわけ胆のう摘出術や虫垂切除術においては、「単孔式」といって、1ヵ所の小切開創から手術器具を挿入する、より低侵襲な術式も行われています。
- Q「単孔式腹腔鏡下手術」について詳しく教えてください。
- A
へそのところを1ヵ所だけ、縦に2.5センチ程度切開する腹腔鏡下手術です。傷口がちょうどへその穴に重なるためほとんど傷痕がわからないという整容性に優れているのが特長です。ただし、1ヵ所の穴から3本の器具を入れて操作するため難度が高い手術であり、限られた施設で行われているのが現状です。また、虫垂炎や胆のう炎において炎症が強い場合は通常の腹腔鏡下手術のほうが望ましい場合もありますし、肝硬変や血液凝固異常などの基礎疾患があり止血困難が予想される場合は、単孔式の適応から外しています。
藤崎 滋 院長
1987年防衛医科大学校卒業。米国ピッツバーグ大学、国立がんセンター、日本大学医学部附属板橋病院での勤務を経て、2003年から現職。日本大学医学部消化器外科客員教授。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医。院長職の傍ら、外科をけん引する。