心身の不調や不安なときは頼ってほしい
育児に自信を「産後ケア」
医療法人財団 仁寿会 荘病院
(東京都 板橋区)
最終更新日:2024/11/25
- 保険診療
妊娠から出産、産後にかけての女性には体や心にさまざまな変化が起こる。その症状は人それぞれで、楽しみにしていた赤ちゃんとの生活に漠然とした不安を感じている人、慣れない育児で疲れてしまう人も少なくない。そんな女性の繊細な変化に妊娠初期から寄り添い支える「荘病院」では、産後ケアをスタート。退院後、家に帰ってからの育児に不安を抱えている人や、夜中の授乳などでゆっくり休めず体調がすぐれない人などに対して、最長6泊7日まで利用できる宿泊型のサポートだ。心も体もリフレッシュし、育児への自信をつけてほしいという思いのもとスタートしたこの取り組みについて、助産師の平野美香主任と関口千代路さん、鈴木孝子主任に話を聞いた。(取材日2024年10月30日)
目次
助産師が利用者の希望に合ったサポートを展開。家に帰っても自信を持って育児ができるように送り出す
- Q妊娠中の女性の体や心にはどのような変化がありますか?
- A
【関口さん】個人差はありますが、妊娠初期は、つわりのほかにも、気分が乗らない、落ち込みがち、漠然とした不安などいろいろな不快な症状が出てきます。安定期に入り体が慣れてくると、今度は体重が思った以上に増えたり、おなかが張ったり、後期には、安産で赤ちゃんを迎えられるのか心配になったりと、時期によって体調や気持ちに変化が起こります。当院では、そんな妊婦さんの不安に寄り添うため、外来の助産師が1対1でお話を聞く機会を複数回設け、バースプランやお産に対する心配事について継続的にお話をさせていただいています。また、不安の強い方や個別に配慮が必要な方には、初期からこまめにお声がけをしています。
- Q産後も気持ちが不安定になることがあるのでしょうか。
- A
【鈴木さん】ホルモンの変化などでナーバスになってしまうのは産後の特徴といえます。傷の痛みや急激なおっぱいの張りのつらさに加え、些細な一言を深く受け止め涙もろくなるのもその一つです。これらは誰にでも起こり得ることですので、しっかりお話を聞いて、今のままで十分だよ、大丈夫だよと寄り添うのも助産師の役割です。出産や育児は自分が思い描いていたイメージとはかけ離れた出来事の連続です。上手に気持ちを切り替え乗り越えられる人もいれば、なかなか適応できず、不安を抱えたまま育児をしている人も少なくないと思います。当院では、できる限り笑顔で退院して赤ちゃんとの生活を迎えていただけるよう、全力でサポートしています。
- Qなぜそのような不安な気持ちになってしまうのでしょう。
- A
【平野さん】出産をするとこれまでの生活環境は大きく変わり、女性としての自分、妻としての自分に加え、お母さんとしての自分が現れます。そこにホルモンバランスの乱れも伴い、どれも頑張らなくちゃと思う反面、自分が自分でいられる時間がなくなってしまうことに戸惑いを感じ、赤ちゃんをかわいいと思う余裕のない自分がいて、でもそれは口に出してはいけない……。そんな葛藤の中でうまくバランスを取れないことが理由の一つだと思います。心や体の変化をうまく受け入れられなくなると、育児に支障が出てしまうことも。そんなお母さんたちを受け入れ認め、自信をつけてあげたい、そんな思いで当院では産後ケアをスタートしました。
- Q荘病院の産後ケアでは1日をどのように過ごすのですか?
- A
【平野さん】まずは面談をして、どのように利用したいのかをお聞きします。1日ゆっくり休みたい、赤ちゃんとは午前中は一緒に過ごして夜は別室に、といったご希望のほか、沐浴の練習をしたい、母乳をちゃんと飲ませられているかどうか、母乳がどのくらい出ているのかを見てほしいなど、利用される理由はそれぞれです。また、お母さんの育児の不安や、時には育休中のお父さんがどのように育児に関わったら良いかなどをお聞きすることも。どのお母さんもリフレッシュでき、育児に自信が持てるようにオーダーメイドのケアを心がけています。
- Q産後ケアの中で、気をつけていることはありますか?
- A
【平野さん】いろいろなお話を傾聴し、寄り添い、そして手を添えることです。つらいときはそっと手に触れられるだけでホッとすることもあると思います。当院のスタッフはそういったことができる人がそろっています。
【関口さん】産後ケアを利用中にお母さんたちのできることが増えていけばいいなと思っています。授乳がうまくいった、上手にお世話ができたなど、小さな自信を一つでも増やしてあげられるように取り組んでいます。産後ケアの初日や2日目ぐらいまでは預ける時間が長かったお母さんが、「昼間は一緒に過ごしてみます」と言ってくれると、うれしく思います。おうちに帰ってからの育児につながるよう後押しをしていきたいです。