周囲の筋肉を傷つけない低侵襲治療を追求した
脊椎内視鏡下手術
医療法人財団明理会 東戸塚記念病院
(神奈川県 横浜市戸塚区)
最終更新日:2024/09/25
- 保険診療
- 椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
消化器などでは患者の体への負担が少ない低侵襲手術が選択肢となっているが、整形外科でも内視鏡下手術は徐々に広がっている。特に腰や頸椎の椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などの脊椎疾患では、体の中心部にある脊椎を低侵襲で手術する方法として非常に有用だ。脊椎疾患の専門家で、内視鏡下手術も数多く手がける「東戸塚記念病院」の山崎謙院長は「当院で行うFESS(完全内視鏡下脊椎手術)は皮膚に開けた直径1cm程度の穴から内視鏡と手術器具を挿入する手法。筋肉を傷つけにくく、ピンポイントで治療をして早い回復を望めるのが特徴で、体への負担が不安な高齢の方も治療が可能です」と話す。そうした脊椎内視鏡下手術の特徴、低侵襲な理由、手術後の注意点などを山崎院長に詳しく聞いた。(取材日2024年8月27日)
目次
内視鏡を使って必要な箇所をピンポイントで治療し、手術後の痛みも少なく早期回復が望める
- Qどのような脊椎の病気を内視鏡で手術されるのですか?
- A
私が専門とする脊椎疾患の中で、内視鏡下手術による治療が多いのは腰や頸椎の椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などです。当院の場合、患者さんはクリニックなどを受診後にご紹介でおみえになるケースがほとんどで、手術を希望して来院される方も少なくありません。腰椎間板ヘルニアの主な症状は腰や足の痛みで、頸椎の場合は首・腕の痛みや手のしびれなどが見られます。進行すると、ボタンの掛け外しや文字を書くといった手先の細かな作業が難しくなる巧緻運動障害が起こる場合もあります。腰部脊柱管狭窄症は腰痛や足のしびれのほか、歩くと足に痛みやしびれが出て歩けなくなり、歩く・休むを繰り返す間欠性跛行という症状も特徴的です。
- Q脊椎内視鏡下手術の特徴やメリットを教えてください。
- A
脊椎は体の中心部にあるため、以前は皮膚を大きく切開し体内の筋肉も傷つける前提で、奥の患部を治療する必要がありました。しかし内視鏡下手術では皮膚に直径1cmほどの穴を開け、筋肉や骨をなるべく傷つけずに治療が可能です。このため手術後の痛みをほとんど感じない、手術翌日から歩けるなどのメリットが望めます。手術後に仕事を再開できる時期も以前の術式に比べて早くなっています。また、高齢で脊椎疾患以外に全身の病気を併発されている方も、内視鏡下手術なら体への負担が軽減でき、安全な手術がめざせます。リハビリテーションは術後の回復というより、病気で体があまり動かせず衰えていた筋力の回復目的で行うことも多いですね。
- Q内視鏡でそうしたメリットが得られるのはなぜですか?
- A
当院で行う脊椎手術のほとんどがFESS(完全内視鏡下脊椎手術)という手法で、直径7mm程度の内視鏡を使用します。直径16mm程度だった以前の内視鏡に比べると、皮膚に開ける穴の面積は約4分の1に減り、筋肉を傷つけないよう体の側面から内視鏡や手術器具を挿入し、脊椎まで到達させることも可能になりました。そして内視鏡が捉えた患部の高精細な画像を大画面で見ながら、痛み・しびれの原因となる骨や靱帯をピンポイントで切除できるため、非常に低侵襲な手術がめざせるのです。さらにFESSでは手術部分を生理食塩水で洗い流しながら行うので、手術の操作がクリアに見えることもピンポイントで治療しやすい理由の一つです。
- Q患者が手術後に注意する点はあるでしょうか?
- A
手術を終えたからと、体を急に動かしたり無理な姿勢をしたりと頑張りすぎて体を痛めることがよくあります。それまで症状の影響で体がうまく動かせなくて筋力が衰えているのですから、しばらくは筋力回復のリハビリテーションをしながら、徐々に体を慣らしていくことが大切です。また、脊椎内視鏡下手術は症状の原因を取り除くのが目的で、ヘルニアなどになりやすい体の構造は残ることになります。病気が再発しないよう、日常生活で腰・背中・首にあまり負担をかけない姿勢を意識し、筋力を維持する運動やストレッチを心がけていただければと思います。
- Q痛みやしびれの症状など受診するタイミングを教えてください。
- A
当院は地域のクリニックなどから患者さんをご紹介いただくため、足・腰・背中・首などの痛みやしびれなどが続く場合は、まずは近くの整形外科への受診をお勧めします。年のせいなどと諦めず、治療可能なことも多いので医師の診断を受けてみましょう。一般的に腰椎間板ヘルニア、頸椎のヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの治療は、薬やリハビリテーションによる保存療法から始まり、改善が見られないときに手術が選択肢となります。当院では背骨の固定を必要とする治療以外はFESSによる治療をめざしていますが、最近は「内視鏡下手術を受けたいから」と希望される方も多く、低侵襲の手術に対する関心が高まっていると感じます。