最小侵襲手術で改善をめざす
腰部脊柱管狭窄症
医療法人財団明理会 東戸塚記念病院
(神奈川県 横浜市戸塚区)
最終更新日:2023/09/13
- 保険診療
- 腰部脊柱管狭窄症
背骨で神経が通っている脊柱管が加齢などの理由から狭くなってしまい、神経が圧迫され腰や足に痛みやしびれを来たすのが「腰部脊柱管狭窄症」。高齢者が腰部脊柱管狭窄症になると、痛みなどから動くのが嫌になり、それによってQOLの低下につながることもあるから注意が必要だ。そして、「腰部脊柱管狭窄症の手術後は、どんどん動けるようになることが望めます」と話すのが、「東戸塚記念病院」の山崎謙院長。同院では、腰部脊柱管狭窄症に対する内視鏡を用いた最小侵襲手術に取り組んでおり、傷が小さく、痛みや入院日数も少ないなど、高齢者でも受けることができるような治療に努めているという。そこで、同院の腰部脊柱管狭窄症の治療について、山崎院長に聞いた。(取材日2023年8月8日)
目次
我慢のしすぎは禁物。時期を逃さず適切な治療を受けることが大切
- Q腰部脊柱管狭窄症とは、どのような病気なのでしょうか?
- A
背骨には、神経が通っている脊柱管と呼ばれるトンネルのような空間があります。その脊柱管が加齢などに伴い、椎弓という後ろの壁の間にある黄色靭帯の肥厚や、骨の変形などによって狭窄を起こします。それによって脊柱管を通っている神経を圧迫し、腰痛や足のしびれなどの症状が出るのが腰部脊柱管狭窄症です。若い人でもなることはありますが、50歳以上くらいから高齢になればなるほど増えてきます。また、高齢者であまり動かない人は、腰部脊柱管狭窄症があってもあまり症状が出ずに、よく動けるような人に症状が出てきます。両足に症状が出ることが多いほか、歩行に障害を来たす「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」が、特徴的な症状です。
- Q間欠性跛行について、もう少し詳しく教えてください。
- A
少し歩いただけで腰の痛みや足のしびれなどが出て長い距離を歩けなくなるけれど、座るなどして数分休むと動けるようになる症状を「間欠性跛行」と言います。腰部脊柱管狭窄症では、安静にしていると神経への血流は保たれていますが、歩行や運動をすると神経への血流が不十分になり、痛みやしびれなどが出て、歩けなくなります。そして、しばらく休憩すると神経への血流が回復するので、また動けるようになるのです。さらに症状が進行すると、台所に立っているだけでも症状が出て、立っていられなくなることもあります。また、間欠性跛行は足の血管の動脈硬化によって血液の流れが悪くなる、閉塞性動脈硬化症という病気でもなることがあります。
- Q腰部脊柱管狭窄症の治療方法について教えてください。
- A
最初は、痛み止めの服用や神経ブロック注射、リハビリテーションなどの保存的治療から行います。しかし、腰部脊柱管狭窄症は、物理的に神経が圧迫されていることから、保存的治療だけでは改善が難しいのが現実です。また、症状の強さも脊柱管の狭窄の度合いによって違ってきます。家の中で生活ができるので良いという場合や、歩いていると痛くはなるけど日常生活に影響はありませんというのであれば、薬などで様子を見ることも考えられます。一方で、1メートルも歩けなかったり、立っているだけでも痛かったりするとか、もっと自由に買い物や旅行に行きたい、スポーツもしたいという希望がある場合などは、手術を受けることをお勧めします。
- Q低侵襲の内視鏡手術を積極的に取り入れているそうですね。
- A
当院では、内視鏡による低侵襲手術に力を入れており、特により細い内視鏡を用いるFESS(完全内視鏡下脊椎手術)と呼ばれる手術を得意としています。FESSで使用する内視鏡は、直径が7mm程度と非常に細く、1cm程度の傷で痛みや入院期間も少なく、社会復帰がめざせます。低侵襲のため高齢者でも手術を受けることが可能です。また、脊柱管の狭窄は複数箇所で起こっていることが多く、当院では先に神経ブロック注射を行い、症状の原因となっている場所を特定してから手術を行っています。再度の手術が必要になることもありますが、FESSは低侵襲なこともあり、進んで希望する患者さんがほとんどです。
- Q腰部脊柱管狭窄症で注意すべきことはありますか?
- A
痛みがあると安静をとることが多いと思いますし、腰部脊柱管狭窄症は、それで一時的に痛みが落ち着くことがほとんどでしょう。ですが、特に高齢者の場合は安静にしたことで体がどんどん衰えてしまい、そうなってから手術をしても、リハビリテーションにも苦労したり、筋肉が衰えたことによる腰痛が出たりすることがあります。ですから、高齢者の腰部脊柱管狭窄症の場合は、あまり安静をとるのではなく、できるだけ動いて筋力を保つこと。そうすれば、手術後もスムーズにリハビリテーションが行え、早期の社会復帰がめざせます。きっと手術後は、どんどん動けるようになることが望めますよ。
山崎 謙 院長
1988年宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒業後、昭和大学藤が丘病院整形外科に入局。医局派遣病院勤務を経て1996年より東戸塚記念病院。整形外科部長、副院長を経て2014年より現職。日本整形外科学会整形外科専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医。専門は人工関節治療、脊椎疾患。