膝の痛みの原因を知ることが大切
変形性膝関節症の治療
医療法人財団明理会 東戸塚記念病院
(神奈川県 横浜市戸塚区)
最終更新日:2023/09/13
- 保険診療
- 変形性膝関節症
加齢とともに膝の軟骨がすり減ってしまい、膝に痛みが出るのが変形性膝関節症。痛みがひどくなると歩くのが嫌になるなど日常生活に悪影響を与え、最終的にはロコモティブシンドロームや寝たきりのような状態にもなってしまうことから、適切に治療をすることが大切だ。そして、「すぐに手術をするのではなく、いろいろな治療方法がありますので、まずは医師に相談することをお勧めします」と話すのが、東戸塚記念病院の山崎謙院長。変形性膝関節症に対し同院では、リハビリテーションや薬による治療に加え、低侵襲手術にも対応することで、身体的な負担や痛みも少なく、患者が早期に社会復帰ができるよう努めているという。そこで、同院が取り組む変形性膝関節症の治療について、山崎院長に詳しく教えてもらった。(取材日2023年8月8日)
目次
リハビリテーションや薬物療法、手術によって膝の痛みの改善をめざす
- Q変形性膝関節症とは、どのような疾患ですか?
- A
膝関節の軟骨が、加齢とともに少しずつすり減ります。そのすり減ったゴミのようなものが反応して、膝の中に炎症性のタンパク質が発生します。そのタンパク質の量が、処理できる範囲なら良いのですが、過剰になると膝が炎症を起こし痛みが出るようになります。さらに、そのタンパク質が軟骨を壊していき、最終的に軟骨がなくなると今度は骨も変形して、変形性膝関節症になるのです。膝に痛みがあると歩くのを控えるようになり、足の筋肉が落ちることで膝の関節が不安定になり、また炎症が起きるという悪循環となってしまいます。最終的にはロコモティブシンドロームや寝たきりのようになってしまうこともありますから、注意が必要です。
- Qどのような人に多いのでしょうか? 20代でもなりますか?
- A
年齢では、70歳以降くらいから増え始めます。O脚の人や体重の多い人、膝への負担が大きい仕事やスポーツをしている人に多く、男性よりも女性に多い傾向があります。ほかに、半月板や靭帯などを痛めた人が徐々になるケースや、普通は三日月状の半月板が、生まれつきで半円のような形になっている場合も、中年以降に半月板を損傷し、炎症を起こし、それがきっかけになることもあります。若い人でも急激な体重増加や、普段していない運動をしたとか、逆に過度な運動をしたことなどによって膝が炎症を起こし、痛みが出ることはもちろんありますが、変形性膝関節症は基本的に加齢に伴う病気であり、20代などの人がなることはほとんどありません。
- Q痛みに特徴はありますか?
- A
日常生活で膝に負荷がかかったときに痛みを感じます。中でも特徴的なのは、階段を下るときに痛みが出ることです。変形性膝関節症になると軟骨がすり減っていますので、膝の骨に直接的に体重の衝撃が加わってしまうからです。逆に、階段を上がるときにはあまり痛みはありません。さらに症状が進行すると、夜に寝るときに痛みを感じることもあります。変形性膝関節症になると、立っている時でも絶えず膝が少し曲がった状態で固まってしまい、仰向けに寝たときに膝が伸びることで痛みを感じるのです。加えて、昼間はいろいろなことをしていて気にならないけど、夜になって意識をするようになって、余計に痛みを感じることもあります。
- Qどのように治療をするのですか?
- A
まず、保存的治療を行います。その一つはリハビリテーションで、ストレッチや筋力トレーニングで大腿四頭筋を鍛えることで、膝を安定化させることをめざします。加えて、薬物療法です。痛み止めの薬によって一時的にでも痛みの軽減を図って、足を動かし、日常生活で足を使うことで筋肉を鍛え、膝の安定化を図ります。また、一般的にはヒアルロン酸注射があります。膝にヒアルロン酸を注射することで、痛みを軽減し動かせる状態をめざすものです。しかし、ヒアルロン酸の注射は1クールで5回くらい行って様子を見ますが、あまり頻繁に注射をすると感染のリスクがあります。そのため、当院ではあまり積極的には行っていません。
- Q手術についても教えてください。
- A
当院では、膝の関節を人工関節に入れ替える手術を行っています。人工関節手術には、膝関節のすべてを交換する全人工膝関節置換術(TKA)と、悪くなっている一部分だけを交換する膝単顆置換術(UKA)の2つがあります。そのうち当院ではUKAを積極的に行っています。TKAで行うと手術後にかなり強い痛みがあり、リハビリテーションも大変になりますが、UKAなら傷も小さく、手術後の痛みもTKAより強くないことからリハビリテーションもスムーズに開始することが期待でき、入院期間も2週間程度と短くすることがめざせるからです。一方、関節の変形が強い場合や、膝の靱帯が残っていないときなどは、UKAを行うことはできません。
山崎 謙 院長
1988年宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒業後、昭和大学藤が丘病院整形外科に入局。医局派遣病院勤務を経て1996年より東戸塚記念病院。整形外科部長、副院長を経て2014年より現職。日本整形外科学会整形外科専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医。専門は人工関節治療、脊椎疾患。