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仕事や私生活に合わせて柔軟に対応も
放射線治療の特徴とは

地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立荏原病院

(東京都 大田区)

最終更新日:2023/05/12

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手術、抗がん剤治療薬を使用した薬物療法と並ぶがんの3大療法の1つとして、現代のがん治療をけん引する「放射線治療」。しかし、「悪い部分を切る」「薬で治す」といったそれぞれの目的の治療法に比べて、放射線治療の具体的なメカニズムはわかりにくく、実態をつかみにくいのではないだろうか。「被ばく」という言葉が独り歩きし、治療に漠然とした不安を感じる人も多いだろう。そこで、放射線治療の目的や治療内容、メリットと注意点などについて、先進の放射線治療機器を駆使して治療にあたる「東京都立荏原病院」放射線治療部門の岡田洋一部長、和田紘幸医長、榎本健児技師長の3人に話を聞いた。(取材日2023年1月27日)

体を切らない低侵襲な治療を、先進の機器を駆使してより高精度に

Qそもそも放射線治療とはどのようなものなのでしょう。

A

部長の岡田洋一先生

【岡田部長】放射線は、ケガや病気の検査、およびがんの治療に使われます。がんによる血管、神経などの圧迫や、骨転移、脳転移による痛みなど、つらい症状をとりたい場合にも使用します。対象は幅広く、前立腺がん、乳がん、肺がん、子宮頸がん、頭頸部がん、食道がん、肝胆膵がん、直腸がんなど、胃や大腸以外のほぼすべてのがんが対象です。2022年10月から、当院ではより高線量の放射線をピンポイントで照射できる高精度放射線治療機器を導入し、これまで以上に高度な放射線治療が可能になりました。同時に、常勤医として和田先生が加わったことで治療体制に厚みが増しています。

Q一例として、乳がんの治療方法について教えてください。

A

医長の和田紘幸先生

【和田医長】乳がんの放射線治療の目的は、基本的に再発の予防です。病巣のみを切除する手術や、乳房をすべて切除する手術を行った後に放射線治療を行うことで、温存した乳房や胸周辺のリンパ節にある目に見えないがん細胞の根絶を図っていきます。治療は平日毎日1回、5~6週ほどかけて行われますが、1回の治療にかかる時間は10分程度で、外来で治療が可能です。放射線照射で痛みを感じることはほとんどありません。患者さんはじっと横になっているだけで構いません。乳がんなら乳腺外科、前立腺がんなら泌尿器科といったように、各診療科の担当医としっかり情報を共有し、適切な照射を行います。

Qデメリットや体への負担が気になります。

A

技師長の榎本健児さん

【榎本技師長】患者さんとしては、やはり被ばくが一番不安なのではないでしょうか。われわれも、検査の際に「被ばくはどれくらいか」「被ばくしても大丈夫か」といった質問をよく受けます。被ばくはゼロではありませんが、正常な組織を避けてピンポイントで当てていることをお話ししています。
【和田医長】おっしゃるとおりですね。しかも、新しい機器は治療したい部位だけを狙い撃ちできる精度を持ち、治療時間も従来より短くて済むんですよ。放射線治療単独で行うだけでなく、状況に応じて薬物療法と併用することもあります。手術が難しいと判断された場合でも、根治をめざせることが強みですね。

Q放射線治療の費用や自己負担額について教えていただけますか。

A

広々とした放射線治療の待合室スペース

【岡田部長】乳がんを例にとると、10割負担でだいたい60万円です。ここから、健康保険料の負担割合に応じて自己負担額が決まります。1ヵ月の医療費の自己負担額が高額になった場合、高額療養費制度で還付が受けられますから、標準的な収入の方なら1ヵ月数万円ほどになるでしょう。放射線治療は入院の必要がなく、仕事や家事を継続したまま外来で通院しながら治療が可能です。

Q荏原病院ならではの放射線治療の強みはありますか。

A

2022年秋に導入した先進の放射線治療装置

【岡田部長】放射線治療は侵襲性の低い治療法ですが、続けていくと副作用も出てきます。当院では、通院している方の治療計画を綿密に立て、情報を継続的に管理していますので、安心して治療を受けていただけます。他院で治療を受けた経験がある方は、念のため当院にもお伝えください。
【和田医長】先進のモデルの機器が入り、これまでの放射線治療よりさらに治療の精度が高まりました。仕事や家事、趣味など、できるだけこれまでどおりの生活を維持しつつ、しっかりと病気を治療して社会生活に復帰できるようサポートすることが可能です。待ち時間を少しでも減らし、ストレスのない治療を実現できるよう努めてまいります。

患者さんへのメッセージ

岡田 洋一 部長

1980年東京医科歯科大学卒業。放射線診断学を専門とし、公益財団法人東京都保健医療公社豊島病院(現・東京都立豊島病院)で長く勤務。2020年から東京都立荏原病院に着任した。日本医学放射線学会放射線科専門医。エックス線透視やCTなどのガイド下で体内を確認しながら、カテーテルや専用の針を駆使して検査・治療を行うIVR(Interventional Radiology)の経験も豊富。

和田 紘幸 医長

2013年東京慈恵会医科大学卒業。同大学附属病院、同大附属柏病院、東京歯科大学市川総合病院を経て、2022年9月より東京都立荏原病院にて勤務。新型の定位放射線治療機器による放射線治療業務に従事している。近隣の医療機関との連携体制の構築にも尽力。

【和田医長】常勤医師の加入と先進機器の導入で、当院の放射線治療の体制と精度を整えています。放射線治療には「がんを治療する」こと、「症状をとる」ことの2つの目的の役割があり、いずれも体をほとんど傷つけることなく力を発揮します。高齢の方や合併症をお持ちの方、部位などによって手術が困難だと言われた方でも治療をすることができますので、諦めずにより良い予後をめざしましょう。専門の医師と技師、看護師の充実した体制で、他科と連携しながら治療を進めてまいります。

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