来院から治療まで最短をめざす
チームで取り組む脳卒中治療
医療法人社団 明芳会 横浜新都市脳神経外科病院
(神奈川県 横浜市青葉区)
最終更新日:2024/12/16
- 保険診療
発症から治療までの時間が予後に大きく関わる脳卒中。脳梗塞では血流の再開が30分遅れると歩いて退院できる人が1割減るというデータもあり、いかに救急搬送されてから治療開始までの時間を短くするかが重要になる。脳神経外科を専門とする「横浜新都市脳神経外科病院」では、血栓溶解療法や血栓回収療法といった緊急の血管再開通治療を迅速に確実に行うため、治療に関わる医師や看護師、診療放射線技師、検査技師、薬剤師などに加え、家族の対応をする事務員までがチームとなって取り組んでいる。患者の到着から治療開始まで20分を目標に日々脳卒中の救急医療に対応する同院の体制について、脳神経内科・血管内治療科部長である山崎英一先生に聞いた。(取材日2024年9月19日)
目次
脳卒中は時間との勝負。受け入れから検査、治療開始まで、チームワークで可能な限り時間短縮をめざす
- Q脳卒中の患者さんの受け入れの流れを教えてください。
- A
当院では救急隊からの連絡が医師のホットラインに直接入るようになっており、受け入れ要請があったら、医師、看護師、薬剤師、検査技師、診療放射線技師が救急車が到着する前に救急室に集合し救急車の到着を待ちます。救急車の到着後は時間との闘いであるため、できる検査を一気に行います。事前に救急隊から得ていた脳卒中を疑う症状と実際の症状をもとに診察、また看護師が採血と点滴をするほか、ペースメーカーが植え込まれているなどMRI検査ができない場合もあるため、エックス線でMRI検査が可能かを調べたり、体重も測定します。さらに病歴を患者さんの家族に確認するなど、これらの作業を約10分で救急の初療室で進めていきます。
- Qどのような検査や治療を行いますか。
- A
まずMRI画像を撮りますが、当院は通常20分かかるところ4分程度で撮影しています。これにより急性期の再開通治療をするかどうかの判断が約10分〜15分と短縮されました。再開通療法には点滴によるt-PA療法(血栓溶解療法)とカテーテルによる血栓回収療法がありますが、t-PA療法は発症から4時間半以内に行う必要があります。血栓回収療法は、目標として患者さんの到着から治療開始まで60分といわれていますが、当院では中央値約25分で治療を始めており、早ければ約15〜17分で開始できます。発症から時間がたってしまい急性期の治療の対象にならない方は、保存的な治療でリハビリテーションとともに悪化防止を図ります。
- Qチームで取り組むことのメリットや特徴を教えてください。
- A
脳卒中の治療は医師だけでできるものではなく、看護師、薬剤師、検査技師、診療放射線技師、事務員といった多職種でのチーム医療が不可欠です。衣類の着脱にも複数の手が必要になり、体重が重い患者さんの場合移動の際も1人では対応できません。検査画像を見てカテーテル治療の適応だと判断をした後の道具の準備や、検査室から手術室への移動もチームで協力して行うことで、このような時間の短縮が達成できています。チームビルディングがしっかりしていることは当院の大きな特徴であり、長所だと自負しています。
- Qチーム力アップのためどのような教育が行われていますか。
- A
月に1回、救急体制強化を専門に行うチーム「acute stroke team」の講習を実施し、カテーテル治療の器具を瞬時に出せるようにしたり、移動の流れを体になじませるなど、カテーテル治療の介助をするスタッフの教育に力を入れています。講習を通して脳卒中の急性期治療に興味を持ちもっと早く動きたいと思うスタッフも多く、チーム力の向上にも役立っています。実際に現場に就く人はチームの代表者やSCUの看護師長が相談し担当を決めていきます。さらに、地域医療連携室が各消防署を訪問し治療実績を伝え迅速な搬送をお願いし、また救急隊向けの講習会も開催。これらすべてが治療開始までの時間短縮につながっています。
- Qそのほかに、こちらの病院の強みはありますか。
- A
病院到着からMRI検査を行い治療を開始するまでの時間が20分台から10分台に向かっている今、日本に比べMRIの普及率が低い諸外国では、直接カテーテル室に移動し、血管造影検査をして血管が詰まっているかどうかを診ることで時間短縮をしています。それでも10分〜20分ほどの時間がかかる上、この場合、脳梗塞があるかどうかわからない状態で治療を進めることになります。脳血管の状態を詳細に確認できるMRIは、安全性に配慮して治療を進めていくためには非常に重要です。当院では、MRI画像を撮って血管を精密に評価した上で、10分台という世界的に見ても早急な対応で治療を開始できています。
山崎 英一 脳神経内科部長
2010年京都府立医科大学医学科卒業。京都第一赤十字病院で初期臨床研修を終え脳神経・脳卒中科、2018年横浜新都市脳神経外科病院入職。日本脳神経血管内治療学会脳血管内治療専門医。日本神経学会神経内科専門医。脳卒中の血管内治療を専門としている。