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独立行政法人 労働者健康安全機構 中国労災病院

(広島県 呉市)

栗栖 薫 院長

最終更新日:2023/03/30

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地域の急性期医療を担い住民の健康を支える

1955年の開院以来、労働災害や病気から住民を守るため尽力してきた「中国労災病院」。高度専門医療、周産期医療、救急医療に加え、治療と仕事の両立支援という4つの柱を持ち、約15万人が暮らす呉市東部を中心にした独自の医療圏の急性期医療を支えている。豪雨災害で培ったレジリエンスを基に、新型コロナウイルス感染症に対しても地域の中核として機能しているほか、コロナ禍での出産や子どもの虐待診療などにも積極的に参加。一方、手術支援ロボットを用いた手術、紹介当日でも対応可能な下部消化管内視鏡検査など高度先進的な取り組みも進めている。栗栖薫院長は「医療を支えているのは人。基幹病院として人材育成も強化することで地域の医療を支えていきたい」と決意を語る。2022年には総合実習・研修センターを設置し、医師だけではなくコメディカルスタッフ、学生なども対象とした生涯教育の環境を整備。同センターをワンストップ窓口にしてすべての職員が能力を高め合い、協力し合うことで、患者中心の良質な医療の提供をめざすという栗栖院長に、病院の成り立ちや理念、病院の特徴などについて詳しく話を聞いた。(取材日2023年1月18日)

まずは病院の成り立ちについて教えてください。

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当院は内科、外科、整形外科の3つの診療科で始まり、当初は50床程度の病院でした。現在は呉市広地区にある虹村工業団地北側の一角に病院を構え、25診療科と2部門、410床を備える地域の中核病院として、呉市東部エリアを中心に、東広島市(安芸津町、黒瀬町)、竹原市、そして瀬戸内海を挟んだ島しょ部などの急性期医療を担っています。専門性の高い医療をはじめ、周産期医療、救急医療、治療と仕事の両立支援を柱とした診療を行っており、近く70周年を迎えようとしています。現在の二次医療圏では、人口規模20万人超、搬入・搬出患者割合ともに3%という「トリプル20基準」を満たしており、医療が充実した地域であるといえます。ただし本来病院が持っている機能がどれだけ活用できているかは別の話です。診療科ごとに診療内容を全国平均と比べながら、この地域で医療の恩恵にあずかれない人が出ないようにしっかりと努めていきたいと思います。

病院の理念についてもお聞かせいただけますか?

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当院は労災病院でありながら、「働く人のために」という点が理念から欠けていました。そこで2022年1月に理念を変更し、「働く人と地域の人のために患者中心の良質な医療を提供します」と定めました。この理念を最終到達目標とし、6つの基本方針を掲げています。「尊厳と権利の尊重」「高度で安全な医療」「地域医療機関との連携」「治療と仕事の両立」「優れた人材の育成」などですが、それを「推進する」「実践する」「支援する」という動詞を用い、より行動的な表現にしました。また同じくしてロゴマークを新たに作成しています。瀬戸内の海や空、呉市のイメージカラーである青を基調とし、病院名にある中国の“C”を象ったモチーフを採用。市花のツバキを象徴とした赤をポイントに加えることで、人物の姿と心臓に見えるようにデザインしました。これは患者さんは勿論、職員も含んだ私たち人、を中心とした医療に取り組む決意の表れとなっています。

柱の一つである専門性の高い医療についてお話しください。

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労災病院という歴史から整形外科には力を注ぎ多くの手術を行っていますが、中でも膝や股関節の人工関節手術に関しては、「関節外科センター」を設置して対応しています。また「内視鏡検査・治療センター」を設立し、鎮静下による内視鏡での検査・手術の需要に応えられるよう体制を強化。これまで下部消化管、大腸や直腸の検査は前日から準備していただく必要がありましたが、今では紹介受診された当日の検査が可能となりました。患者さんの負担の軽減につながっているのではないでしょうか。加えて、純国産の内視鏡手術支援ロボットを導入しました。日本人の繊細な手技が再現できるもので、2022年7月からトレーニングを重ね、2022年10月から前立腺がんに対する前立腺摘除術への活用をスタートさせています。今後は泌尿器科領域の手術に限らず、消化器がんや婦人科がんなどの手術に水平展開できるよう準備を進めているところです。

救急医療や周産期医療についてもお聞かせください。

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当院は一次から三次までの救急医療に携わっており、年間1万件を超える救急患者を受け入れています(2022年1月~12月で1万5963件)。病院の背景人口は約15万人あり、芸南地区を広くカバーするという大きな役割を持っています。その中でも新型コロナウイルス感染症に関しては地域のトリアージ機能を担う中枢として、行政や地域の医療連携施設に信頼していただいていると思います。2018年の西日本豪雨では交通が遮断されて病院が孤立した経験があるなど、レジリエンス機能の重要性を痛感したことも大きな転換点となりました。今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックはある種の災害であると捉え、職員全員で情報を共有しながら協力して対応することが基本です。また周産期医療に関してもコロナ禍でのコロナ陽性妊婦に対応してきたほか、小児の虐待についても向き合い、このエリアでは当院が中心となって診療を進めているところです。

最後に今後の展望を含めメッセージをお願いします。

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医療は最終的に人が支えるものですから、人材育成にも注力しています。2022年には総合実習・研修センターを設置し、医療系の学生さんの実習から現職の医療関係者の研修までが幅広く受けられるワンストップ窓口を作りました。例えば医師は専門医をめざしたり、看護師は各種認定を取得したり、生涯教育の場として活用していきたいと思います。労災病院として提供する良い医療は、単なる質の高い医療という意味ではなく両立支援。患者さんの病気が治り、仕事に復帰して活躍できる状態になることが最終ゴールのはずです。ですから研修医の教育プログラムの中にこの両立支援を取り入れ、次世代を担う若い人たちにここで経験してもらうことにしました。それが結果として、当地で働く人、地域の住民の皆さん、更には当院で両立支援を学んだことを研修された若い先生方がそれぞれの赴任地で広めていただければ、より多くの患者さんのためになると思っています。

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栗栖 薫 院長

1981年広島大学医学部卒業。脳神経外科に入局後、助手、講師、助教授を経て1995年より25年間教授を務める。文部科学省在外研究員として1999年に独・加・米に留学。広島大学病院副病院長、広島大学副理事を歴任。2020年3月末に広島大学を退職。2020年4月より中国労災病院長、広島大学名誉教授に就任。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。

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