子宮筋腫を手術する大きさの目安は?
技術と経験が光る腹腔鏡手術
医療法人恵生会 恵生会病院
(大阪府 東大阪市)
最終更新日:2024/11/28
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- 保険診療
- 子宮筋腫
30歳以上の女性の3~4人に1人の割合で発症するという子宮筋腫。子宮の筋肉組織にできる良性腫瘍だが、筋腫のできた場所や筋腫の大きさ、数によっては過多月経や月経痛などの症状が見られる。さらに筋腫が大きくなると周囲の臓器を圧迫してトラブルを起こし、時には不妊の原因になることも。こうした場合は手術が検討され、実際に手術に至る例も多いという。ただ、実施頻度の高い手術ではあるものの、手術を行うかどうか、また手術法の選択や技術レベルには、施設や術者による違いが少なからずあるそうだ。そこで「恵生会病院」の「婦人科内視鏡手術センター」で、30年来の経験と技術を生かした患者本位の腹腔鏡手術を行う子安保喜院長に、子宮筋腫の手術や同センターならではの取り組みを聞いた。(取材日2024年7月19日)
目次
小切開を併用した腹腔鏡手術で患者の幅広い要望に応え、「断らない子宮筋腫の治療」を追求
- Q子宮筋腫で手術を考える、大きさや症状の目安はありますか?
- A
大半の子宮筋腫は良性ですので、3cm程度の筋腫が1つで症状がないような場合は、1年後に受診していただくなど外来で経過を観察します。ただ子宮は通常、鶏の卵ほどの大きさですが、筋腫の数が増えたり大きくなったりして子宮全体が握りこぶし2つ分ほどになれば、手術を考えます。子宮が骨盤腔からはみ出している場合や、おへそより頭側に出てくる場合も手術の適応です。また、月経の経血過多や強い生理痛、大きくなった筋腫が膀胱や腸、血管などを圧迫して症状が出ているような場合も手術になります。妊娠を希望される方では、筋腫が不妊、もしくは妊娠継続を妨げてしまうこともあるので、やはり手術を考えます。
- Q手術方法にはどのようなものがありますか?
- A
子宮筋腫の手術について解説する子安院長
子宮から筋腫だけをくりぬく「子宮筋腫核出」と、子宮全体を切除する「子宮摘出」があります。子宮全体を摘出すれば再発や子宮がんのリスクはなくなりますし、子宮がなくても卵巣があれば女性ホルモンに関するトラブルも心配する必要はないでしょう。ただ、お子さんを望む場合は子宮が必要ですし、年齢を問わず女性にとって子宮は特別な存在ですので、残したいと望む方も多いです。手術の方法は大きく2つ、開腹手術と内視鏡手術に分けられます。開腹手術では腹部を10~15cmほど切開して処置を行います。内視鏡手術では、おなかに開けた小さな穴から手術器具やカメラを入れる腹腔鏡や、腟から入れる子宮鏡などを使います。
- Q腹腔鏡手術のメリット、デメリットを知りたいです。
- A
当院の腹腔鏡手術では、おなかに直径5~10mm程度の穴を2~4ヵ所開けます。傷口が少なく小さいので、痛みや体の負担が軽く、術後の癒着や感染も少なく、何より見た目のメリットは大きいです。カメラを使うので、見えにくい場所も拡大して確認できます。一方で、画面を見ながらの施術は立体的な感覚がつかみにくく、使える鉗子の数や動きも限られますので、操作には技術の熟達が求められます。また開腹手術とは異なり、子宮に直接触ることができません。開腹手術では子宮を触診し、ごく小さな筋腫や子宮の奥のほうにできた筋腫も探し出して切除し、再発までの時間を稼ぎますが、通常の腹腔鏡手術では取り切れないこともあります。
- Qこちらで行っている腹腔鏡手術の特徴をご紹介ください。
- A
専門的な技術を持った医師により腹腔鏡手術が実施される
腹腔鏡手術は技術や経験が大きく反映されることもあり、術者や施設によって治療方針や手技に違いも見られます。当院では30年以上腹腔鏡を行ってきた私のほか、専門的な技術を持つ医師たちが手術を担当します。さらに術式や器具などを自在に組み合わせる腹腔鏡手術が、当院の特色です。例えば腹腔鏡手術の際に恥骨付近を3~5cmほど切開し、一部の操作を手で直接行う「腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術」は、子宮を触診できますので筋腫の取り残しを防げます。また「腹腔鏡補助下子宮摘出術」では、大きくなった子宮も、小さな傷口から比較的短い時間で摘出します。通常であれば開腹になるような症例も、当院ではできるだけ腹腔鏡で行っています。
- Q腹腔鏡手術での、術後の流れや合併症について教えてください。
- A
術後のケアも大切。一人ひとりに合ったサポートが行われる
腹腔鏡手術では、手術の翌日から食事や歩行を始められます。退院も、開腹手術では通常10日ほどかかりますが、当院では術後6日ほどでの退院を想定しています。なお、子宮筋腫核出では子宮本体に多くの傷ができるので癒着が起こりやすいのですが、当院の腹腔鏡手術では小切開も利用しながら短時間でしっかりと縫合し、出血や癒着、次回妊娠での子宮破裂のリスクも減らせるように対処します。退院後2~3週間は入浴を避け、子宮摘出の場合には腟側でも処置を行っていますので、腹圧をかけないように過ごしてもらいます。なお子宮筋腫核出術後に妊娠を希望される場合、術後6ヵ月は避妊をして、回復状態を確認してから妊娠の許可を出しています。
- Q術式の選択や手術の時期で迷う患者さんも多いのでは?
- A
傷の小さな腹腔鏡手術は魅力的ですが、大事なのは筋腫が手術すべき状態かどうなのかを見極めること。開腹手術を避ける目的で、適応しない時期の筋腫を手術してしまうのは本末転倒です。ホルモン療法で筋腫の縮小を図ってから手術する方法もありますが、こうすると小さな筋腫は一時的に小さくなりすぎて取り残しの原因となり、後に再発や再手術が早まるおそれも。ホルモン療法の副作用である更年期症状をどうしても避けたいという患者さんもいますので、当院では多発性筋腫の核出ではホルモン療法を積極的には行いません。子宮の手術は女性にとって大きな決断です。当院では、さまざまな迷いや願いに応えられる手術や治療を提案しています。
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子安 保喜 院長
1985年兵庫医科大学を卒業。市立川西病院(現・川西市立総合医療センター)や兵庫医科大学産婦人科を経て1993年からは宝塚市立病院産婦人科で腹腔鏡手術に注力。2005年より四谷メディカルキューブで勤務し同院ウィメンズセンター長、2010年からは同院副院長として腹腔鏡や子宮鏡を駆使した内視鏡手術を多数の患者に提供。2023年には関西へ戻り、恵生会病院にて院長と婦人科内視鏡手術センター長を務める。