医療法人恵生会 恵生会病院
(大阪府 東大阪市)
子安 保喜 院長
最終更新日:2025/12/04


婦人科内視鏡を不妊解消に向けても活用する
大阪外環状線に面する「恵生会病院」。日常的な疾患の急性期治療に加えて産婦人科や小児科診療に注力し、近隣では「お産ができる病院」として親しまれる。また在宅医療やバス健診にも取り組み、地域医療を多方面から支えてきた。そんな同院が新たな特色として掲げるのが、婦人科良性疾患での内視鏡治療だ。2023年には、腹腔鏡治療のスペシャリストであり東京で診療を続けてきた子安保喜(こやす・やすき)先生が院長に就任。「婦人科内視鏡手術センター」のセンター長を兼務して自らも診察や手術にあたる。「なるべく負担の少ない治療」がモットーで、難症例や再発例にも腹腔鏡を軸に工夫を凝らした手術で対応。患者の悩みに寄り添い、診察や説明に十分な時間をかけるのもこだわりだ。さらに同院は地域の不妊専門クリニックと連携を深め、不妊治療の一環としての腹腔鏡検査・手術も推進している。「地域の病院としての役割をより充実させながら、ご自身に適した婦人科内視鏡治療を探す全国の患者さんにも貢献していきたい」と語る子安先生に、これからの同院について話を聞いた。(取材日2024年6月12日/情報更新日2025年9月8日)
最初に、病院の歴史や地域での役割についてご紹介ください。

当院は前身である産婦人科クリニックを引き継ぎ、1983年に開院しました。当初は産婦人科診療がメインで、2世代、そろそろ3世代でご出産いただくご家庭も出てくるほど、地域では「お産の病院」として知られています。また内科や外科、整形外科、小児科、眼科などを設け救急医療も実施しています。ベッド数は184床で、一般病床と地域包括ケア病床、療養病床をバランス良く設けており、最近では訪問診療などの在宅医療にも注力。急性期から慢性期・回復期のサポートまで、あるいは出産から人生の最期まで、地域で必要な医療をさまざまな形で提供しています。ここ数年で院内のリニューアルを進め、産婦人科病棟は明るく過ごしやすくなりましたし、食事も楽しんでいただけるように工夫していますね。私は以前から当院で診療をしており、2023年に院長に就任いたしました。現在は、新たな診療の軸を強化し、情報発信にも取り組んでいるところです。
1つ目の軸が、婦人科良性疾患の内視鏡治療だそうですね。

この治療は私自身のライフワークでもあり、18年ほど都心のクリニックで勤務し、難症例やセカンドオピニオン症例も多数診てきました。私のモットーは「できる限り患者さんのご負担が少ない治療を、安全に行う」こと。ごく小さな傷を開けて行う腹腔鏡に、下腹部の小切開や子宮鏡を組み合わせるなど、さまざまな工夫で患者さんの思いに応えたいと努めてきました。腹腔鏡や子宮鏡といった内視鏡手術は広く行われていますが、実は診療経験や技術の差が生じやすく、術者や施設によって治療法の選択が大きく異なることも。例えば「巨大な子宮筋腫や卵巣嚢腫の摘出は開腹手術で」という施設も多いのですが、私は患者さんのご希望や安全性を考慮しながら、できるだけ腹腔鏡で対応します。また、小切開の傷は帝王切開でも利用できる位置に設ける、小切開では触診を行ってごく小さな筋腫も取りきる、といった工夫で、腹腔鏡でも開腹手術と同等の成果をめざしています。
患者さんの診察や説明にも時間をかけていると伺いました。

気がかりな症状があり受診した患者さんが「大きな筋腫があるので、開腹手術で子宮摘出が必要だ」と言われてショックを受け、怖くなって長期間放置してしまう。こういうケースをよく見てきました。子宮を残したいのに無理だと言われた、開腹手術は避けたいが他に方法はないのか、といったお声も多いです。また、私は若い頃から腹腔鏡で子宮筋腫の核出手術をしてきましたが、わずか数年後に再発・再手術となる患者さんを見て「これはかわいそうだ」と強く思ったのです。「小さな傷で治療したい」「再治療はなるべく先延ばしに」。治療への恐怖心や医療への不信感があり、率直な思いを口にできなかった多数の患者さんとお会いした経験を踏まえ、今、診察には30分~1時間近くをかけます。患者さんのお気持ちを聞いて、こちらの工夫次第でできることがないか考え、さまざまな引き出しの中からその方にご納得いただける治療法を提示するのが当院のスタイルです。
不妊治療の一環で行う腹腔鏡検査・治療にも積極的だとか。

体外受精を何度試みても着床に至らない反復着床不全(難治性着床障害)の背景には「卵」だけでなく、「子宮」に問題があるケースも存在します。近年、たとえ微細なものあっても子宮に病変がある場合、改善を図ることが体外受精の成功率向上に寄与すると明らかになってきました。そこで当院では近隣クリニックとの連携を強化し、不妊治療の一環としての腹腔鏡検査・手術を積極的に施行しています。一方で従来、健康を害さない程度の子宮の問題は精査の必要性は低いとされてきたことから、不妊治療の選択肢としてご存じでない方もおられるでしょう。そのため、この検査・手術でも時間をかけて丁寧に説明を行うスタイルを重んじ、体外受精の成否に影響を与える点など治療の詳細をしっかりお伝えした上で、患者さんの意向に親身に寄り添いながら進めております。生殖機能を温存する処置を得意とする病院として、新しい可能性をお示しできれば幸いです。
腹腔鏡による検査・手術について詳しく教えてください。

まずは子宮内膜症、内腔の炎症やポリープ、あるいは卵管の狭窄・閉塞の有無などを詳細に把握し、必要に応じて妊娠率向上につながる処置を施します。例えば、ブルーベリースポットと呼ばれる微細な子宮内膜病変は焼灼し、腹腔内を洗浄していきます。炎症で生じた免疫物質も妊娠を阻害する一因となることから、腹腔内をきれいにすることは非常に大切なのです。また卵管がふさがっていると受精自体が困難になるだけでなく、子宮内に着床を妨げる液体がたまるケースがあるため、卵管の通過性を確保する処置を行うことも多いですね。子宮の腹腔鏡検査・手術は全身麻酔と腹部の小切開創を伴うため、不安に感じる方もおられるかもしれません。ですが先にお話ししたように、当院は安全で低侵襲な検査・手術にこだわりを持っており、それは不妊治療の一環であっても同様です。切開創は3~5mm程度の必要最小限にとどめるよう努めています。どうぞご安心ください。

子安 保喜 院長
1985年兵庫医科大学を卒業後、同大学病院産婦人科や関連病院にて診療経験を積む。宝塚市立病院、大阪市立大学医学部附属病院、医真会八尾総合病院等の産婦人科を経て、2005年より四谷メディカルキューブでウィメンズセンター長、2010年より四谷メディカルキューブ副院長。独自の婦人科内視鏡技術を追求し、腹腔鏡手術の可能性を広げることに注力してきた。2023年4月より現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。





