自覚症状のない骨粗しょう症
早期発見と、継続的な治療を
独立行政法人地域医療機能推進機構 神戸中央病院
(兵庫県 神戸市北区)
最終更新日:2023/07/03
- 保険診療
- 骨粗しょう症
骨の量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる骨粗しょう症。女性ホルモンが急激に減少する閉経後の女性が特にかかりやすいとされるが、高齢の男性にも注意が必要な病気だ。ほとんど自覚症状がないまま進行し、軽い衝撃で骨が折れたり、気がつかないうちに骨折していたりするケースもある。また、骨折から筋力低下を招き、寝たきりや認知症といった病気へのリスクが高まることも問題となっている。神戸市北区の「神戸中央病院」では、超高齢社会において多くの人々が健やかに暮らすには骨粗しょう症の治療・予防が重要と注力してきた。今回は同院整形外科の岡山明洙(おかやま・あきら)診療部長に、骨粗しょう症について、病気に気づくポイントや治療法など詳しく解説してもらった。(取材日2023年5月30日)
目次
医療スタッフが連携して患者を支える「リエゾンサービス」に注力し、骨粗しょう症の継続治療をめざす
- Q骨粗しょう症とはどのような病気でしょうか?
- A
骨粗しょう症とは、その言葉のとおり、骨の密度が減ってスカスカになり、骨が弱くなる病気です。その原因は加齢のほか、食事の偏りや運動不足などさまざまありますが、一つには女性ホルモンであるエストロゲンの減少が大きく関わっているとされています。そのため、エストロゲンの分泌量が急激に減り始める閉経後の女性は特に注意が必要です。ですが、50歳以降の女性に多いといっても、男性はかからない病気というわけではありません。骨粗しょう症はあらゆる年齢のほぼすべての人に発生する可能性がありますから、男性も60~70代になったら一度検査を検討したほうが良いでしょう。
- Qどんな症状があれば疑うべきですか?
- A
骨粗しょう症は、病気が進行していても、ほとんど自覚症状がないという特徴があります。ですから、ご自身で病気の進行に気づくよりも、「背中が丸まってきた」「最近、目線が変わった」と家族や友人から指摘を受けて病院やクリニックを受診される方が多いようです。ほかに、健康診断で前の年より身長が低くなっていたからと受診される方もいます。これまでは痛みや不調など目立った症状がないことから病気ではないと考えられていた骨粗しょう症ですが、現在はその病気の重大性が認知され、健康診断でも指摘されるようになってきています。
- Q検査や治療方法について教えてください。
- A
一般的に骨粗しょう症の状態を診るには、骨密度測定検査を行います。当院ではDEXA(デキサ)法によるエックス線検査で腰椎と大腿骨近位部の骨密度を測定しています。健康な若い人の平均を基準として70%以下になると骨粗しょう症の病名がつき、そこまで至らなくても数値が低い人には骨密度の低下をコントロールするための薬が処方されます。お薬は、毎日服用するものから注射や点滴、週1回や月1回でいいものなど、さまざまです。患者さんの中には、持病があって飲み合わせや副作用を気にされる方もいらっしゃいますが、その方の病状やライフスタイルに合わせて処方していますので、気兼ねなく医師に相談してみてください。
- Q症状があっても放置していたら、どのようなリスクがありますか?
- A
治療をせずに放置していると、軽くつまずいただけで骨折したり、気づかないうちに圧迫骨折している、いわゆる「いつの間にか骨折」を起こしたりします。また、骨折から動いたり出かけたりすることがおっくうになって筋力低下を招き、寝たきり状態になったり、肺炎や認知症リスクが高まったりと、思いもよらない病気につながることもあり、近年はそれが大きな問題となっています。健康寿命延伸の観点からも、骨粗しょう症は早期発見・早期治療が非常に重要だといえます。また、将来の骨密度低下に備えて、若いうちから食事や運動習慣に気を配ることも大切です。
- Q貴院が注力する「リエゾンサービス」について教えてください。
- A
当院では、骨折を治療するだけでなく、その原因となる骨粗しょう症の予防と改善をめざして「骨粗しょう症リエゾンサービス」に注力しています。「リエゾン」とは、連絡、つなぎという意味のフランス語で、骨粗しょう症治療のコーディネーターの役割を意味します。骨粗しょう症治療において大切なことは継続していくことです。治療後も定期的に検査を実施して数値の確認を行い、その後のフォローアップを行うなど、医師や看護師などさまざまなスタッフがお互いに連携し、さらにクリニックの先生方とも連絡を取りながら、地域の方々が適切に骨粗しょう症の治療を開始し、継続できるよう取り組んでいます。
岡山 明洙 診療部長
1997年兵庫医科大学卒業。専門領域は膝関節・股関節の人工関節、骨粗しょう症。日本整形外科学会整形外科専門医、医学博士。