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国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 QST病院

(千葉県 千葉市稲毛区)

山田 滋 病院長

最終更新日:2022/07/11

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重粒子線によるがん治療の臨床・研究を推進

重粒子線など放射線の医療利用と被ばく医療を研究する医療機関として、1961年に放射線医学総合研究所病院として設立された「QST病院」。1994年には、治療専用の重粒子線加速器HIMACを開発し治療が開始された。2019年には組織改正が行われ、現在の名称となり新たなスタートを切った。全国7施設ある重粒子線治療を行う施設の1つで、研究病院として、重粒子線によるがん治療を中心とした研究を推進。より高い治療効果や治療回数の減少、そして安全性を追求し、患者にとって負担の少ないがん治療の開発に携わるとともに、重粒子線治療の普及に注力する。2022年4月より、新たに大型の肝細胞がん、肝内胆管がん、局所進行性膵がん、手術後に局所に再発した大腸がん、局所進行性子宮頸部腺がんに対する重粒子線治療が保険適用となった。肺がんやリンパ節転移、肝転移についても引き続き保険収載をめざす。「患者さんがこの病院にかかってよかったと思ってもらえるようにし、職員もこの病院で働いていることを誇りに思える病院にしたい」と話す山田滋病院長に、病院の特徴や取り組みについて聞いた。(取材日2022年5月6日)

こちらの病院が力を入れて取り組んでいることをお話しください。

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この度の診療報酬改定により、すでに保険適用となっている限局性の骨軟部腫瘍、頭頸部悪性腫瘍、転移のあるものを除いた限局性および局所進行性前立腺がんに加えて、新たに肝細胞がん、肝内胆管がん、局所進行性膵がん、手術後に局所に再発した大腸がん、局所進行性子宮頸部腺がんに対する重粒子線治療が保険適用となりました。これら5つの疾患のうち4つは消化器系のがんで、メジャーな疾患が認められたということになります。これまで、がん患者さんは治療のために仕事をお休みされる人も多いことから治療費が大きな負担となっていました。しかし、保険適用となったことで、多くの患者さんにとって重粒子線治療に対するハードルが下がり、国民の皆さんに受けていただく機会が増えていくと思います。そこで当院では、患者さんがよりスムーズに治療を受けていただけるように対応していきたいと考えています。

重粒子線治療の特徴について教えてください。

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一般の放射線治療は25〜30回の照射が多いですが、重粒子線は肝臓がんで2〜4回、膵がんは12回と短期間で治療可能なのが特徴です。一般的な放射線である光子線は、電球の光のように広がる性質をもつため、周囲の正常細胞にもがん細胞と同程度の線量の放射線が当たります。がん細胞よりも、正常細胞のほうが放射線でできる傷を治す力が強いなど回復能力が高いため、治療が成り立つのです。光子線の場合は、がん細胞を確実に殺すために高い線量の放射線を当てると、周囲の正常細胞が受ける線量も高くなり障害の発生確率が高まります。障害が出ないように、常にがん細胞の周囲にある正常細胞を考慮して線量を調整する必要があります。重粒子線治療はがん細胞を狙って球を投げるイメージで治療するため、正常細胞を避けることができ、正常細胞への影響を極力抑えることが可能です。1回で高い線量を安全重視でがん細胞に当てられるため短期間で治療できます。

新しい医療の開発や研究もこちらの病院の大きな役割ですね。

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2016年から治療装置の小型化と治療効果の最大化をめざした量子メスの研究を行ってきました。重粒子線治療には大きな加速器が必要で、当院にあるものはサッカー場1面ほど、第2世代、第3世代でもサッカー場の3分の1ほどの大きさであるため、建設できる施設が限られるのが現状です。重粒子線治療の普及のため、よりコンパクトな重粒子線装置の開発を進めており、最終的にはバレーボールコートほどの大きさにすることが目標です。また、炭素イオンや酸素イオン、ヘリウムイオンなどの複数のイオンを組み合わせて照射する方法の研究も行っています。これにより、さらに正常組織への影響の低下や治療効果の向上が期待されます。そして、治療装置が小さくなり、普及が進めば次に必要なのが人材です。当院では医師の育成にも力を入れており、国内はもちろん韓国のソウル大学や延世大学、台湾の台北栄民総医院など海外からも多くの医師が研修に来ています。

新しい治療法や他の治療との組み合わせについて教えてください。

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重粒子線治療は局所に限局するがんの治療に高い威力の発揮が望めます。転移などで多発しているものに対しては、重粒子であるアルファ線を活用したRI内用療法の実用化に向け研究を進めています。これが実用化すれば、局所は重粒子線、点在する転移はアルファ線を用いたRI内用療法で治療することが可能になります。また、免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法との組み合わせの研究にも取り組んでいます。なお、がんが腹部に存在する場合、放射線感受性が高い消化管とがん細胞が接しているため重粒子線治療が困難になります。そのような場合には外科と連携した照射前の手術により、消化管とがん細胞の間にスポンジのようなものを挿入し隙間をつくることで、安全に重粒子線治療を行うことが期待できるスペーサー挿入術を導入しています。このように、各診療科との連携で安全性を担保しつつ治療効果を高めることに努め、重粒子線治療適応拡大をめざします。

最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。

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私はもともと外科医でしたが、外科手術だけではどうしても限界があり、別の治療法と組み合わせる必要性を感じていました。同級生が化学療法や免疫療法あるいは移植へと進む中、私は放射線を選択し、重粒子線の研究をしたいと思ったことが始まりです。その後、米国で研究を重ねるうちに、従来の放射線治療に比較して重粒子線の優れた線量分布や高い生物学的効果を改めて実感し、有用な治療法だと確信しました。それが日本でできるということで、現在に至ります。治療とは患者さんがわれわれに命を預けることです。患者さんがこの施設なら命を預けてもいいと安心して思っていただけるような病院にしていきたいです。また、外科や内科の先生が重粒子線を自信を持って患者さんへ勧めることができる選択肢の一つにしていただけるようになればと思っています。患者さんが治療に悩まれたときはぜひご相談ください。重粒子を含めさまざまな治療法を一緒に考えましょう。

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山田 滋 病院長

1985年三重大学医学部卒業。千葉大学第二外科、千葉県がんセンター外科医長、米国NASA Johnson Space Center博士研究員、放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院の医長、同病院重粒子線治療研究部長、副院長などを経て2022年より現職、医学博士、千葉大学客員教授。専門は消化器がん。医師としての基本姿勢は、患者が自分の家族だったらどうするかを考え治療をすること。

自由診療費用の目安

自由診療とは

重粒子線治療(先進医療で行う場合の技術料)/314万円 ※保険診療と共通する部分(診察・検査・入院費用等)は公的医療保険をご利用いただけます。

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