医療法人徳洲会 東京西徳洲会病院
(東京都 昭島市)
佐藤 一彦 病院長
最終更新日:2023/06/08
診療・研究・教育を3本柱に地域医療に貢献
「東京西徳洲会病院」は、徳洲会グループの基本理念である「生命だけは平等だ」「断らない医療」を実践するため24時間体制で患者を受け入れ、内科系、外科系ともに幅広く診療を行っている。2023年3月に病院長に就任した佐藤一彦先生は乳がん治療を専門とし、今や広く行われているというセンチネルリンパ節生検の普及に努めてきた専門家。その後のライフワークとして、乳房温存手術後の放射線治療において部分照射を積極的に導入し低侵襲治療を実践。研究にも積極的に取り組んでいる。また、グループ内の病院との連携だけではなく、地域の病院や老人介護保健施設、在宅医療を行うクリニックなどと密に連携することで、地域完結型の医療をめざす。プレイングマネジャーとして、各セクションのリーダーとともに現場の空気を感じながら病院運営をしていきたいと話す佐藤病院長に、診療・研究・教育を3本柱に質の高い医療に取り組む同院の特徴について聞いた。(取材日2023年3月10日)
まずはこちらの病院のめざすところを教えてください。
この規模の病院になると医学への貢献が責務になります。医療における私の信条として、ただ診療だけを行っていても臨床の充実や医療の質の向上にはつながりません。当院の母体である徳洲会では研究データをグループで一括管理する組織を設置しており、当院も近年求められているリアルワールドエビデンスに貢献しています。また教育においては、教わる側の姿勢はもちろんですが、それ以上に重要なのが教える側の資質です。診療・研究・教育は病院を支える3本柱であり、それらを今まで以上に強化していくことで、地域の患者さんに求められている質の高い医療を提供するとともに、スタッフにとっても魅力のある組織となるよう、診療、研究、教育をバランス良く行っていくことが重要だと考えています。
先生の専門である乳がん治療の特徴について教えてください。
乳がんは他の臓器に転移がなければほとんどのケースで治癒をめざせるため、より低侵襲の治療が求められています。乳がんの多くは温存手術の対象となるもので、温存手術後は基本的に全乳房の放射線治療となりますが、一般的には週に5回の照射を3~5週間行うことが必要になり患者さんの負担が大きく、乳房の萎縮や間質性肺炎などの合併症や、左胸の場合は心筋梗塞の可能性が高まる可能性もあります。そこで当院では、全乳房照射に代わって部分照射を積極的に行っています。小線源を使った部分照射であれば、放射線照射の範囲が腫瘤の切除周囲のみとなり、回数を極限まで減らすことができますし、治療期間が短くなることで治療費の負担も減らすことができます。また、全乳房照射をした場合、次に乳がんを発症したときには原則全乳房切除となるのですが、部分照射であれば2回目の温存手術が望めるというメリットもあります。
他の分野ではどのような取り組みをしていますか。
救急医療センターの救急患者さんの受け入れや循環器内科におけるカテーテル治療は数多く実施しており、循環器疾患については心臓血管外科とともに対応しています。口腔外科では、変形性顎関節症に対する骨切り術や、頭頸部がんの機能温存を目的とした手術に取り組んでいます。前立腺や下部消化管のがんにはロボット手術を積極的に行っており、2023年4月には新たに国産の手術支援ロボットを導入します。消化器病センターには肝胆膵のエキスパートである山本龍一医師を中心に、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)など専門性の高い検査や治療も実施しています。放射線科については先端の放射線治療装置や、CT、MRI、PET-CTを設置しています。乳がんの治療も、化学療法センター、放射線科、形成外科との連携により当院で治療が完結できるほか、ポートの増設は外科が、骨転移の生検は整形外科が積極的に行っています。
地域医療連携についてはどのようにお考えでしょうか。
地域医療連携は非常に重要で、地域の医療機関がそれぞれの役割と機能を発揮していくことが重要だと考えています。特に救急患者さんを診ていて昨今問題だと感じるのは、独居のご高齢の人が多く、ある程度急性期の状態を脱したとしてもお帰りになる所が限定されてしまうことです。そこで地域の病院や介護老人保健施設、在宅医療を担う先生とシームレスな関係を築き、地域完結型の医療をめざしていきたいと考えています。この地域の方が特定の医療を受けるために都心に向かうことを回避したいですね。また、武蔵野徳洲会病院とは診療圏が比較的近く、医師もコメディカルも皆、患者さんのためにしっかりやっていこうという共通の理念に基づいて診療を行っているため、グループ内での病院間の連携が非常に取りやすいです。お互いの強みを生かして地域の中でも助け合いながらともに診療・研究・教育に取り組んでいます。
病院長として大切にしていることは何ですか。
私自身の考えとしては、病院長職に専念するよりもスタッフと一緒に診療の現場に立ち、患者さんの生の声や職員の状況を肌で感じながらやっていくべきだと思っているので、プレイングマネジャーとしてこれまでどおりに診療・研究・教育に関わっていきたいですね。そのためには、しっかりとした組織づくりをすることが大切です。病院長がすべてのセクションに介入し状況を把握することは難しいため、組織を構築しその権限は各組織のリーダーがリーダーシップを発揮できるように委ねる。そして、情報共有していきたいです。最終的な決議は病院長に求められるとしても、そこに至るまでの過程は組織の中で動くべきだと考えています。透明性を持った組織運用の中の一人としてのプレイングマネジャーでありたいですね。
佐藤 一彦 病院長
1994年防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院での研修を経て2003年米ハーバード大学に留学。2005年同大学校医学研究科修了。2006年国家公務員共済組合連合会三宿病院勤務。2008年東京西徳洲会病院乳腺腫瘍センター長、2015年同病院包括的がん診療センター長、2017年副院長を経て2023年3月より現職。中山大学医学部客員教授歴任。医学博士。日本外科学会外科専門医。日本乳癌学会乳腺専門医。