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合併症が少ない精密な治療をめざす
泌尿器疾患のロボット支援手術

医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院

(東京都 板橋区)

最終更新日:2024/03/22

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  • 保険診療
  • 骨盤臓器脱
  • 前立腺がん
  • 前立腺肥大症
  • 尿失禁
  • 膀胱がん

骨盤の奥にあり、見えにくいことや術野が狭いことなどから、従来は手術後の尿失禁や勃起障害などの合併症のリスクが低くなかった前立腺がんや前立腺肥大症の手術。「近年では、手術支援ロボットが普及して精密な手術が行えるようになり、それらの合併症のリスクをかなり減らすことがめざせるようになりました」と話すのが「板橋中央総合病院」の吉岡邦彦ロボット手術センター長。同院では、前立腺をはじめとする泌尿器のがんから女性の骨盤臓器脱まで、適用となる疾患のほとんどに、ロボット支援手術による精密で合併症が少ない治療に努めているという。最近では、前立腺肥大症に対する先進のアクアブレーション治療も導入したという同センターの取り組みについて、吉岡先生と小池慎先生に詳しく教えてもらった。(取材日2023年12月20日)

より精密な治療をめざすロボット支援手術。合併症のリスクを抑え、早期の回復を図る

Q泌尿器疾患に対するロボット支援手術について教えてください。

A

何か起こった時を想定した治療の選択が重要と話す吉岡先生

【吉岡先生】手術支援ロボットは、カメラや鉗子などを装着するロボットアームと術者がアームを操作するコンソールボックス、 手術中の画像が映し出されるモニターの3つのユニットから成り立ちます。手術では、二酸化炭素でおなかを膨らませてスペースをつくり、腹部に開けた小さな穴から筒状のポートを挿入。そこから鉗子やカメラを腹腔内に通して、3D画像で術野を見ながら鉗子を操作し手術を行います。現在は、前立腺がんや膀胱がん、腎がん、腎盂がん、尿管がんなどの悪性疾患のほか、腎盂尿管移行部狭窄症の腎盂形成術、女性の子宮脱や膀胱脱など骨盤臓器脱への仙骨膣固定術など一部の良性疾患にも健康保険が適用になっています。

Qロボット支援手術のメリットやデメリットは?

A

手術支援ロボットのアーム

【吉岡先生】一番のメリットは合併症が少ないことです。手術支援ロボットは拡大した立体視ができ、アームには自在に曲がる関節があるので、肉眼以上に見えている状態でどのような方向にもアームを向けて処置をすることができます。これまで見えづらかった骨盤の奥もカメラを接近させて確認することで、血管の処置や直腸面の剥離の精度が上がり、大きな合併症を起こさずに治療することがめざせます。ただし、ロボット支援手術も合併症はゼロではありません。例えば、前立腺がんの場合、ほとんどの人に術後の後遺症として一時的な尿失禁があります。治療を選択する際には、何か起きたときに許容できるかを一つの基準として検討することも大切です。

Q術後の痛みについてはいかがでしょう。

A

【吉岡先生】当院の場合、問題がなければ術後6日目に尿道カテーテルを抜き、8日目に退院です。痛みについては、手術して2日間程度は鎮痛剤を使用しますが、4日目頃には必要なくなると思います。術後1〜2日目の痛みはどの術式でも差はありませんが、手術の傷が大きいとしばらくは動くときに痛みを生じます。その点、ロボット支援手術は傷が小さいので体動時の痛みが軽く、なくなるまでの期間も短いのが特徴です。退院後は、2ヵ月程度は尖ったような所に座らないこと。患部が圧迫されてしまうからで、自転車には乗らないようにしてください。それ以外は、仕事はもちろんテニスやゴルフ、ジョギングなどのスポーツをしても問題ありません。

Q前立腺肥大症についても先進の治療を行っているのですね。

A

丁寧に説明することを心がけているという小池先生

【小池先生】アクアブレーション治療を導入しています。従来前立腺の切除は、電気メスやレーザーで行っていましたが、アクアブレーション治療では高圧水流で行います。電気メスやレーザーでは、発生した熱が周囲の神経や筋肉にダメージを与え、術後の尿漏れや勃起障害など合併症の原因となり得ます。アクアブレーション治療では、水を使用するので熱が発生せず、そのリスクが非常に少なくなります。また、医師は手術前に切除したい前立腺の範囲を設定し、切除自体は専用のロボットが自動で行います。そのため、勃起や射精に重要な神経などの温存が望め、出血量も比較的少なく、手術時間も短いなど、患者さんへの身体的な負担の軽減もめざせます。

Qアクアブレーション治療の流れについて教えてください。

A

【小池先生】アクアブレーション治療は、尿道から細い器具を挿入して行います。手術は、前立腺の切除に必要な時間は5分程度ですが、前後の処置時間も入れると1時間ほどかかります。入院は基本4泊5日で、入院した翌日に手術を行い、次の日から食事や歩行が可能です。手術の2日後に尿道カテーテルを抜いて、出血などの問題がなければ翌日に退院です。前立腺を切除したことによる痛みを感じることはほぼありませんが、手術後に留置する尿道カテーテルによる痛みが出る場合があります。そのような場合は、鎮痛剤で痛みの軽減を図ります。退院後は、飲酒や激しい運動、熱い湯船につかるなど血流を良くする活動は1週間程度控えていただきます。

患者さんへのメッセージ

吉岡 邦彦 ロボット手術センター長

1987年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業後、慶應義塾大学医学部泌尿器科に入局。東京医科大学病院泌尿器科を経て2019年より現職。同院のロボット手術黎明期をけん引。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。医学博士。東京医科大学泌尿器科学講座関連教授、昭和大学医学部泌尿器科学教室関連教授、慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室講師、島根大学医学部泌尿器科学講座講師。

小池 慎 先生

2015年埼玉医科大学卒業。国立病院機構東京医療センターでの初期研修、同センター泌尿器科での勤務などを経て2021年より現職。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。ロボット支援手術を専門としているほか、前立腺肥大症のアクアブレーション治療にも力を入れて取り組んでいる。

国内でロボット手術が始まってから20年以上がたち、国産の手術支援ロボットも開発されています。アクアブレーション治療も、肥大した前立腺を自動で切除しますのでロボット支援手術の一つといえますが、このようにロボットの種類も増えていくことが予想されます。その結果、これからはより多くの病院がロボット支援手術を導入しやすくなり、治療技術が均一化され、より多くの患者さんが質の高い治療を受けられるようになるでしょう。これら技術の進歩を柔軟に取り入れていく一方で、患者さんにとって有益なのかを適切に見極めていくことも重要です。そうすることが、安全で安心なロボット手術へとつながっていくと考えています。

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