公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院
(東京都 千代田区)
和田 友則 病院長
最終更新日:2023/01/11
気軽に受診できる地域医療の中間を担う病院
1933年に東京都教職員互助会会員を診療するために開設された「三楽病院」。1988年に保険医療機関となってからは、教職員やその家族だけではなく一般の患者も含めた幅広い診療を行っている。和田友則院長が専門とする消化器の早期がんに対する内視鏡治療をはじめ脊髄脊椎の低侵襲手術など、専門性を要する治療にも対応。各診療科において経験豊富な医師が適切に診断し、最良の治療につなげようと奮闘している。東京都の二次救急指定病院としての機能を担うほか、東京大学医学部附属病院をはじめ大学病院と密に連携するなど、地域医療連携のハブ的な役割も果たす。求められる医療を提供するために、業務の効率化と医療レベルの向上を図る同院の体制について、和田院長に聞いた。(取材日2022年9月20日)
こちらの病院のここ数年の取り組みについて教えてください。
ここ数年は新型コロナウイルス感染症が何度も波を繰り返す中、当院でも2021年から千代田区周辺住民や教職員とその家族に対するワクチン接種業務に協力し、地域の医療機関として社会貢献を行ってきました。幸い当院には長年のインフルエンザワクチン接種の経験があったことで、限られた時間とマンパワーでしたが特に大きなトラブルもなく、多くの方々に接種することができました。先端の感染病棟を持たない病院としてはできる限りの最大限の対応ができたと自負しています。2021年の夏には行政からの依頼で新型コロナウイルス感染症に特化した病棟を開設し、病床数を増減しながらも維持しています。それに加えて、発熱症状の方を診る外来で感染の疑いのある人を積極的に受け入れると同時に、近隣の東京大学医学部附属病院や東京医科歯科大学病院をはじめとする大学病院や大規模病院の後方支援病院として、退院された方を療養のために受け入れています。
新型感染症対策以外にも病院の体制に変化はありましたか?
2022年9月にこれまでの267床から、一般病床139、地域包括ケア病床60床の199床に縮小し、精神病床27床をクローズしました。教職員互助会の病院として教職員のメンタルケアについては今後も積極的に診療していくことに変わりはありませんが、入院が必要な場合は一般病床で治療を行っていくことになります。また、2022年7月からは院内処方を取りやめ院外処方を導入しました。患者さんにもご理解いただき、利便性を落とすことなく、スムーズに移行することができました。薬剤師には病棟での服薬指導やよりきめ細かな業務に専念することで、これまで以上に専門性を発揮してほしいと思っています。当院が現在の建物になった1986年頃に比べて、都心における医療構造は大きく変わってきています。周囲に大規模病院が複数ある中で、当院規模の医療機関が求められる診療に特化できるよう、業務の効率化と医療レベルの向上を図ってまいります。
診療体制で大きく変わった点はありますか?
産婦人科における分娩を2022年3月で終了しました。三楽病院はかつて助産師学校も併設していて、お産は極めて伝統的で歴史があり、ここで生まれたことを誇りに思う教職員の家族がたくさんいるのも重々承知していました。しかし、世の中の少子化の流れに逆らうことはできなかったというのが現状です。お産は今や人生で何度もあるイベントではありません。だからこそ、NICUや専門的な設備を備えた高度集約的なハイボリュームセンターで安全性を担保した上で行うことが求められているのではないかと考えています。今後産婦人科では婦人科の良性疾患の腹腔鏡手術に力を入れて取り組んでまいります。それに伴い、小児科についてもこれまで常勤だった医師が非常勤となり、第2土曜午前、第4土曜午前、第4水曜午後に外来診療を行う体制となりました。今まで当院を頼りにしてくださっていた人には引き続き受診していただければ幸いです。
ニーズが高まってきている分野についても教えてください。
1つは予防医学で、がんもそれ以外の疾患もごく初期の無症状の段階で病気を発見し、しかるべき専門医療へとつなげていくことが重要です。そこで中心になるのが人間ドックや健康診断です。当院では2017年に人間ドックを新装オープンし、非常に落ち着いた清潔感のある環境で健診を実施しています。糖尿病、高血圧症、高脂血症といった生活習慣病については、併設する生活習慣病クリニックで、主治医と患者さんの二人三脚でまずは最初の段階から良い数値に持っていけるようにコントロールしています。もう1つは体に負担をかけない低侵襲の治療です。私の専門でもある消化器疾患における内視鏡を使った早期の診断・治療はここ20年ほどでかなり進歩してきました。また、脊椎脊髄疾患治療については、三楽脊椎脊髄部門を設置し、高齢者が活動的でクオリティーの高い日常生活が送れるよう、低侵襲のBKP(経皮的椎体形成術)など先進的な手術を行っています。
最後に地域の方々へのメッセージをお願いします。
当院には手術支援ロボットのような特殊な手術の設備はないため先端の手術は大学病院にお任せすることになりますが、当院が得意とする分野の医療に特化し、社会貢献をしていきたいと考えています。もちろん教職員の健康を支えるという責務も担い、健康的な生活を提供できるようにしていきたいです。皆さんがいきなり大学病院に飛び込むのは敷居が高いでしょうし、広い建物の中であちこち動き回るのも大変だと思います。三楽病院は町の開業医さんの次の段階で、普段着で気軽に来ていただける病院です。当院で対応できることは当院で、より専門的な医療が必要な場合は大学病院へご紹介していきます。連携プレーのちょうど中間地点として受診しやすい病院をめざすとともに、来ていただいた人が満足感を得られる医療を提供してまいります。
和田 友則 病院長
1987年東京大学医学部卒業。同大学医学部附属病院に勤務後、国立国際医療センター(現・国立国際医療研究センター)、東京大学医学部第一内科勤務を経て、三楽病院着任。内視鏡検査・治療の黎明期から積極的に取り組む。2020年7月から現職。三楽病院内視鏡センター長、消化器内科部長も兼任。日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。
自由診療費用の目安
自由診療とは日帰り人間ドックコース:5万5000円~