国家公務員共済組合連合会 九段坂病院
(東京都 千代田区)
山田 正仁 院長
最終更新日:2025/07/31


高度医療の追求と高齢者の健康づくりに注力
1926年創設「九段坂病院」は、 2015年11月に千代田区との合築によって現在の地に移転した。都心にありながら四季折々の豊かな自然に囲まれた環境で、「高潔な志をもち、洗練された技術で愛情をこめて医療を行う」という理念のもと質の高い医療の提供を追求し続けている。1989年に当時の院長だった山浦伊裟吉名誉院長が病院の得意分野をつくろうと自身の専門だった脊椎脊髄疾患の患者を集中的に診療する体制をつくって以来、同院の看板の医療の1つとして受け継がれている。また、食道がん、鼠径ヘルニア、肝胆膵疾患、アレルギー疾患などについても専門性を広げた医療を行っている。それらに加えて地域の高齢者の病気の予防にも積極的に取り組む同院では、山田正仁院長をはじめ脳神経内科専門の医師による認知症予防の外来や認知機能検査を含めた脳ドックをスタート。「人生100年時代において、いろいろな病気を予防し進行を遅らせることはとても重要です。地域の人たちが元気に年を重ねていけるように健康づくりのお手伝いをしていきたい」と話す山田院長に、同院での取り組みについて聞いた。(取材日2022年3月22日/更新日2025年7月17日)
院長として取り組んでいきたいことについてお話しください。

都心にある中規模の公的な病院として、大学病院や大規模病院と連携しながら当院でなければできないことに取り組みたいと考えています。その大きな柱の1つが当院の伝統でもある脊椎脊髄の治療です。そしてもう1つの柱となるのが、都心部を中心に在住する高齢者の健康づくりです。私の専門が脳神経内科の認知症ということもあり、認知症を中心とした高齢者の健康づくりの分野で最高水準の医療の提供をめざしていきたいですね。建物内には区が運営する高齢者支援施設も入っておりますので、地域包括医療の面でも当院は貢献すべき立場にあるのです。特に私は2021年3月まで能登半島にある町で地域研究を行っていましたが、全国的に見ると千代田区はある意味非常に特殊な環境ですので、高齢者の病気の予防における新しいモデルをつくり、全国に発信していきたいです。
高齢者の医療への取り組みで特徴的なものはありますか?

認知症の進行抑制と予防が目的の外来では、認知機能がやや低下した軽度認知障害(MCI)の人を対象に、東京科学大学との連携で認知症の発症や進行の予防に努め、アルツハイマー病新規治療薬や非薬物的アプローチによる先制医療に取り組んでいます。また、専門性に特化した脳ドックも実施しており、脳神経内科の医師による診察や公認心理師による認知機能検査も取り入れています。外来については“予防”と名づけたことで受診しやすいようですが、それでも抵抗がある人をご家族が脳ドックに連れてこられるケースもあります。また、回復期リハビリも今後さらにニーズが高まると考えています。当院の12階にある回復期リハビリ病棟と5階にある広く開放感のあるリハビリ室はたいへん見晴らしも良く、都心部でこれだけの環境が整っているのはまれなことでしょう。四季折々の景色を感じながらリハビリを受けていただけるのは当院の特徴の1つです。
理念にある「高潔な志」という言葉を先生はどう捉えますか?

高い志を持つことはすべての基本で最も大切なことです。患者さんの病気の状態を知り、今できる最善のことをやっていくんだという想いがあるからこそ、洗練された高度な医療技術や温かな医療が成り立ちます。理念の中にある「高潔な志」という言葉は、どうすれば患者さんや社会に貢献できるのか、当院ならではのことをするにはどうすればいいかということを考えてやっていくことを指すのだと思います。病院経営は大切なことですが、やはり、まずは高い志があり、それをめざして努力していくことが大切で、そうすることによって患者さんへの良い医療が生まれてきて、その結果、多くの患者さんは当院に来てくださるようになります。
「愛情を込めて医療を行う」ことも理念に掲げられていますね。

僕が感じているのは、この病院は他の病院と比べてとにかく温かいということです。それはとても大切なことで、患者さんに対しての愛情を込めた医療はもちろん、それを支えている職員たちも温かい雰囲気のあふれる職場で日々の業務を行っています。大きな病院ではどうしても診療科ごとの縦割りになってしまいますが、伝統的に垣根をつくらないのがこの病院の良さであり、先人の職員の努力で、一体となって病院運営に取り組む文化が根づいている気がします。看板である脊椎脊髄手術についても、高齢でいろいろな病気がありさまざまな問題を抱える患者さんに対して、複数の診療科の医師やスタッフが1人の患者さんに集まってベストな対応を考えて取り組む体制ができあがっています。そういったところを大切にし、さらに伸ばしていきたいです。
院長として医師として大切にしていることを教えてください。

院長としては、高い志のもとに、ハイレベルで温かな医療と温かな雰囲気の職場環境づくりをめざしていきたいです。医師としては、常に患者さんの立場に立って考えることです。それが現在、十分できないことをできるようにする原動力になります。今の医学では治らない病気であっても、何か自分にできることはないかと常に考えることはとても大切です。例えば、脳神経内科の領域では、手が震えて字がうまく書けないことがありますが、それに対して例えばペンをガムテープでたくさん巻くと書きやすくなるとか、そういうちょっとした工夫でできることを考えることが大切です。根本的に病気を解明して、新しい治療を開発することでなくても、ちょっとしたことでいいのです。また、現在の問題点を外へ向けて発信すれば、世界の誰かがそれを解決してくれるかもしれません。マニュアルどおりではなく、そういった発想で今できるベストな診療をすることを心がけています。

山田 正仁 院長
1980年東京医科歯科大学卒業。2000年より金沢大学神経内科教授を務め、2021年より九段坂病院副院長、2022年4月より院長。金沢大学名誉教授、東京科学大学特命教授。日本神経学会神経内科専門医。専門分野は脳神経内科全般・認知症・脳老化・アミロイドーシス。
自由診療費用の目安
自由診療とは専門性に特化した脳ドック(頭部MRI・MRA検査のほか、公認心理士による認知機能検査、脳神経内科/認知症の専門医師による脳神経系の診察を含む):5万5000円