医療法人社団弘生会 東都三軒茶屋リハビリテーション病院
(東京都 世田谷区)
中村 利孝 院長
最終更新日:2025/04/14


医療と介護の橋渡しで自宅復帰をサポート
高齢化が進む中で、急性期治療を終えた患者の自宅復帰をどう支えていくかはとても重要なテーマになっている。そんな中、「東都三軒茶屋リハビリテーション病院」は2017年にリニューアルを実施。リハビリテーション施設の不足に悩む地域の声に応え、回復期リハビリテーション病棟と療養病棟の両方を持つ病院として生まれ変わった。現在、回復期リハビリテーション病棟では、脳血管障害から運動器障害、肺機能障害まで、幅広く患者を受け入れ、 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を中心とするチーム医療を実施。「医療と介護の橋渡し」も回復期病院の使命の一つと考え、医療ソーシャルワーカーによる情報提供や、ケアマネジャーとの密な連携による生活構築支援にも積極的に取り組む。「寄り添っていく医療」を軸に同院を率いる院長の中村利孝先生に、回復期リハビリの取り組みを中心に、同院の特徴について話を聞いた。
(取材日2019年3月29日/情報更新日2025年3月11日)
地域の回復期病院としての役割と診療姿勢を教えてください。

急性期治療を終えた患者さんが安心して自宅に戻れるよう、治療やリハビリを通じた社会復帰を支援しています。この辺りは独居の高齢者が多く、退院してすぐにこれまでどおりの生活を送れないという声も少なくなかったことから、急性期病院と自宅をつなぐ受け皿として、8年前に回復期リハビリ病棟を開設したんです。地域の病院として、そこに暮らす人々のニーズをくみ取り、応えることが私たちの役割だと思いますから。診療においても同様に、患者さんの声に耳を傾けることを大事にしていますね。私たちは「人」に医療を提供しているのであって、「疾患」を診ているわけではありません。だからこそ、懸命に病と闘っておられる方には、親しみとともに尊敬の念を持つようにしていますし、職員にも伝えています。当院はリハビリだけでなく療養病棟での看取りも行っていますが、人生最期の瞬間まで、患者さんに「寄り添っていく医療」を提供したいと考えています。
回復期リハビリテーション病棟の特徴について教えてください。

患者さんは脳血管障害や運動器障害、心肺機能障害などをお持ちなので、運動療法、作業療法、摂食機能療法という3つを組み合わせることで、機能の回復をめざしていきます。当院のリハビリテはマンツーマンの担当制で、午前と午後に1時間ずつが原則。必要に応じてさらに1時間行うこともあります。急性期病棟との最大の違いは、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)という患者さんと過ごす時間が長い専門職を中心にチーム医療を行うこと。リハビリ内容や生活管理に関しては、さらに医師や看護師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどを加えてミーティングを開催。その上で、本人やご家族と面談をしてリハビリの進捗を共有するとともに、退院後の生活に欠かせない医療・介護資源などについてもきちんと伝えることを大事にしています。ただ治療するだけでなく、きちんと自宅復帰への橋渡しをすることも、当院の重要な業務です。
介護との連携が重要になるのですね。

そうですね。もちろん介護が不要な状態、独立して暮らせる状況にまで回復すれば一番良いのですが、現実には必要な方が多いです。その場合、地域にあるさまざまな介護資源、例えば、入浴サービスやデイケア、訪問看護といったものをうまく組み合わせて、退院後、その方がご自宅での生活を維持できるようにしなければいけません。その設計を担当するのがケアマネジャーです。要介護になった方については、患者さんとの面談の時にケアマネジャーに来てもらい、十分に打ち合わせを重ねながら環境を整え、対応していきます。また、回復期リハビリテーション病棟は、疾患ごとに入院日数が決まっていますが、私たちはそれを「医療を提供できる限界」とは捉えていません。「その期間内に患者さんの機能を十分改善し、次のステップに円滑に進んでもらうためのわれわれの努力目標」と考えて、円滑な介護への移行を心がけています。
透析治療にも注力していると伺いました。

医師と看護師、臨床工学技士が連携して安全で質の高い透析治療の提供に努めています。当院の透析の特徴の一つは、治療中の方でも安心してリハビリを受けられる体制を整えていることだと思います。透析中の適度な運動は、心肺機能や血圧への好影響が期待できるほか、フレイル予防にもつながるとされますが、患者さんによってはリハビリが難しいこともあるので、全身状態や既往歴を踏まえて判断できる透析の専門家がいるのは大きなメリットでしょう。また週3回、4~5時間行われる透析の合間を縫って、無理のないリハビリプログラムを立てられる点も患者さんにとっては安心だと思います。なお、リハビリは透析室で寝たままストレッチや有酸素運動などを中心に行うのが基本。医師の指示のもと、安全面にも十分配慮していますのでご安心ください。その他、退院後も患者さんが安心して透析を受けられるよう、透析室の職員が多職種とともに退院支援を行っています。
最後に、今後の展望について一言お願いします。

「医療は人を診るもので、疾患を診るものではない」という考えに基づき、医療の最前線にいる患者さんを、われわれが後方部隊として支えていきたいですね。私たちが持っている急性期治療後の治療手段は、運動療法、作業療法、摂食機能療法の3つのみですが、言い換えれば、この3つはどんな疾患を経た方にも適用でき、最も重要な治療だということ。ですから、今後の展望としては、まずこの3つの手段を充実させたいですね。運動や日常生活の動作の訓練である作業療法はもちろん重要ですが、特に高齢者にとっては食事や飲み込み、話すことはとても大切なので、摂食領域のリハビリにもこれまで以上に力を入れていけたらと。あとは、現在行っている脳血管障害、運動器障害、肺機能障害からのリハビリの中でも、今後は心血管障害や呼吸器障害など個々の状態に合わせ、より細かくカスタマイズしたリハビリを提供できるようにしていけたらと思っています。

中村 利孝 院長
1973年、東京大学医学部卒業。産業医科大学整形外科教授、産業医科大学副学長・病院長、国立国際医療研究センター病院長などを経て、2017年より「東都三軒茶屋リハビリテーション病院」院長を務める。日本整形外科学会整形外科専門医。「医療の最前線にいるのは患者さん。そこで病と闘っておられる方々には、尊敬の気持ちを持つことが大切」として、同院の基本方針として「寄り添っていく医療」を掲げている。