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東京大学医科学研究所附属病院

(東京都 港区)

藤堂 具紀 病院長

最終更新日:2023/12/21

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先進の医療と地域医療を両輪とし社会に貢献

1892年に北里柴三郎博士を初代所長として大日本私立衛生会附属伝染病研究所が設立され、その1年2ヵ月後に開設された同研究所付属の病室をルーツとする「東京大学医科学研究所附属病院」。設立当初の主な業務は、伝染病の原因検査、予防・治療法の研究、血清・痘苗の製造で、1967年の東京大学医科学研究所への改組に伴い、現在の名称になってからは感染症やがんなど難治性疾患の解明と克服に取り組んでいる。同院では、大腸がんや前立腺がんに対するロボット手術といったニーズの高い医療に取り組む一方で、国立大学の研究機関に付属する病院として、悪性脳腫瘍に対するウイルス療法や血液がんの治療など、専門性の高い治療の提供や研究を実施。先進的な医療の開発だけではなく、高度な医療技術による標準的な治療で地域医療を支える同院の取り組みについて、藤堂具紀病院長に聞いた。(取材日2023年10月12日)

病院の歴史や特徴について教えてください。

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当院は国立大学の研究所に付属する病院であり、先端の科学技術と知見を用いて革新的医療を開発し、社会実装することをめざしています。新型コロナウイルス感染症の流行を機にワクチンの重要性が再認識されましたが、同研究所では、明治・大正時代より感染症に対するワクチン製造を手がけてきました。その流れをくんで、当院でも設立時より血清療法を行うなど先進的な取り組みを行ってきました。1972年には人工臓器移植科の診療を始め、腎臓移植の提供を中心に骨髄移植の研究を早くから実施し、現在の臍帯血移植につなげているほか、先進的ながん治療に関する研究を実践しています。さらに、エイズ(AIDS)が広がり始めると同時に研究と診療を開始し、今日まで多くのエイズ患者さんの診療に携わってきました。私自身は、2011年に当院に赴任し、脳腫瘍外科領域の医療の充実と、悪性脳腫瘍に対するウイルス療法薬の研究・開発に注力してきました。

悪性脳腫瘍に対するウイルス療法とはどんな治療ですか?

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がんの治療には、手術のほかに放射線治療や薬物療法がありますが、脳腫瘍外科では、そこに加わるウイルス療法を開発してきました。ウイルス療法は増殖するウイルスを使って改善をめざす画期的な治療法で、2021年に保険適用となりました。現在は悪性脳腫瘍にのみ対応していますが、いずれ他の臓器のがんでも実施できるようにしていきたいと思っています。ウイルス療法は、大学や研究所が主導で薬になるまで開発をした、国内ではまれな例となります。また、ウイルス療法は単に新しい治療法や薬を開発したのではなく、新たなジャンルを作り上げるような先進的な取り組みだったこともあり、私自身、臨床や授業の合間を縫って研究を続けることは想像以上に難しかったことを覚えています。

一方で、地域における医療連携にも力を入れてらっしゃいますね。

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診療科によって違いはありますが、前述の脳腫瘍外科が非常に専門性の高い医療に取り組んでいるのに対して、外科や泌尿器科などについては、より地域に密着した形でニーズに応えていくための診療を展開しています。大腸がんや前立腺がんに対するロボット支援手術や、胃がんや鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡手術などがその一例で、地域の患者さんに先端の技術による質の高さにこだわった医療を提供できる体制を整えています。先進的な医療と地域医療を両輪とし、地域の先生方からの紹介患者さんは積極的に受け入れ、大切な医療として力を入れて取り組んでまいります。

その他、特徴的な取り組みをご紹介ください。

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血液がんは、当院では昔から専門的に扱っており、骨髄移植や末梢血幹細胞移植などを実施しています。エイズ治療については多くが外来での対応になりますが、エイズ患者さんの合併症に対する外科手術も日常的に行うなど、感染症に伴う他の疾患の治療も得意としています。リハビリテーションや緩和医療にも取り組んでいます。特に緩和医療は苦痛を取ることが目的ではありますが、がんに対して何もせずにただ痛み止めを投与するのではなく、積極的に治療を行いながら進めています。さらに、他の疾患に対する治療が必要であれば取り入れています。もう1つ特徴としては、比較的長期の入院を可能にしていることです。病状が落ち着いたら次の病院に転院することも多いと思いますが、当院では必ずしもそうではなく、じっくりと長期にわたって診ることを基本としています。このように、多様な特徴を持ち、幅広い医療・ニーズをカバーできる点が大きな特徴だと思います。

最後に、地域に向けてのメッセージをお願いします。

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当院は、標準的な治療に加えて専門性の高い治療を提供できる病院です。つまり、当院には多くの選択肢があるということです。それは患者さんにとってのメリットになります。感染症やがんの患者さんの多くは、標準的な治療以外の選択肢も求めていらっしゃると思うので、そのニーズに応えていければと思います。先端医療は時代とともに目まぐるしく変わっていきますが、当院では常にその時代の先端の医療開発を担えるよう努めています。一方で、革新的な医療開発を推進するには標準とされる医療についても、高い医療水準を維持し続けていく必要があります。今後も研究所に付属する病院だからこそ推進できる先端的医療と地域医療の両輪体制で、皆さまとともに病気と向き合い、福祉に貢献してまいります。

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藤堂 具紀 病院長

東京大学医学部卒業。独エアランゲン・ニュルンベルグ大学研究員、米ジョージタウン大学助教授、米ハーバード大学マサチューセッツ総合病院助教授を経て、東京大学医学部脳神経外科講師、同大学院医学系研究科特任教授、東京大学医科学研究所先端医療研究センター先端がん治療分野教授を歴任。医学博士。東京大学医科学研究所附属病院副院長を務め、2023年より現職。

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