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大腸がんのロボット支援手術
手術から職場復帰までの時間は?

東京大学医科学研究所附属病院

(東京都 港区)

最終更新日:2023/12/01

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  • 保険診療
  • 大腸がん

今後主流になっていくと思われる「手術用ロボットを用いる大腸がんのロボット支援手術」だが、専門的な医療技術と多職種連携が必須であるため、実施できる施設が少ないのが現状だ。ロボット支援手術に積極的に取り組む「東京大学医科学研究所附属病院」では、直腸がん、結腸がんともにほぼ全例をロボット支援手術で行う方針としており、2021年4月の開始から2023年9月までに130件のロボット支援手術を行ってきた。現在、週3回のペースで大腸がんロボット支援手術を実施しており、予約から手術までの待ち時間が少なくスピーディーに手術ができるのも強みの一つだ。そこで、ロボット支援手術の専門家である同院外科の小野山温那先生と柵山尚紀先生に、ロボット支援手術の詳細を聞いた。(取材日2023年9月15日)

直腸がんと結腸がんの多くをロボット支援手術で対応。待ち時間が少なく、安全性・質ともに高い手術をめざす

Q大腸がんに対する手術には、どのようなものがあるのでしょう?

A

左から柵山先生、小野山先生

【小野山先生】従来のおなかを切開して行う「開腹手術」、腹部に数ヵ所開けた小さな穴からカメラや鉗子と呼ばれる器具を入れてモニターに映し出された腹腔内の映像を見ながら行う「腹腔鏡手術」、そして、「ロボット支援手術」があります。ロボット支援手術は、「ロボット手術」とも呼ばれていますが、ロボット自身が勝手に手術するわけではなく、医師が手術用ロボットを操作して行う手術法で、従来法と比べ精密な動きでより精度の高い手術をめざすことができます。開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術で、手術のやり方は異なりますが、おなかの中でがんのある腸管をリンパ節とともに切除するという一連の流れは変わりません。

Qロボット支援手術にはどんなメリットやデメリットがありますか?

A

実際のロボット手術の様子。写真右上の執刀医がロボットを操る

【小野山先生】自在に曲がる関節を持つロボットによるロボット支援手術は、狭い骨盤内や肥満の人に対しても繊細な動きが可能で、高画質で立体的な3Dハイビジョンで患部を拡大観察しながら手術ができるのがメリットです。その結果、直腸周囲の排尿や性機能に関わる神経を精密に温存することが望め、術後の排尿・性機能の保持や早期回復が期待されます。
【柵山先生】ロボット支援手術は腹腔鏡手術と比べて開腹手術への移行や合併症の発症が少ないといわれています。デメリットは、強いて言えばロボットを設置する時間が必要なため少し手術時間が長いことくらいです。費用は、保険診療として行う施設では腹腔鏡手術と比べて大差はありません。

Qロボット支援手術の流れや手術にかかる時間を知りたいです。

A

3D映像を見ながらロボットを操作する同院外科教授の志田大先生

【柵山先生】手術の2日ほど前に入院していただき、お通じになりにくい食事を取り、薬を飲んでいただきます。手術時間そのものは結腸がんが通常4〜5時間、直腸がんは4〜6時間ほどかかります。全身麻酔をかけたり覚ましたりする時間も含めると、手術室には手術時間プラス1時間半程度いることになります。どちらも術後7日~10日で退院されます。手術の傷については、直腸がんも結腸がんも、3〜5cmほどのおへその傷に加えて、1cm前後の傷が5ヵ所程度で、傷は半年ほどで目立たなくなっていくことが多いです。なお、肛門に近いがんの場合は、人工肛門を造ったり、側方郭清を行ったりするので手術時間も入院期間も長くなります。

Q手術後や退院後はどんな生活になりますか?

A

「患者の体への負担が少ない治療を」が同院外科チームのモットー

【柵山先生】多くの場合手術の翌日から普通に歩くことができ、術後2~3日で飲水を開始し、その翌日にはお食事ができます。問題がなければ術後7日~10日で退院となります。術後1ヵ月目の外来で手術結果や今後の治療方針を説明し、補助化学療法が必要であれば腫瘍内科医と協力して行います。職場復帰に関しては、術後は体力が低下して疲れやすくなっているため、退院後1〜2週間はお休みしてからの復帰をお勧めしています。中長期的には、数ヵ月おきにCT検査や採血、大腸内視鏡検査を行って術後5年間経過を確認します。
【小野山先生】術後早期離床は、術後の早期回復をめざすプログラム「ERAS(イーラス)」で推奨されています。

Q貴院ならではの特徴を教えてください。

A

ロボット手術に関する専門的な技術を持つ医療チーム

【小野山先生】ロボット支援手術は、専門的な技術を持つ医師や治療を支える多職種連携が必要なため、港区、渋谷区、大田区、目黒区、品川区でも保険診療のロボット支援大腸がん手術を行う施設はまだ数施設といわれています。患者さんが病気が見つかって不安に感じる期間を少しでも短くしたいと考えて、待ち時間を少なく、予約翌日には診察、その翌日にはCTと大腸内視鏡検査を行い、治療方針を決定します。精密検査が必要ない限りは翌週には手術を行います。手術まで1週間かからないこともあり、そこが大きな強みです。
【柵山先生】スピーディーに手術を行えるのは病院内の連携体制が整っているからです。これが東大医科研病院の特徴です。

患者さんへのメッセージ

小野山 温那 先生

2007年徳島大学医学部卒業。東京都立墨東病院、東京都立駒込病院、東京大学医学部附属病院、日本赤十字社医療センターで研鑽。2022年4月より現職。専門は消化器外科学、特に胃がんの腹腔鏡手術が得意。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。「少しでも前向きに治療に取り組めるよう、患者さん一人ひとりに寄り添ってしっかりとサポートします」。

柵山 尚紀 先生

2007年東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属柏病院、東部地域病院、国立がん研究センター東病院を経て2022年4月より現職。大腸がんの腹腔鏡手術を得意とする。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医。「患者さんの不安を受け止め、それを和らげながら、かつ効果的な治療を行っていきたい」。

【小野山先生】私たち東大医科研外科チームは、ロボット支援手術の経験が豊富な医師・看護師・技師がそろっています。今後もチーム一同、質の高い医療を追求し、患者さんが前向きに治療に取り組めるよう寄り添いサポートしてまいります。ロボット支援手術の枠が豊富でスムーズに手術に進めることができますので、気軽にご相談ください。
【柵山先生】私たちは、大腸がんのほぼ全例でロボット支援手術を施行しており、初診から手術までを迅速に、そして安全性への配慮と適切な手術治療に努めております。術前から手術だけでなく、術後のフォローもしっかりとできる治療チーム体制が整っておりますので、安心してお任せいただければと思います。

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