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一般社団法人安佐医師会 安佐医師会病院

(広島県 広島市安佐北区)

土手 慶五 病院長

最終更新日:2026/03/02

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患者に寄り添う地域包括ケアの拠点病院

広島県からの要請を受け、広島市立北部医療センター安佐市民病院の姉妹病院として2023年に開設された「安佐医師会病院」。地域包括ケア病棟82床、緩和ケア病棟20床を備え、内科、緩和ケア内科、リハビリテーション科を標榜。近隣の急性期病院から回復期に移行するポストアキュートの患者や、状態が悪化した在宅医療の患者を受け入れるサブアキュートに対応する地域包括ケアの拠点となっている。土手慶五病院長は循環器内科を専門に急性期医療に従事し、前職の広島市立北部医療センター安佐市民病院では病院長として地域医療の中核を担ってきた。その経験を生かし、地域医療構想と機能分化のもとに設立された同院を開院当初からけん引している。異なる領域への挑戦は、「地域包括ケアとは何か」「どのように利用する病院なのか」を地域住民に知ってもらう活動から始まった。急性期病院での治療後、ケアプランに従って住み慣れた家に帰る。同院はその過程の中で、患者を支える中心的な役割をめざす。熱意と行動力で病院を前へ進める土手病院長に、地域包括ケアの重要性と同院が実践するさまざまな取り組みについて話を聞いた。(取材日2026年1月27日)

御院の成り立ちと地域における役割を教えてください。

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以前、この場所にあった急性期病院を地域医療構想で機能分化し、急性期医療を担う414床の広島市立北部医療センター安佐市民病院と、地域包括ケアの拠点となる102床の安佐医師会病院が開設されました。一般急性期を地域包括ケア病棟に変えたという病院が多い中、当院は高度急性期病院から完全に切り離した、広島市立北部医療センター安佐市民病院の姉妹病院です。病院が2つに分かれた時、地域の患者さんは「私はどちらの病院に行ったらいいのですか?」という反応がほとんどでした。ある日、突然体調を崩し救急車で急性期病院に運ばれ、その後回復期病院へ転院して回復して家へ帰る。これを何度も繰り返す。しかし、家に帰っても老々介護では生活が成り立ちません。トイレ、食事、お風呂はどうするのか。生活のあらゆるシーンを支えるのが地域包括ケアであり、当院はその医療拠点としての役割を担っています。

どのような特徴を持つ病院なのですか?

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当院は、いわば「意思決定を行うための病院」です。トイレは自力で行けるのか、お風呂には入れるのか、車の運転はいつまで続けるのか、かかりつけ医をどうするのか、そうした生活に直結することを考え決めていく場です。現在、急性期病棟の入院は最長8日、地域包括ケア病棟は最長60日と限られています。広島市立北部医療センター安佐市民病院にはお風呂はありませんが、当院にはお風呂やシャワーがあります。80歳にもなれば、入院前は1階で生活していた人でも、退院後に2階へ上がることは難しくなるでしょう。その場合は、1階で寝る環境を整える必要があります。お風呂や食事、買い物をどうするかといった生活全体を組み立てる計画が、介護保険上のケアプランであり、当院が担うところです。納得し、妥協点を見つけながらケアプランをつくることができれば、地域包括ケア病棟を退院し、自宅復帰へ向けたリハビリテーションにつながっていきます。

介護予防事業にも力を入れていると伺っています。

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地域貢献の一つとして「よろず相談」という無料相談を実施しています。まず「病気の話」。施設に入りたいか、住み慣れた家で生活したいのかという「本人や家族の意志」、次に誰と同居しているのか、息子や娘はどこにいるのか、車がなくても生活できるのかなど「周囲の状況」、そして本人がかなえたい希望や夢など「望まれるQOL」の4つを1時間かけて確認。これを臨床倫理の4分割といい、治療方針はこの4つの情報を踏まえて決定されます。一方、かかりつけ医の診療時間は長くても10分程度で、現在の診療報酬の仕組みでは、これらすべてを把握することは困難です。半公営の病院だからこそ可能な取り組みとして、「よろず相談」を始めました。これまでに、単独世帯や老老介護、物忘れや認知症で悩む多くの方々の相談に対応し、受診先の整理、介護保険利用の支援に加え、認知症予防に大切な「笑う」「話す」「散歩する」など、適切な助言も行っています。

在宅医療にも注力されているそうですね。

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在宅医療では、医師と病棟の看護師が一緒に患者さんのお宅に訪問します。病棟でケアしていた患者さんが、家に帰るとどう変わるのかを看護師に見てもらうためです。看護師は「皆さん、家に帰ると元気になります」と口をそろえます。病院で見ていた時とは表情がまったく違うと。それを知ることで、患者さんを家へ帰す意義ややりがい、生きがいを感じてもらうことが大切だと思っています。そういう意味では、当院はスタッフファーストです。それは患者さんにも伝えています。病院で働く人の8割は女性で、その力がなければ病院は成り立ちません。現在、当院の病床をポストアキュートが占める割合は46%で、サブアキュートは54%です。訪問看護師やケアマネジャーからSOSがあれば、すぐに入院できる体制を整えています。目的は、ケアマネジャーさんや看護師さんの負担を軽減すること。介護や看護を担う人を守ることは、患者さんを守ることにもつながります。

今後の展望や読者へのメッセージをお聞かせください。

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私はこれまで、心筋梗塞など心疾患のカテーテル治療を専門にしてきました。現在取り組んでいる地域包括ケアは、それとは対極にある医療です。若い医師は、カテーテルや内視鏡、ロボット手術といった先進の医療に憧れるでしょう。一方で、臨床倫理の4分割に基づき患者さんに寄り添う医療の大切さは、年齢を重ねた今だからこそ実感しています。知らなかったことを教えてもらうのは、素直に楽しいですね。これから重要になるのは、国も推進するDXです。医師や看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、さらにケアマネジャーや訪問看護師、地域の民生委員までが、同じインターフェースで情報を共有する仕組みをつくりたいと考えています。多くの日本人は、急性期医療から在宅復帰までのケアサイクルを3~4度繰り返し最期を迎えます。だからこそ「死を憎まば、生を愛すべし」です。60歳を過ぎたら、一日一日を生きる。それは自分自身にも言い聞かせています。

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土手 慶五 病院長

広島県大竹市生まれ。1983年広島大学医学部卒業後、広島市立広島市民病院救命救急センターなどに勤務。2004年に広島市立安佐市民病院循環器内科主任部長、2020年同院長を歴任。2022年広島市立北部医療センター安佐市民病院設立とともに病院長に就任。2023年より現職。広島大学循環器内科臨床教授、日本循環器学会循環器専門医。

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