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千葉県がんセンター

(千葉県 千葉市中央区)

藤里 正視 病院長

最終更新日:2024/03/08

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50周年を迎えた千葉県のがん医療の拠点

1972年創立の「千葉県がんセンター」は、2022年に50周年を迎えたがん専門病院だ。半世紀にわたり、がん治療の3本柱である外科的手術・放射線治療・化学療法を軸に千葉県のがん医療を担ってきた。2020年には、50周年に先立って地下1階、地上9階建ての新病院も開院。新たな50年に向けて第一歩を踏み出した同院で、2023年4月から1年の任期を切って病院長を務めるのが藤里正視先生だ。難度の高い手術に高い技術と先端の設備で対応し、がんゲノム医療にも取り組む同院において、緩和ケアの黎明期から独自の取り組みを行い、センターの理念である「心と体にやさしく希望の持てるがん医療」を追求してきた。この1年でめざすのは、「緩和ケアマインド」に基づく院内風土の確立と、患者の人生を最後まで支える診療方針の浸透だ。藤里先生に詳しく話を聞いた。(取材日2023年10月13日)

2022年に創立50周年の節目を迎えられました。

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当院は日本で3番目のがん専門病院として1972年に開院しました。以来、千葉県のがん医療の中心的存在として、その発展に尽くしてきました。2020年には老朽化の兆しが顕著な旧病院に代わる新病院が開院。これまでの歴史の上に、また新しい一歩を刻んだところです。新病院では外科的手術、放射線治療、化学療法のすべてにおいて、先進かつ専門性の高い治療を提供できる環境を整えました。手術治療ではロボット手術の機器を2台体制とし、関連する診療科で体の負担が少ない手術を積極的に実施しています。また、放射線治療の分野では正常組織への照射を最小限にとどめ、がん組織に集中的に照射する強度変調放射線治療(IMRT)を拡充。薬物療法でも先進の分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などを用いた治療を外来で行うがん薬物療法センターの拡充などを行っています。また千葉県では珍しい温熱療法も患者さんの声に応える形で導入しました。

先生のご専門である緩和ケアもより充実したと聞いています。

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新病院ができて緩和ケア病床が53床となりました。従来、緩和ケアというとホスピスのようなイメージが強かったと思うのですが、地域医療のバックアップや、がんとともに生きる方が安心して希望する場所で療養することができるためのサポートも、私たち緩和ケアの重要な役割です。当院では、訪問診療を行う開業などの先生や訪問看護ステーションなどと連携して、在宅療養中の患者さんが痛みなどの症状が強くなったら一時的に入院していただき、落ち着いたらまた訪問診療の先生にお返しするバックアップ体制を確立させ、すべての患者さんに最後の最後まで一人の人として生きていただくためのチーム医療に注力しています。緩和ケア病棟を拡充させたことで、さらに多様なニーズに答えていくことが可能になると考えています。がん患者さんには、療養生活の一部として私たちの施設を上手に利用しながら、自分らしい人生を全うしていただきたいと思います。

先生の経験を生かした独自の取り組みもなさっているそうですね。

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私が緩和ケアに出会ったのは、麻酔科の医師として研鑽を積んでいた頃です。当センターに戻り、緩和ケアの黎明期に未来への足掛かりとなるような取り組みを行っていました。その後、一度センターを離れましたが、50歳の節目に緩和ケアの臨床医になろうと決意して、当センターに3度目の入職をしました。この間に導入した音楽を取り入れた心のケアは、今も積極的に行っています。これは、終末期の患者さんはもちろん、がんの告知を受けたり、治療の結果を聞いたりして心に痛みを抱えた人に、音楽を利用して前向きな気持ちを取り戻してもらうための手法です。人は皆レジリエンスをもっていて、時間が経てばショックから回復する人が大半ですが、中にはそれができない人もいる。苦しい気持ちを抱えて暗闇にいる人に歌声を届け、その苦痛を和らげるお手伝いができたらと、ギターをかついで歌を歌いながら病棟を回っています。

他に注力されていることがあれば、教えてください。

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センターの理念である「心と体にやさしいがん医療」とは何か、今一度考える必要があると思っています。その一環として、病院長就任と前後して「SDM(Shared decision making)」の導入に取り組み始めました。SDMとは、患者さんと医療者が、患者さんが大切にしていることや価値観を共有し、治療に生かしていく考え方です。いうなれば、「互いに思っていることを伝えよう」という取り組みですね。院内では勉強会を実施して職員に理解を深めてもらっているほか、外来のスクリーンなども利用して患者さんへの浸透も図っています。また、優れたがん医療は「物」以上に「人」によって成り立つと考え、より良い組織風土の醸成に向けたコミュニケーション改善にも着手しました。朝の診療開始前に入口に立ち、患者さんとスタッフに挨拶をしているんですよ。回数を重ねるにつれ、あいさつから会話が広がっていくことを期待しています。

今後の展望と、患者さんへのメッセージをお願いします。

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私は、最初から任期を1年と切って病院長に就任しました。これは、院内の新陳代謝を活発化し、優れた技術と信念を持った若手の輩出を促すためです。私たちが理念に恥じない医療を続けていくには、患者さんの声に耳を傾け、その人生を最後まで支える意思をもった人の教育が欠かせません。この1年で、職種間の垣根を少しでも低くし、心理的安全性の高い組織を作って、「心と体にやさしく希望の持てるがん医療」を切れ目なく提供できるよう力を尽くしたいと思っています。緩和治療に軸足を置いてきた私だからこそ、患者さんとスタッフの心のサポートができると信じて、より良い病院づくりに邁進してまいります。

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藤里 正視 病院長

1984年千葉大学医学部卒業。千葉大学麻酔科に入局。千葉県がんセンター、国立がんセンター中央病院で麻酔科医として経験を積む中、当時ターミナルケアと呼ばれていた緩和ケアを知り、千葉県がんセンターでも独自の取り組みを行ってきた。センターを離れた後、50歳を機に緩和ケアの臨床に集中することを決意。千葉県がんセンターに再び入職し、現在の礎を築いた。2023年4月より病院長を務める。

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