あいち小児保健医療総合センター
(愛知県 大府市)
村山 弘臣 センター長
最終更新日:2026/04/24


子どもが中心の医療で、健やかな成長を
あいち健康の森公園の程近くにある「あいち小児保健医療総合センター」は高度専門医療と保健機能を併せ持つ全国でも数少ない小児専門の総合施設である。小児救命救急センターとして24時間365日体制で重症患者を受け入れ、NICU・PICUでの集中治療、慢性疾患への対応など幅広い小児医療を担う。胎児の発育確認から出生後の高度専門治療まで、一貫した医療体制を誇る一方、掲げるコンセプトは「病院らしくない病院」。館内には開放的なアトリウムが広がり、まるで遊園地のエントランスのよう。白衣を着用しないスタッフ、子どもと同じ目線で行う対話、随所で出迎えるキャラクターたち。これらはすべて病と闘う子どもと家族の緊張を少しでも和らげたいという願いから生まれた。2026年2月に就任した村山弘臣センター長は、心臓血管外科の専門家として長年最前線で命と向き合ってきた。「つらい治療のはずなのに、子どもがこの病院には行きたがる」という保護者の言葉に、同院がめざす医療の本質が凝縮されていると語る。医療と保健が連携し、心身両面から子どもを支える同センターの役割と展望について、村山センター長に話を聞く。(取材日2026年3月3日)
病院の成り立ちや特徴について教えてください。

当センターは、「愛知県にも小児専門の医療施設を」という地域の皆さまの願いに応えるべく、2001年に誕生しました。産科・婦人科を含め多彩な診療科を擁する小児専門の総合病院です。大きな特徴は、病気を治す「医療」と、健やかな成長を見守る「保健」が一体となっている点です。この両輪で子どもとご家族を支えることが、当センターが掲げる柱となっています。中でも、24時間子どもを守る「小児救命救急センター」と周産期医療には特に注力しています。胎児の発育確認から出生直後の集中治療、そしてその後に続く高度な専門治療まで、チーム一丸となり「切れ目のない医療」を届けています。同時に子どもによくある一般的な疾患に対しても、小児専門施設ならではの「安全で質の高い医療」をめざしています。高度専門医療と日常的な小児医療の双方を高い水準で維持し、安心できる医療を丁寧に届けること。それこそが、私たちの役割であると考えています。
小児救命救急センターの体制や強みをお聞かせください。

小児救命救急センターの大きな強みは、一分一秒を争う命を守るための「設計」と「チーム力」にあります。建物は1階に救急科外来(ER)、2階に手術室、3階に小児集中治療室(PICU)を配置し、屋上のヘリポートと大型エレベーターで直結。一刻も早い治療のために、移動時間を最小限に抑える工夫が凝らされています。また、私たちは「待つ」だけでなく、医師が自ら重症患者のもとへ向かうドクターカーを運用しています。搬送中も途切れることなく適切な治療を行うことで、移動中の不安やリスクを和らげ、地域の病院とも手を取り合って命を支えます。現場を支えるのは、職種を超えた「チーム医療」の絆です。ERが窓口となり、重症の場合にはPICUで全身管理を行う中、各専門科が手厚い治療にあたります。救急要請が入った瞬間から、すべてのスタッフが準備を整え、患者の到着を待ち構える。この盤石な連携体制が、高度急性期医療の核となっています。
お母さんへのサポートにも力を入れていると伺いました。

当センターでは、「胎児の段階から一人の患者さん」として大切に診ています。周産期医療では、疾患の可能性が生じた場合、お母さんごとご紹介いただき、生まれる前から赤ちゃん専用のカルテを作成して受け入れの準備を整えます。治療中も母子が離れずに過ごせる「母子入院」に対応し、地域の産院と連携した分娩システムによって、遠方から来られる方の安心も支えています。育児には不安がつきものです。医療と保健が連携して支援することで、不安や孤立が虐待につながらないような取り組みにも力を入れています。また、電話相談「育児もしもしキャッチ」やSNSでの相談受付などを通じ、病気の有無に関わらず子育て家庭の悩みに耳を傾けてきました。こうした取り組みは、当センターの「病院らしくない病院」というコンセプトのもと続けています。子どもたちと親御さんにとって、治療だけでなく子育てや家庭の不安まで支える存在でありたいと考えています。
本当に多職種で支えているのですね。スタッフの強みは?

やはり、みんな優しくて子どもが好きということが一番の強みだと思います。大部屋医局ということもあり、診療科の垣根が低く、科をまたいだ相談や連携がしやすい環境です。そして、医師だけが主導するのではなく、多職種の意見を取り入れながら診療を組み立てていく文化が当センターにはあります。各病棟には担当の保育士がおり、子どもの不安を和らげる大切な役割を担っています。血液検査の際に気を紛らわせてストレスの軽減に努めてくれていますし、「オペラちゃんツアー」という取り組みでは、手術室で何が行われるのかをわかりやすく説明し、子どもたちが前向きに治療に向き合えるよう支えています。こうした取り組みも、現場のチームワークの中から生まれてきたものです。一人のスーパースターではなく、スタッフ一人ひとりが自らの役割を果たし、皆で一人の患者さんに向き合う。そして、すべては子どものために。それが私たちの強みだと思います。
最後に、地域の方々に向けてメッセージをお願いします。

小児病院というと、ハードルが高く、重症の患者さんが広い地域から集まる専門的な病院というイメージを持たれるかもしれません。もちろん専門性の高い医療を担う役割はありますが、私たちは小児に特化し、「子どもを中心に考える総合センター」でもあります。小児に関わる医療はもちろん、保健の視点から母子の関係やご家族のことも含めて支えていく場所です。難しい病気だけでなく、一般的な疾患についても小児医療ならではの視点で診療し、子どもとご家族に寄り添った医療を提供しています。困ったときには「こんなことで受診していいのだろうか」と遠慮せず、まずは相談していただければと思います。私たちが大切にしているのは「子ども中心の医療」と「病院らしくない病院」という考え方です。子どもにとって病院は不安の多い場所ですが、少しでも安心して過ごせる環境を整え、地域の子どもたちとご家族を支えていきたいと考えています。

村山 弘臣 センター長
1992年名古屋大学医学部卒業。医学博士。小児心臓血管外科のエキスパートとして研鑽を積み、あいち小児保健医療総合センター小児心臓病センター長を経て2026年2月より現職。小児補助人工心臓治療の導入や、小児心臓病センターの設立に尽力。日本胸部外科学会評議員、名古屋大学臨床教授などを兼任。「子どもが中心の医療」を理念に掲げ、高度専門医療と救急体制の強化、家族に寄り添う包括的な小児医療の提供をめざす。





