地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立西神戸医療センター
(兵庫県 神戸市西区)
北垣 一 病院長
最終更新日:2024/12/13


互いを尊敬するチーム医療で神戸西を支える
神戸市西地域の中核病院として機能する「神戸市立西神戸医療センター」。西神中央ニュータウンの街開きからしばらくして、近隣の医療を包括するべく1994年に開院。30余の診療科と一般病床425と結核病床45の計470床を有し、高度な専門医療、救急医療、小児・周産期医療、結核医療など多岐にわたり展開する。特にがん診療においては地域がん診療連携拠点病院として、がん治療の専門性を最大限に生かし、多職種のスタッフの力を合わせて患者・家族が安心して生活できる体制を構築。さらに地域の医療機関と連携した幅広い小児疾患対応も特徴で、小児救急においては17時~24時の救急受入れを安定的に行う。そんな同院に、2024年4月、新病院長として就任した北垣一先生。「近代医療はチーム医療が必須」と語り、医療職・専門職が相互にコミュニケーションする最善の医療を、継続的に提供することを病院の使命と位置づけている。そんな北垣病院長に院内体制から今後のビジョンまでをじっくりと聞いた。(取材日2024年9月18日)
病院のある地域の特徴と貴院の成り立ちから伺います。

当院のある西神中央ニュータウンは神戸市西区の丘陵地帯に、住宅・産業の複合機能団地として計画された場所です。1982年の街開きから一戸建ての住宅がたくさん建ち並び、多くの方が入居されました。私も西神中央へはよく買い物に来ていた記憶があります。最近では駅前に図書館や劇場を併設した文化ホール、さらに広大なショッピングモールも再開発され、再び若い人たちが行きかう活気のある街になりました。当院はその西神中央駅からすぐの場所に、1994年に開院しました。当時はまだ周りに医療機関がほとんどないような状態でしたが、現在では地域の数十の診療所や病院と連携する急性期基幹病院として、神戸西地域の安心・安全な医療をめざして活動しております。医療圏は西区のほか須磨区、垂水区まで、救急医療におきましては神戸西地域全域に及びます。
病院の医療体制について教えてください。

近代化したチーム医療を実践しています。昔は医師が患者さんに医療を施す、というような固定観念がありましたが、今は医療そのものが発達し、近代化・細分化され、患者さんのさまざまな症状や病態を解明でき、かつ治療を提供できる時代になりました。そうした中では医師ひとりの力でなく、看護師、薬剤師、臨床検査技師などの多くの医療職・専門職の人が一つになって、医療を提供していくことが求められます。互いにコミュニケーションを取り信頼し合い、チームワーク良く医療を進めなければ最適、最善な医療の提供はできないと考えます。近代医療にチーム医療は必須です。組織においても、特定の個人が活躍する状態では強いとは言えません。一人ひとりの力はそれほど大きくなくとも、全員が協力して成果を上げる組織こそ大きな成果へつながります。皆が同じ方向を向いて、一つの結果を求めて協力していく医療体制を、当院は整えております。
最善の医療提供のためには、何が必要だとお考えですか?

一時的であれば、最善と思う医療はたやすく提供できるでしょう。しかし地域医療に貢献するためには、継続して提供できてこそ初めて、実現することだと思うのです。そのためには病院全体のシステム化が必要です。システムが脆弱だと個人が不調で休んだり、力尽きて退職ともなれば、一気に機能しなくなるでしょう。しかしシステム化されていれば復旧は容易で、継続して提供することができるでしょう。また一つ一つの業務を合理化・直線化すれば、時間と労力と資源の無駄が減り、ベクトル和として大きなプラスに転じることとなります。今トピックスになっているタスクシェア、医療職の働き方改革、医療DXを相互に推進するものと思います。そうして生じた余裕のある環境は、新たな知識を身につけるための学習時間としても有効です。われわれの使命はシステム化された強い組織で最善の医療を提供すること、さらにその状態を継続していくことだと考えております。
地域との医療連携も大切にされていますね。

来院患者さんの約8割が地域の診療所、病院からのご紹介ですから、地域連携は非常に重要です。日々の診療においては、患者さんの状態を各科から返書でお知らせすることはもちろん、時間内、時間外救急においても、連絡をいただいて急を要すると判断した場合には、優先的に治療を行います。まず断らないこと。その積み重ねが、地域の方々との信頼関係を厚くします。この姿勢は30年来変わることはありません。また地域の医療機関からは、高度な検査依頼も多くあります。造影CT、MRI検査などにおいては放射線科の医師だけでなく、注射のために医師が立ち会い、看護師が患者さんの不安を和らげる言葉かけをするなど、多くの医療職員がチームで臨みます。検査一つを取っても、各部署の医療者が相互にコミュニケーションを取り合い、患者さんの立場に立って安全への配慮や安心に遂行することが、当院の特徴であり自慢できる点でもあります。
最後に新病院長としての抱負と今後のビジョンをお願いします。

当センターが内包する医療の力を、病院として最大限に発揮できるよう方向づけていくことが、私の役どころであると思っています。まず最善の医療を継続的に提供できるようにすることを念頭に置き、職員一同が一丸となって診療に取り組める体制をさらに強固にすること。そして刻々と変わり進む近代医療の先端を行くために、すべての職員に教育等の機会を提供し、モチベーションを持って日々の業務に取り組める環境に常に配慮し、地域の皆さんから信頼される病院へと、導きたいと考えています。私は神戸に生まれ、神戸の街に育てていただきました。神戸を離れ従業していた時期も長くありましたが、縁あって帰る機会を得ました。新病院長を拝命し神戸にご恩返しができることにたいへん喜びを感じ、私自身の最後の仕事として完遂することに全力を尽くします。西神戸医療センターは信頼と実績のある、非常に良い病院です。安心してお越しください。

北垣 一 病院長
神戸市生まれ。1984年神戸大学医学部を卒業後、同大附属病院放射線科へ入局。以来、放射線科医師として数多くの基幹病院で研鑽を積む。兵庫県立西宮病院、成人病センター、国立加古川病院、兵庫県立高齢者脳機能研究センターなどを経て、1999年に島根医科大学(現・島根大学医学部)放射線科教授に就任。2022年4月、神戸市立西神戸医療センター副院長、2024年4月病院長となる。