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公益財団法人大阪国際がん治療財団 大阪重粒子線センター

(大阪府 大阪市中央区)

平野 俊夫 理事長

最終更新日:2025/11/25

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がんで苦しまない健康長寿社会に貢献する

「大阪重粒子線センター」は、がん患者に対して重粒子線治療を提供する施設として2018年に開院、治療を開始した。大阪メトロ谷町線・谷町四丁目駅から徒歩約8分と交通の便に優れる。ユニバーサルデザインが採用された院内は、さながらホテルのロビーを思わせる落ち着いた雰囲気が心地良い。院内には、1周約57メートルの炭素イオンを光速に近い速度まで加速させる円形加速器システムを設置。高いエネルギーを持った重粒子線が3室の治療室に送られ、患者の治療に用いられている。重粒子線の照射に要する時間は数分程度、前後の準備を含め20〜30分ほどで完了。照射による痛みはほとんどなく、低侵襲の治療法のため入院設備は備えていない。患者は外来受診で治療を受け、仕事を続けながら治療を進められる。国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)の理事長を務めるなど、重粒子線治療の研究開発、普及に尽力する平野俊夫理事長に、重粒子線治療の特徴や対応するがんの種類や部位、センターの目標などについて語ってもらった。(取材日2025年9月18日)

センターが設立された経緯や目的についてお聞かせください。

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重粒子線治療の理論は1946年にアメリカの物理学者によって発表されました。当時、大阪大学の大学院生だった物理学者の平尾泰男先生がこの論文を読んで感激し「これを私のライフワークにしたい」と思ったのが日本における重粒子線治療の始まりです。平尾先生らがQSTの前身である放射線医学総合研究所で1993年に世界で初めて治療装置を完成させ、翌年から治療が開始されました。現在、日本人の平均寿命と健康寿命には10年ほどの差があります。病気を治療しても、その後の生活に支障を抱えている人が多く、このギャップを埋めることが社会課題です。がんに関して言えば、2人に1人が何らかのがんに罹患するとされ、生活の質(QOL)を維持しながらがんを治療することが求められています。こうした中、がんの患者さんに対してより低侵襲な治療である重粒子線治療を提供すべく、当院は2018年に開院しました。

重粒子線治療の特徴を教えてください。

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がんの治療法には、抗がん剤を使った内科的な治療、外科手術、放射線治療があり、近年は免疫療法が加わって4つの選択肢があります。重粒子線治療は広い意味で、放射線治療の一つです。一般的な放射線治療ではエックス線を使用しますが、重粒子線治療ではシンクロトロンと呼ばれる装置で炭素イオンを加速させ、強いエネルギーを与えてがん細胞に照射します。陽子線治療では加速した水素イオンを用いますが、炭素イオンのほうが重く、より高いエネルギーを持ってがん細胞にアプローチできるのが特徴です。さらに、重粒子線や陽子線などの粒子線は止まる位置で線量が最大になるブラックピークと呼ばれる特性があるので、がん細胞に対する効果を最大にすることを図りながら、正常組織への影響を少なくすることが可能です。

患者さんにとって負担の少ない治療法だと伺いました。

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重粒子線のブラックピークを利用し、狙った位置で最大のエネルギーを放出させることによってがん細胞を攻撃できるため、周囲の正常細胞のダメージをより少なくできます。QSTが行った重粒子線による前立腺がん治療後の10年間追跡調査により、正常組織のダメージによる二次がんの発生率は、前立腺がん手術後の発生率とほぼ同じであることがわかっています。また、日常生活を送る上でもメリットが期待できる治療です。がんの中には中心部に放射線抵抗性を持つものもありますが、重粒子線なら治療の可能性があるなど、有効性が期待できます。従来のエックス線による放射線治療と比べてより少ない照射回数で治療を終えることができます。例えば、前立腺がんの場合、放射線治療では20回以上の照射が必要ですが、重粒子線なら12回です。現在、QSTでは4回照射の治験も進められています。

どのようながんに適用される治療法なのですか?

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頭頸部非扁平上皮がん、骨軟部腫瘍をはじめ、肝臓、膵臓、肺、前立腺、子宮頸部などのがんに保険適用の範囲が広がり、肺、肝、リンパ節などの少数転移病態や食道、腎臓は先進医療で治療を行っています。一方、白血病など血液のがんや広範囲な遠隔転移をしたがん、胃や大腸など消化管のがんは治療適用外です。現在、当院の治療割合は前立腺がんが50%、残り50%が肝臓がん、膵臓がん、肺がん、その他のがんですが、今後は重粒子線治療の特色を生かせる肝臓、膵臓、肺などのがん治療により注力していきます。なぜなら現時点では重粒子線治療を提供できる施設は限られ、当院のキャパシティーも限界があるからです。患者さんを選ぶのではなく、当院の持つ力でより充実した社会貢献を実践するには、そうした方向をめざすべきだと考えます。また、近年は重粒子線治療の周知目的で、近隣の先生方と重粒子線治療の研究会を立ち上げ、より密接な連携も図っています。

今後の展望をお聞かせください。

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関係各位の努力で治療実績も増え、医療スタッフも経験を積んで、より良い医療を提供できるようになってきました。とはいえ重粒子線治療に対する認知度はまだ低く、体への負担に配慮したがんの治療法として、重粒子線治療を選択肢としていただくための取り組みが必要だと考えています。QSTでは既存の病院にも導入可能な小型で高性能な次世代重粒子線治療装置である量子メスの開発が進められています。手術ではロボットを用いるなど侵襲の少ない術式が採用され、次世代の抗がん剤や免疫療法が開発されるなど、治療法も進化しています。組み合わせも含めて、患者さんにとってより良い治療法を考えることが大切です。近隣病院の外科、内科、放射線科の先生方との研究会はその取り組みの一つですし、患者さんやご家族も、治療の選択肢として重粒子線治療もあるということを知っていただきたいです。これからもがんで苦しまない健康長寿社会への貢献をめざします。

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平野 俊夫 理事長

1972年、大阪大学医学部卒業。アメリカ国立衛生研究所(NIH)留学、大阪府立羽曳野病院を経て、熊本大学助教授、大阪大学教授、医学系研究科長・医学部長、第17代大阪大学総長、QST理事長などを歴任。インターロイキン6(IL-6)を発見し、作用機序と慢性炎症性疾患との関連性を解明し、関節リウマチなどの治療薬開発の道を開く。著書に2025年出版した「胡蝶夢号の旅」などがある。

自由診療費用の目安

自由診療とは

重粒子線治療の照射技術料345万4000円

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