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社会福祉法人シナプス 埼玉精神神経センター

(埼玉県 さいたま市中央区)

丸木 雄一 理事長

最終更新日:2023/06/30

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忘己利他で患者に尽くす脳と神経の総合病院

「Aging with Dignity」、尊厳のある人生。「埼玉精神神経センター」が掲げる、3つの理念のうちの1つだ。病める人にも、悩める人にも必ず明日はやってくる。丸木雄一院長は、誰しもに平等に訪れる明日が前向きなものであるように、愛と思いやりをもって尊厳ある人生を支えることが自院の役割だと話す。「脳と神経の病院」として幅広い疾患を診る同院の患者が抱える疾患には、制御できない心の暴走に苦しむ精神疾患のほか、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病など、病が発覚したある日を境に人生が一変する疾患も多い。患者は皆不条理な運命を呪うが、やがて自分の生きる意味を見つけて、次のステージへと歩き出すのだという。多くの患者の人生と交錯する70年の道のりと、今後の展望について丸木院長に聞いた。(取材日2023年5月19日)

設立から70周年を迎えられたと伺いました。

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1953年、この場所を学校として利用していた淑徳学園から埼玉県を通して購入の要請があり、前理事長で私の父である丸木清美が「毛呂病院大宮分院」を開設しました。当時の精神神経科は、脳神経外科、神経内科を含んでいましたから、ほかの病院から脳外科の医師を招聘して脳腫瘍手術を行ったり、神経梅毒の治療を行ったり、さまざまな神経疾患を扱っていたそうです。昭和30年代に入って脳外科と神経内科が独立したのですが、校舎を再利用した病院の建物は老朽化し、患者家族ですら怖がって受診をためらうような外観でした。昭和50年代頃になると、近隣からも得体のしれない病院として敬遠され、「悪いことをしたら連れていくよ」と子どもを叱るときの脅し文句に使われることもあったんです。

ネガティブイメージをどう払拭されたのでしょう。

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父は、従来のように精神科と神経内科が連携する脳の総合病院構想を打ち立てました。その実行に際して、埼玉医科大学神経内科から派遣される形で神経内科の診療を担当したのが私です。1991年、当院は現在の建物で「埼玉精神神経センター」の名称で再スタートを切りました。病院が新しくなり、診療体制が変わったと言っても、すぐに悪いイメージを覆せたわけではありません。まずは草の根的な活動で私たちの病院を地域の人に知ってもらおうと、インフルエンザの予防接種をできるだけ費用を抑えて提供する施策に取り組みました。これにより、地域の方が私たちの病院に足を運んでくれるようになり、少しずつ地域の中での立ち位置を確立していったのです。新型コロナウイルス感染症が流行する中で多くの予防接種を行うことができたのも、接種を通して地域の皆さんの役に立とうという当時の思いが私たちの中に根づいているからではないかと思っています。

神経難病に対しても、早くから取り組んでこられました。

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赴任から7年目となる1998年、ようやく48床の一般病棟の許可を得て、難病患者さんのための病棟を開設しました。赴任当初からの念願でしたから、本当にうれしかったですね。人工呼吸器を装着したALS患者さんなどを常に満床の状態で診ていました。2001年には神経集中治療室も開設しています。一般的にALSと診断された患者さんは、茫然自失の状態に陥ったり、自暴自棄になったりします。しかし、正しい医療を行い、常に愛と思いやりをもって寄り添い続ければ、患者さんは自らの足で新しいステージへと歩き始めるものなんですよ。患者さん同士のふれあいの中からも、生きる希望や生きる意味を見つけ出す人が多くいます。「後に続く患者さんに対して、何かできないか」と、自分の現状を受け入れて人のために生きようとする姿勢からは、私たち医師も学ぶことがたくさんあるんですよ。

精神科には精神科急性期病棟がありますね。

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医療の進歩により、精神科医療のメインは療養から治療へと変化しました。そこで、時代に合わせて1999年には精神科急性期病棟を開設し、退院後のデイケアも充実させてきたのです。以来、24時間365日、緊急入院が必要な精神疾患の方を受け入れ、退院後は訪問看護などでサポートしながら地域での暮らしにつなげています。この辺りはコメディカルの頑張りが非常に大きいですね。ご自宅を回って、適切なケアをしてくれています。また、当院は認知症疾患医療センターに指定されており、数多くの認知症患者さんを診療しています。以前からの友人である杉本八郎先生が創薬に関わった認知症薬の治験にも、精力的に参画してきたんですよ。今後、現在治験中の認知症薬が承認されたら、専門の外来を設けて対応する予定です。

ありがとうございました。最後に今後の展望をお聞かせください。

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当院に来てからは、大学病院ではできない仕事、神経内科医がいて精神科と連携可能となったからこそできる仕事に力を入れてきました。その点は今後も変わりません。神経内科・精神科の対象疾患で、社会ニーズの変化によって生まれるニッチな疾患には積極的に対応したいですね。医療の進化に合わせて、病気を抱えながら育つ子どもが増えたことから、小児診療科から成人診療科へのシームレスな移行期医療にも注力する必要があると感じています。また、最近は、老老介護していたパートナーが亡くなり、寂しさからお酒に溺れる人が多いことが気になります。当院では、断酒ではなく減酒のための薬を使うことで、適量のお酒とうまく付き合いながら自分の人生を歩めるように導いています。自分の親や親戚などに心配な兆候がある場合は、気軽にご相談ください。地域医療や福祉と適切に情報伝達をしながら、患者さんとそのご家族の人生を支えてまいります。

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丸木 雄一 理事長

1980年日本医科大学卒業。1984年埼玉医科大学脳神経内科学大学院卒業。1985年福生病院内科主任、1987年国立循環器病センター研究員。米国ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学を経て、1991年埼玉精神神経センター脳神経内科部長。1997年埼玉精神神経センターのセンター長となり現在に至る。社会福祉法人「シナプス」理事長、埼玉県医師会副会長。専門分野は脳神経内科学。

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