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埼玉県総合リハビリテーションセンター

(埼玉県 上尾市)

市川 忠 センター長

最終更新日:2023/10/26

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障害者を総合的にサポートすることをめざす

1982年の開設以来、障害がある人々の自立と社会参加の促進に努めているのが、「埼玉県総合リハビリテーションセンター」だ。障害に関する相談・判定から医療、職能訓練、社会復帰まで一貫した総合的なリハビリテーションサービスを提供している同院。さらには、「神経難病センター」と「若年者リハビリセンター」「障害者医療センター」を設置し、パーキンソン病をはじめとする神経難病の治療やリハビリテーションから、若年者の高次脳機能障害の回復訓練、障害に伴う症状の改善までに力を入れている。「神経の病気を疑った時に気軽に相談してもらえる病院になれれば、当院としてもうれしいと思っています」と話す市川忠センター長に、同院の取り組みについて詳しく話を聞いた。(取材日2023年8月10日)

こちらの病院ではどのようなことに力を入れていますか?

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パーキンソン病や脊髄小脳変性症など神経難病の治療です。パーキンソン病では、特にデバイス補助療法に力を入れています。パーキンソン病の患者さんは、場合によっては数分前まで歩いていたのにパタっと止まってしまう。そうすると、バス停の前で急に動けなくなってバスにも乗れないなど、不用意に外出もできなくなります。そのため、補助機器を使って薬を継続的に投与することで、突然動けなくなってしまうような状況の予防をめざしましょう、というのがデバイス補助療法です。

デバイス補助療法について、もう少し教えていただけますか?

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まず、LCIG療法と呼ばれるものがあります。これは、胃ろうをして十二指腸までチューブを入れて、そこにポンプで薬を投与する方法です。次に、持続皮下注療法は、胃ろうはせずに皮下注射で薬を継続的に投与する新しい治療方法です。LCIGのように手術が必要ない一方で、3日に1回は自分で針を刺す必要があり、うまくできないと皮膚が腫れたり、長期間行っていると皮膚が硬くなったりするなど、それぞれにメリットとデメリットがあります。加えて、当院では頭に電極を入れて刺激する脳深部刺激療法(DBS)も行っています。患者さんによっては、胃ろうはしたくないとか、頭を手術するのは嫌だ、皮下注射は大変など、それぞれに希望がありますが、この3つの方法に対応できるのは、県内でも多くありません。いずれにしても、薬が切れない治療はすごく大切で、デバイス補助療法によって、ゴルフなどのスポーツも楽しめる体の状態をめざしていきます。

その他に力を入れていることはありますか?

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リハビリテーションにも注力しています。特に、入院によるリハビリテーションですが、外来のリハビリテーションだけの患者さんと入院のリハビリテーションを定期的に行っている患者さんでは、1年間で薬の増えた量が、入院リハビリテーションをしているほうが少なかったというデータが出ているのです。同様に、認知機能も入院リハビリテーションをしている患者さんのほうが良好だというデータもあります。実は、頭を使ったり、文章を読んだりして脳の機能を保ったり、上げたりすることは難しいのです。なぜ筋肉を使えば脳の機能が良くなることをめざせるのかは、世界的に関心の的で興味を持っている人も多く、よく研究もされています。このことについては、私自身も全国的に講演会などで、リハビリテーションの専門職の人たちに話す機会をいただいていますが、運動が脳に影響するメカニズムを知ってもらって、役立ててほしいと考えています。

障害者医療の取り組みについても教えてください。

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当院では、障害者医療の取り組みとして、治療用装具を作製する外来を開設しています。また、装具をつけて退院しても、開業医の先生方は装具について詳しく知らないことが多く、患者さんが正しく使えているかわからなくなり、その影響で歩き方が悪くなってしまうことも。そこで装具を専門に扱う外来を設け、装具に関する細かなサポートをしています。このほか障害者医療では脳性まひの患者さんに対するボツリヌストキシン製剤療法も行っています。脳性まひの患者さんは体が硬くなってしまいますので、車いすに座れるように体を緩めることを目的に行うほか、上肢にまひがある人はずっと手を強く握って手のひらに爪が食い込んで切れたり、そこから菌が入って化膿したりすることがあるので治療によって手の力を緩め、爪を切る処置などを行います。このように障害自体は治せませんが、もう少し楽に生活してもらえるような取り組みなども積極的に行っています。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

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当院では、障害が進行した人を診ることが多いのですが、近年は私の専門でもあるパーキンソン病の患者さんが増えている印象です。例えばパーキンソン病の場合、かつて有病率は10万人に150人といわれていたのが、最近では10万人あたり270人という統計データもあるようです。そうすると、高血圧や糖尿病などでかかりつけ医に通っている患者さんの中にパーキンソン病の患者さんが隠れている可能性は低くありません。ですから、できれば開業医の先生方は、パーキンソン病にしてもアルツハイマー病にしてもちょっと疑わしいなと感じたら、早めに当院にご紹介ください。早期診断によって患者さんをサポートしていきたいと思います。また当院では、コメディカルが中心となってオンライン相談にも対応しています。こうした取り組みによって、神経の病気を疑った時に気軽に相談してもらえる病院になれれば、とてもうれしいですね。

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市川 忠 センター長

1986年東京医科歯科大学卒業後、同大学医学部神経内科に入局。同大学医学部附属病院、NTT東日本関東病院、埼玉県障害者リハビリテーションセンターを経て、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科神経内科専攻。修了後に埼玉県総合リハビリテーションセンター神経内科医長、診療部長、医療局長、副センター長兼病院長を経て、2022年4月より現職。日本神経学会神経内科専門医。医学博士。東京医科歯科大学臨床教授。

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