藤田医科大学 岡崎医療センター
(愛知県 岡崎市)
鈴木 克侍 病院長
最終更新日:2024/07/08


救急とがん診療を柱に地域に密着
エントランスを入りまず目に飛び込むのが、吹き抜けとなった「光庭(ひかりにわ)」だ。緑の木々が日の光を浴びて風に揺れるさまが見てとれる。「藤田医科大学 岡崎医療センター」は西三河南部地域に救急病院をという声に応えて2020年4月に開院。以来、2次救急病院として多くの救急搬送を受け入れ続けている。もう一つの柱である、がん診療においてはロボット支援手術など低侵襲な治療が定着。放射線治療も高度な機器を備え、患者の負担軽減に努めている。さらに人工関節置換手術でも手術支援ロボットの導入が進む。先進の治療を行う一方、大事にするのは「地域」と「人」だ。「開業医さんと密接に連携し、患者さんにとって『主治医が2人』いる体制をつくれれば」と鈴木克侍病院長。若手の人材も多く、可能性あふれる同院の現状やめざすところについて話を聞いた。(取材日2024年6月5日)
病院の役割や特色について教えてください。

まず大きな役割は救急医療です。かつて幸田町、岡崎市を中心とした西三河南部地域の救急要請のうち半分が地域外へ搬送されるという実態があり、地域内で治療を完結できるようにとの声に応えて当院が立ち上がりました。ERから直結エレベーターでつながるハイブリッド手術室2室と、ICU10床、HCU30床があり、重症疾患に対応可能な体制ができています。救急の受け入れは2023年4月~2024年3月は7917件。心疾患や脳血管疾患、骨折などの他小児の救急医療にも対応します。ただ、急性期病床の満床を避けるためにやむを得ず受け入れを断念するケースがあり、回復病床や療養病床を持つ後方病院との一層の連携を強化していくことが課題となっています。平時においては地域のための救急医療を第一とし、新たな感染症のまん延、また大規災害が起きた時には重要な拠点となることが求められています。
地域貢献と社会貢献が重要な役割ですね。他にも特色があれば。

救急医療と並びもう一つの柱といえるのは、がん診療です。腹腔鏡・胸腔鏡下手術はもとより、消化器全般、泌尿器、呼吸器、婦人科におけるロボット支援手術に関しては数多くの実績を重ねています。将来的には、耳鼻咽喉科や心臓血管外科においてもロボット支援手術を導入できると考えており、症例を重ねているところです。手術支援ロボットは国産のものも有しており、豊明市にある本院の藤田医科大学病院との間に光専用回線を敷設し、遠隔手術の実現に向けてシミュレーションも行っています。国内外から見学に来られており、実現すれば離れた地にいる患者さんの手術も可能となりますね。化学療法や放射線治療にも力を入れており、特に放射線治療では、周囲の正常組織にダメージを与えないよう、がん細胞をピンポイントで照射する高精度な治療装置を導入、専門の医師も増えました。低侵襲でできるだけ患者さんに負担の少ない治療に努めています。
先生のご専門である整形外科についてはいかがですか?

整形外科でも人工関節置換手術支援ロボットを2024年3月から導入しています。股関節、膝のロボット支援手術に続き、秋からは肩関節の手術にも導入される予定です。手術は術者の経験によるところも大きいのですが、手術支援ロボットは精密なナビゲーション機能を持って医師をサポートしながら、正しい位置で骨を切り、インプラントを適正な位置に埋入するという性能を備えています。藤田医科大学病院にはロボット手術のためのトレーニング施設があり、医師はスキルアップに努めています。また、整形外科疾患に限らず、当院では、がん患者さんにおいてもリハビリテーションに力を入れていることが特徴です。筋肉の衰えを防ぐためにも早期離床、早期自立を目標とし、入院されたら術前からリハビリに取り組みます。術後はベッドの上でリハビリを開始し、座位、立位と段階的に進めます。できるだけ早い回復とともに健康寿命の延伸に貢献したいと思っています。
地域医療についてもお考えをお聞かせください。

まず地域の方々から求められる救急医療とがん診療に応えていくことが当院の第一の使命です。岡崎市民病院とも手を携えながら、地域の方々が安心して暮らせる町づくりにまい進していきたいと思っています。また地域の開業医さんとも顔の見える、密接な連携をしていきたいですね。通常、当院は開業医さんから紹介されてきた重症な患者さんを治療し、落ち着けば開業医さんにお戻しするかたちとなります。悪化したらいつでも当院に来てくださって構いません。開業医さんは簡単にウェブ上で当院の予約ができます。今後はそれに加えて、例えば患者さんの手術に開業医さんに少しの時間でも立ち会ってもらう、一緒に診療する、などの機会を設け、患者さんにとって「主治医が2人」という体制づくりにも取り組んでいきたいと思います。患者さんに安心感やメリットがあるのはもちろん、医師にとってもより良い診療や病状把握に役立つでしょう。
今後の展望についてお聞かせください。

開院して5年目となり、医師の数は倍近くになりました。お話しした他にも、心臓血管外科と循環器科が協働するハートチームは先進の医療に積極的で、いずれはTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)も対応可能になるでしょう。脳血管分野でもカテーテル治療が進むなど、治療はいっそう低侵襲に向かっています。また2024年4月に新しく、地域では少なかった形成外科の外来ができ、外傷全般から自家遊離複合組織移植まで対応できるようになりました。当院は若い医師、コメディカルも多く、患者さんのお役に立つとともに自分も成長したいという意欲にあふれた人が多いです。地域連携ということでいえば、ここで育ったスタッフが、地域の他の医療機関のサポートに行くというかたちがあってもいいのではと考えています。「先進的な治療を地域に提供できる大学病院であり、地元密着型の病院」という立ち位置を大事に、地域との絆を強くしていきたいです。

鈴木 克侍 病院長
1980年慶應義塾大学医学部卒業。2000年より藤田医科大学整形外科助教授。2012年より同教授。2020年藤田医科大学岡崎医療センター整形外科教授就任。2021年より現職。日本整形外科学会整形外科専門医。専門は上肢、関節リウマチ、再建外科、微小血管外科、骨折治療。