医療法人社団全仁会 東都春日部病院
(埼玉県 春日部市)
木村 理 病院長
最終更新日:2024/07/25
地域医療連携を進め、住民の健康を守り抜く
高度成長期に整備された武里団地に抱かれるように立つ、春日部市大畑の「東都春日部病院」。前身である越谷北病院の時代から四半世紀にわたって、地域に欠かせない医療拠点として、救急や急性期医療、慢性期医療、リハビリテーションなど幅広い医療サービスを提供し続けてきた。2015年の新築移転で設備や機器を拡充し、2019年からは山形大学医学部で20年以上にわたって教授を務めた木村理(きむらわたる)先生が病院長に就任。高齢期にニーズの高い人工透析やリハビリテーションのほか、消化器外科では難症例の手術治療も数多く手がけるなど、地域医療をけん引する存在だ。2024年で就任から6年目を迎え、「地域の病院やクリニックとの地域連携体制をより一層強固なものにし、地域住民、ひいては埼玉県民の命を守り抜くという私たちの使命を全うしたい」と語る木村病院長に、同院の特色や強み、病診連携の取り組み、今後の展望について話を聞いた。(取材日2024年5月13日)
中規模病院として地域の幅広いニーズに対応されていますね。
当病院のある春日部・越谷エリアは全国的に見ても高齢化率が高い上、人口あたりの医師数の不足が指摘されていますが、そうした中でも地域住民の健康を守り抜くことをわれわれの使命として、必要な医療サービスの提供に努めてまいりました。現在は一般病床76床、療養病棟108床を有し、高齢者医療に欠かすことのできない人工透析やリハビリテーションをはじめ、消化器内視鏡、腹腔鏡下手術など、難症例も含めたさまざまなニーズにお応えしています。大学病院などに比べて規模は小さいですが、消化器外科や泌尿器科の手術、胆嚢・膵臓の内視鏡治療など、専門性の高い経験豊富なドクターが集まっており、多様な人材が活躍しています。また療養病棟においても看護助手の配置を強化し、充実したマンパワーのもとで食事介助、入浴介助を進めています。最期の看取りまでお世話させていただいていることも、当病院の特色です。
特に消化器系疾患の治療に注力されているようですね。
私自身も20年以上にわたって、山形大学で外科学第一講座教授として研鑽を積んできました。特に膵臓疾患の治療に注力していたため、こちらでもそうした経験を生かすべく、病院長職の傍ら、言わば「プレイイングマネジャー」のような立ち位置で、外来も担当しています。世界的にもまれな症例に対して、難度の高い膵頭十二指腸切除術を行ったほか、膵体尾部切除、脾臓切除、胃・大腸部分切除術なども行っています。高難度の手術を行う際は、医師をはじめスタッフ陣の充実が欠かせませんが、東京大学から優秀な先生にも来ていただいていますし、手術スタッフ、術後管理を担う医師や看護部門をはじめ、スタッフとの顔の見える関係性や互いの信頼感があってこそ成り立っているのだということを実感しますね。
コロナ禍での病院運営を経て、得られたものも大きいのでは?
私の病院長就任が2019年ですから、この5年のうち3年半ほどの期間を新型コロナウイルス感染症への対応に費やすこととなりました。2020年1月中旬に臨時感染症対策委員会を招集したのを皮切りに、院内感染を防ぐ強い意志のもと、院内のゾーニング、発熱者の外来の立ち上げ・運営、スタッフの防護服など必要な資材の調達に始まり、ベッドコントロールの効率化、重症化防止の取り組みなど、病院一丸となって進めてきました。医師、看護師、臨床検査技師、理学療法士や作業療法士、臨床工学技士、栄養管理を担うスタッフから事務部門、清掃スタッフに至るまで、総合力で危機を乗り切ることができ、スタッフ相互の連携もより一層深まったと自負しています。
地域連携の取り組みも推進されていますね。
2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行したことを契機に、ここ最近はようやく地域の開業医の先生方とも顔を合わせて対話を重ね、連携体制を構築することができるようになってきました。近隣のクリニックの院長らで組織する機能強化型在宅療養支援診療所の合同カンファレンスに当病院も毎月参加して情報交換を行い、外来、入院双方の紹介患者を受け入れることも多くなりました。当病院での治療を終えた患者さんは、地域の開業医の先生のもとにお返しして、術後のフォローをお任せすることになります。当院を核として、地域全体が一つの病院のような機能を果たしていくことが理想的な地域連携の在り方だと考えています。
最後になりますが、今後の展望をお聞かせください。
3年前から当院で多くの手術を手がけている獨協医科大学の井上泰之先生、麻酔科の専門家である東京大学の長田理先生など、経験豊富な先生方に加わっていただいたことで、中堅若手のドクターにとって大いに刺激になっているとともに、間違いなく当病院の医療レベルの向上につながっています。特に麻酔に関して、当病院は肺や心臓などにさまざまな合併症を抱えた高齢患者も多いのですが、どのようなケースにも適宜配慮した「究極の全身管理」を追求する環境下で、各診療科のドクター陣が安心して手術に集中することができています。今後は常勤医をさらに増員して体制強化に努めつつ、地域連携をさらに深め、この春日部・越谷地域にお住まいの皆さんがより一層安心できる医療体制を構築していきたいと思います。
木村 理 病院長
東京大学医学部卒業。キッコーマン総合病院、東京大学医学部第一外科、獨協医科大学越谷病院外科講師、ドイツ・ヴュルツブルク大学研究員、東京大学医学部第一外科講座助手、同大医学部肝胆膵外科・移植外科講師などを経て、山形大学医学部外科学第一講座教授に就く。同大医学部附属病院副病院長や医学部副学部長も兼務。2019年4月から現職。