川口市立医療センター
(埼玉県 川口市)
國本 聡 病院事業管理者
最終更新日:2024/10/08
幅広い分野の診療で市民の健康を支える
1994年の開院以来、川口市を中心に隣接の蕨市や戸田市などの埼玉県南部医療圏において、地域医療の中心を担っているのが、「川口市立医療センター」だ。現在は、内科系と外科系の幅広い診療科を備えながら、救命救急センターや地域周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院、災害拠点病院などの指定を受けるなど、地域の医療ニーズに応えることをめざしている。そんな同院の病院事業管理者を務め、「患者さんの全身を見据えたトータルケア的な治療ができるよう、しっかりしたレベルの診療で広範囲の疾患に対応する。それが当院の役割です」と話す國本聡先生に、同院の取り組みなどについて詳しく話を聞いた。(取材日2024年7月26日)
こちらの病院の特徴はどのようなところでしょうか?
当院は、市民に信頼され、安全で質の高い医療を提供することを理念としています。不得意な領域がないように幅広い診療科を備えながら、患者さんの個々の臓器別疾患のみを診断・治療するのではなく、全身を見据えたトータルケア的な治療を市民の皆さんに提供することをめざしています。もちろんすべてを当院で完結できるわけではないため、かかりつけ医の先生方と連携し、ご紹介いただいた症例を診断・治療していく地域医療支援病院として地域医療の一翼を担っています。当院では、先進の医療技術と設備を導入し、医療の質を向上させるべく努めており、設備のみでなく医師、看護師、その他の医療スタッフの教育を続けることで患者さん一人ひとりに最適な治療を提供することに努めています。そして、川口市は都心に近いこともあり多くの人口を抱えており、救急医療を必要とする症例が多く、その点でも埼玉県南部医療圏の中核施設としての体制整備に努めています。
がん診療について教えていただけますか?
当院は、地域がん診療連携拠点病院として、幅広い臓器のがんに対して手術と放射線療法、抗がん剤などによる化学療法を組み合わせた効率的な治療の提供に努めています。手術支援ロボットを導入しており、現在は泌尿器科や消化器外科などで、低侵襲のロボット支援下手術を積極的に行っています。今後は、胸部外科や婦人科のがんなど、適応も増やしていきたいと考えています。放射線治療では、IMRT(強度変調放射線治療)やVMAT(強度変調回転照射法)といった先進の高精度放射線治療にも対応しています。また、終末期のターミナルケアまでトータルで対応できるよう体制を整えていて、緩和ケア病棟を運用しています。さまざまな職種からなる緩和ケアチームを組織し、患者さんに対し適切な緩和ケアを提供しています。少し前までは、当院で治療を受けていたがん患者さんを対象にしていましたが、現在はそれ以外の患者さんにも門戸を広げて受け入れています。
ほかに力を入れていることはありますか?
当院は、埼玉県指定の地域周産期母子医療センターで、24時間体制で母体・新生児搬送を受け入れ、ハイリスク妊娠に対する医療、高度な新生児医療を担っています。NICU(新生児集中治療)9床を備えハイリスクの母体搬送にも対応しています。正常分娩も受け入れており、アメニティーなどは専門の施設に及ばないかもしれませんが、新生児の状態が悪いときにもすぐに対応できる点は、当院で出産するメリットだと思います。また、当院は三次救急医療機関です。今回の新型コロナウイルス感染拡大下の経験でもわかりましたが、どのようなときでも救急をすべて当院で受け入れるのは現実的ではありません。例えば、私の専門でもある循環器内科では、虚血性心疾患に連携して対応するCCUネットワークに参画し、近隣の基幹病院と連携体制を構築しています。このように南部地域全体として、適切な医療を提供できるよう体制を整えていくことが大切だと考えています。
病院を運営する上で心がけていることを教えてください。
前述のとおり、当院は安全で質の高い医療を提供することを基本理念としております。地域に根差した診療を大切に考え、地域の医療施設と連携し、必要なときに迅速かつ質の高い医療を提供することを心がけています。診療に際してのインシデントやアクシデントに気づき予防するため、普段から手順の確認や院内教育体制の整備に努めています。定期的な研修を通じてスタッフのスキル向上を図り、最新の医療技術や知識を取り入れて常に高い水準の医療を提供できるよう努めています。その結果として、患者さんやご家族との信頼関係を築くことができると考えています。さらに、地域の医療施設の先生方とは顔の見える関係を大切にし、密な連携を図ることを心がけています。定期的な情報交換や合同カンファレンスを通じて、地域全体での医療の質向上や、地域住民の健康増進を目的とした健康教室や公開講座なども積極的に開催し、地域社会に貢献することをめざしています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
開院から30年たち、設備的にも手を加えないといけなくなっていますし、外来も手狭になりつつあります。開院当時には良かったのですが、現在の診療の体制にだんだんそぐわなくなっている部分も出てきています。現在の環境で改善できることは行いつつ、あと10〜20年後など将来的には病院の建て替えも検討し対処していく必要があると思っています。そして、日々の診療に関しては、今までの診療レベルに満足することなく常に上をめざして、地域に住む皆さまや医療機関の先生方の要望に応えていきたいと考えています。皆さまには、当院のことを信頼していただいて、必要なときには受診や患者さんの紹介をしていただければなと思います。
國本 聡 病院事業管理者
1989年日本大学卒業。米国ノースカロライナ大学循環器内科研究員、国立循環器病センター研究所循環器形態部研究員、日本大学医学部内科学系循環器内科学分野助教、同大学医学部診療准教授などを経て、2017年より川口市立医療センター病院長。2024年より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。