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横浜市立脳卒中・神経脊椎センター

(神奈川県 横浜市磯子区)

齋藤 知行 病院長

最終更新日:2023/07/19

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脳・神経分野の救急から回復支援まで対応

横浜市磯子区の住宅地にある「横浜市立脳卒中・神経脊椎センター」は横浜市の市立病院の一つで、横浜市南部の地域医療の充実を図っている。脳血管の病気や神経疾患への救急医療に加え、回復期リハビリテーション病棟で退院後の暮らしまで考えたリハビリテーションを提供。地域包括ケア病棟では在宅療養の患者の一時入院にも対応するなど、専門性を生かしながら地域に必要な医療を行う。齋藤知行病院長は「当院は市民のための病院。多くの方に利用していただければ」と同院の役割をアピールする。脳神経内科、脳神経外科、整形外科、循環器内科を中心に密接な連携で診療を行い、高度な専門性を持つ医師・スタッフがそろうのも同院の強み。人工関節のように術中・術後の感染リスクが懸念される手術は、空気清浄度クラス100のバイオロジカルクリーンルームで行うなど設備の充実も図る。「高齢社会での健康寿命の延伸をめざして、運動器の機能を維持するための関節の治療や、心臓の治療に力を入れるほか、認知症の早期発見にも努めます」と話す齋藤病院長に、同院の特色とこれからを詳しく聞いた。(取材日2021年9月1日)

こちらの特色の一つである救急医療について教えてください。

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当院は脳卒中など脳血管の病気や神経疾患の救急患者さんに対し、脳神経内科と脳神経外科が密接に協力して、24時間365日、専門的な治療を行います。脳血管の病気には、脳神経内科が血管内の血栓を薬で溶解させる目的のt-PA療法を行うほか、脳神経外科では血管内に通した細い管(カテーテル)で血管の拡張を図る血管内治療が可能です。加えて、脳内に出血がある場合は脳神経外科が開頭手術を行い、必要な場合は複数の治療法を組み合わせるなど、患者さんの状態に応じた適切な医療を提供できるスタッフと設備の充実は大きな強み。脳卒中専門の集中治療室(SCU)も備えます。また、心臓の病気でできた血栓が脳に流れて起きる脳梗塞もあることから、循環器内科の医師と連携して診療にあたります。なるべく早い治療で良い結果に導くため、地域の救急隊、医療機関とも連携し、救急車の受け入れや患者さんのご紹介にスピーディーに対応しています。

神経疾患ではどのような病気が多いのでしょうか?

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中枢神経である脳と脊髄、末梢神経、筋肉の病気により、体の一部や全身が動かないなど運動障害を起こすのが神経疾患です。この中でも当院は、脳神経内科の医師、脳神経領域で高度な専門性を持つ各専門職が協力して、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脊髄小脳変性症といった神経難病の患者さんを多く診ています。ほとんどの神経難病は根治が難しく、現状では在宅での療養が中心です。このため当院は在宅医療を担うクリニック、訪問看護ステーションと連携し、専門的な外来診療、入院治療を行っています。しかし在宅療養はご家族の負担も大きく、長く続くと介護する方が心身ともに疲れてしまいます。そうなる前に、当院で患者さんの病状を再確認し、同時にご家族に休息をとっていただくための、地域包括ケア病棟への「レスパイト入院」も可能です。地域の皆さんのための市立病院ですから、気軽にご相談いただければと思います。

リハビリテーションでの強みなどをお聞かせください。

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当院には102床を備える回復期リハビリテーション病棟があり、脳血管障害や骨折などで入院された方はもちろん、他の医療機関からも患者さんを受け入れています。強みの一つはスタッフと設備の充実度です。リハビリテーションスタッフは80人超で、理学療法士、作業療法士に加え、高齢の方に多い嚥下の問題、脳卒中の後遺症による言葉の障害を専門とする言語聴覚士が11人在籍しています。また広い理学療法室と作業療法室には運動用の設備のほか、日常生活の動作を訓練する設備も設け、歩行訓練の支援ロボットなども導入。テニスコート3面分ほどもある中庭に造った歩行訓練用ルートで、伸び伸びとリハビリテーションができます。当院では患者さんの一日も早い回復のため、365日休まずリハビリテーションをご提供し、脳卒中救急の患者さんには入院から平均1.22日以内(2020年1月~2021年12月実績)にリハビリテーションを開始しています。

整形外科で診る関節の病気や側弯症について教えてください。

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整形外科の診療は、手足のしびれ、手先の障害や歩行障害などの症状を起こす脊椎・脊髄の病気から始まりました。さらに地域の医療ニーズに応えるため、関節の病気や側弯症の治療も行っています。関節では、主に加齢により膝に痛みや腫れが起きる変形性膝関節症が対象で、薬による治療、膝関節を温存して痛みや腫れを軽減する手術、人工関節置換術などから患者さんの生活に適したものをご提案します。特に治療後も運動を続けたい方には、人工関節より関節温存手術のほうが向いている場合があり、事前のご相談がとても重要です。一方、学齢期の女児に多い背骨が側方に曲がる病気、特発性側弯症の手術は年間36件(2020年1月~2020年12月実績)と非常に多く、低被ばくで行えるエックス線検査はお子さんの検査にも適しています。また、高齢の方には健康で長生きしていただくため、腰や膝を中心に運動器の機能を保つための予防と治療に力を入れています。

今後の地域医療での目標をお聞かせください。

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当院は市立病院で、専門的な医療の提供と同時に、地域の皆さんの健康寿命を延ばすことも大きな目標です。救急医療や退院後の暮らしを考えたリハビリテーション、運動器の機能の維持なども、すべて地域への貢献をめざしたもの。加えて、地域の医療機関と連携した認知症へのサポートも重視しています。当院では認知症が専門の医師による診療のほか、認知症が心配な方を診る外来、認知症の兆候を調べることに特化した検査などを行い、早期発見に努めています。さらに、地域の方に認知症への理解を深めていただき、ともに暮らす社会の実現に向けて積極的な情報発信も行っています。また、循環器内科では、日本循環器学会循環器専門医を含め2人が在籍し、急増するとされる心不全などに対応できる体制づくりを急いでいます。病院名から限られた分野の診療と思われがちですが、地域にこれから必要な医療もカバーしていますので、多くの方に利用していただきたいです。

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齋藤 知行 病院長

1979年横浜市立大学医学部卒業。同大学病院、町田市民病院などを経て、同大学医学部整形外科教授および同大学病院整形外科部長として医学教育や臨床・研究に従事。同大学医学部長、副学長も務め、2018年4月より現職。専門はリウマチ、手の外科、脊椎疾患、小児整形外科、膝関節疾患など。日本整形外科学会整形外科専門医。精神科への興味から医学部に入学したが、自分の手で治していく領域に魅力を感じて整形外科を選択。

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