船橋市立医療センター
(千葉県 船橋市)
茂木 健司 院長
最終更新日:2024/07/24
市の救急をけん引、がん医療でも存在感発揮
人口が減少の一途をたどる日本において、船橋市は2030年代半ばまで人口増加が見込まれる地域だ。大型テーマパークが近い上に都心へのアクセスも良いことから、千葉県の「住みたい街ランキング」では常に上位に名を連ね、他県からファミリー層の流入も多い。船橋市とその周辺地域を含めた東葛南部二次保健医療圏をカバーする「船橋市立医療センター」で2024年から院長を務める茂木健司先生は、「増加する医療需要と入院需要に応えることがわれわれの使命。船橋市立医療センターがあって良かったと思ってほしい」と地域への思いを語る。同院の患者以外にも広く門戸を開く「がん相談支援センター」は、市民のためにある病院の象徴的存在といってもいいだろう。同院の役割や治療の強み、建設が進む新病院でめざす取り組みなどについて、茂木先生に聞いた。(取材日2024年5月27日)
医師会の要請を受けて開院した病院だと聞きました。
船橋市と船橋市医師会等の関連機関との協議を経て、1983年に開院しています。当時、東京のベッドタウンである船橋市には続々と人口が流入しており、市内にあった既存の医療施設では対応しきれませんでした。多くの患者が都内の病院に依存せざるを得なかったことから、地域で医療を完結させるべく当院の建設が決まったのです。以来40年以上にわたって、東葛南部エリアにおける24時間救急医療と高度急性期医療を担っています。1996年には災害拠点病院、2007年には地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、2010年に地域医療支援病院に承認され、地域に求められる役割を着々と追加する形で機能の充実を図ってきました。
救急の存在感も大きいですね。
1994年5月、救命救急センターが開設されました。病院敷地内に船橋消防局の救急ステーションがあり、船橋市医師会、船橋市消防局、船橋市立医療センターが共同で運営するドクターカーがあります。現場での迅速な処置が必要な場合、現場近くの救急車と同時にドクターカーは出動します。医師が現場に急行することで、重症患者の命を救える可能性の向上が期待できます。もちろん、病院の受け入れ体制も充実しています。心筋梗塞などの循環器疾患に対応する循環器内科では、補助循環用ポンプカテーテル(Impella)や、心肺機能を代替するECMOなどを駆使し、カテーテル治療で高い救命率をめざします。救命のための緊急手術を要する急性大動脈解離や大動脈瘤破裂は心臓血管外科が対応します。また、脳神経外科では脳梗塞の方への血栓回収術などのカテーテル治療やt-PA静注療法を行います。いずれも24時間365日専門の医師が対応しています。
がん治療にも力を入れていらっしゃいます。
地域がん診療連携拠点病院の一つとして、さまざまながんに対して手術、化学療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療を提供しています。胸腔鏡・腹腔鏡・ロボット支援手術などの先進的な治療も取り入れています。2023年にはがんゲノム医療連携病院になり、がん関連遺伝子の変異を一度に調べるがん遺伝子パネル検査もスタートしました。腫瘍に対してピンポイントで放射線を照射できるIMRT(強度変調放射線治療)、通院での化学療法に対応する19床の外来化学療法室など、設備・施設も非常に充実しています。「がんと言われたが、治療に不安がある」「治療費のことが知りたい」といったがんに関するお悩みについては、当院の患者さんに限らず広く地域の方のご相談を無料でお受けしていますので、お困りのことがあればお気軽に「がん相談支援センター」までお声がけください。
新病院の建設もスタートしました。
医療や福祉、健康に関わる施設を集約させた「ふなばしメディカルタウン」の中心として、現在地より直線距離で900m南側の東葉高速鉄道の近くに新築移転します。完成は2028年を予定しており、院長室からも建設の様子が見えます。近くに東葉高速鉄道の新駅もできる予定です。今よりもぐっと利便性が上がり、より広い地域から気軽に通院できる病院になります。新病院は地上7階建で病床数は500床です。患者さんにプライバシー性の高い入院環境を提供するため原則個室です。また、コロナ禍の教訓を生かして、ゾーニングできる病棟を作って感染症の流行にも対応できます。屋上には、県内各地から搬送できるドクターヘリ用のヘリポートも設置します。新病院では、救急医療およびがん医療を主体とする高度な医療を提供する東葛南部保健医療圏の中核病院として、さらなる機能強化を図ってまいります。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
急性期の治療や専門的な治療が必要な患者さんを速やかに受け入れ、治療を終えた患者さんをスムーズに地域にお戻しするのが当院の役割。そのためには、地域の病院や医院との連携が欠かせません。連携医として登録していただいている医療機関には当院の診療科医師、原則的には診療科部長とのホットラインを設け、紹介の手間をできるだけ削減しています。また、患者支援センターでは、専任の退院調整看護師やソーシャルワーカーが入院前から入院期間や治療計画について話し合い、入退院をしっかりサポートします。特に高齢の方の場合、独居の方や老老介護のご夫婦など、ただ退院させるだけでは暮らしが成り立たないケースが少なくありません。退院後に地域で安心して暮らし続けられるよう、患者さんの人生を包括的にケアできる病院でありたいと思います。より多くの医療機関と顔の見える関係を構築できるよう努力してまいります。
茂木 健司 院長
1988年千葉大学医学部卒業し第一外科入局。千葉県救急医療センター医長を経て、2001年より船橋市立医療センター心臓血管外科副部長、部長を歴任。2019年からは診療局技監を務め、2021年副院長就任後は患者支援センター長として地域医療機関との連携強化のかじを取ってきた。2024年より現職。めざすのは、「患者さんや地域の医療機関には頼られる病院、スタッフには働きがいのある病院」。